新帝国の奴隷 第9話
「グリーンツーッ!!」
威勢のいい掛け声と共に体が輝き、光沢のある鮮やかな緑と白のスーツを身に纏った、グリーンツーへと変身した真吾。
「…許さんッ、サイゴーンッ!!」
腰を低く落とし、戦闘体勢に入る。その体は怒りにブルブルと震えていた。
自身を頼り、何かといろいろ相談を持ちかけて来た高校生の蔭山秀一を洗脳し、プリンスへと改心させたばかりか、その秀一の前で男としての象徴を大きく膨らませ、激しい勢いで射精させられた羞恥心。その全てにおいて、真吾は怒れる戦士へと変貌していたのである。
「…どうした、グリーンツー?…かかって来ないのか?」
サイゴーンは静かに真吾と対峙する。どっしりとした銀色の無機質な体が、どことなく真吾を圧倒する。
「…言われなくても、…やってやるぜッ!!行くぞぉッ!!」
カッと頭に血が上った真吾は次の瞬間、
「バイオキック!!」
と強烈な蹴りをサイゴーンに繰り出した。
バキッ、と言う鈍い音と共に、
「ぐはあッ!!」
とサイゴーンが呻き、後方へ吹き飛ぶ。
「…お、…おのれッ!!」
サイゴーンがすぐさま立ち上がり、ステッキを真吾へ向かって突き出した。
「はあッ!!」
真吾はそのステッキを、バク転で交わす。
「おのれぇッ、ちょこまかとッ!!」
サイゴーンがこれでもかとステッキを振り上げ、振り下ろすが、真吾の体を掠りもしない。
「グリーンツー!ブレイクアクションッ!!」
次の瞬間、真吾はブレイクダンスの要領でクルクルと体を回し、低い位置で足を繰り出した。そして、その足はサイゴーンの脛にぶつかった。
「のわあああッッッ!?」
サイゴーンが何とも間抜けな声を上げ、真吾の足に引っ掛けられて転倒する。
「どうだぁッ!!」
スタッと立ち上がると、真吾はサイゴーンを睨み付けた。
「…お、…おのれえええッッッ!!!!」
サイゴーンの目がギラリと光った瞬間、サイゴーンが姿を消したのだ。
「!?…ど、…どこだッ!?」
真吾が辺りをキョロキョロと窺う。じっと耳を凝らすのだが、物音一つしない。と、その時だった。
バシッ!!
不意に真吾は体を何者かに叩かれた。
バシッ!!
「ああッ!!」
背中を打ち付けられるような感覚がして、思わずよろめく。
ドゴッ!!
「ぐおッ!!」
今度は腹部に蹴りを入れられたような感覚がして、思わず軽く飛び上がる。
ドガッ!!
「ああああッッッッ!!!!」
今度は体の側面に蹴りを入れられたような感覚がして、バランスを崩した真吾は思わずゴロゴロと転がる。
「ぐッ!?」
次の瞬間、首を絞められ、そのまま無理矢理立ち上がらされる感覚に陥る。
「…あ、…はぁ…ッ!!」
しなやかに仰け反る真吾の体。とその時、目の前にサイゴーンが姿を現したのだ。
「…サ…ッ、…サイゴーン…ッ!!」
少しずつ意識が朦朧として行く。メカであるサイゴーンに力加減は存在しない。
「食らえッ!!」
サイゴーンの三面の顔がクルクルと回り、鈍い緑色の瞳をした面が現れた。
「!!」
真吾は次に来る攻撃を覚悟する。
「サイゴーン!デスビームッ!!」
その瞬間、サイゴーンの鈍い緑色の瞳から電撃が放たれ、真吾は至近距離からそれをまともに浴びせられた。
「ああッ!!ああッ!!あああああッッッッッ!!!!」
真吾の体が棍棒のようにグンと直立する。超高圧の電流が真吾の体を苛む。
「ぬおおおおッッッッ!!!!」
サイゴーンはそう言うと、真言の体をいとも簡単に弾き飛ばした。
「ああああッッッッ!!!!」
真吾の体が人形のように弾き飛ばされ、壁に激突し、崩れ落ちる。
「…あ、…かはあぁ…ッ!!」
体中に荒れ狂う電撃の激しい痛みと、首を絞められたことによる窒息感とで意識が朦朧として来る。その時だった。
「サイゴーンッ!!」
格子状の柵の向こう側から、プリンスがサイゴーンに声をかけた。サイゴーンが無言でプリンスの方へ振り向く。
「!?」
プリンスを見た真吾は、思わずぎょっとなって立ち竦んだ。その目は何かを思い付いたかのようにギラギラと悪意に満ち、その口は不気味な笑みを零し、自身が持っているステッキを舐め上げていたのである。
「もっとオレを楽しませろよ、サイゴーンッ!!」
「かしこまりました!」
するとサイゴーンは、クルリと真吾の方へ向き直った。
「!!」
真吾は、朦朧とする意識の中、何とかして体勢を整える。
「サイゴーンッ、不動念力ッ!!」
サイゴーンがそう叫び、ステッキを振ったその瞬間だった。
「…あ…!!」
真吾はガクンと体が重くなり、自分の力ではどうにも出来ない感覚に襲われた。
「…あ…あ…あ…!!」
体を動かしたくても動かせない。声を上げたくても上げられない。金縛りに遭ったような感覚。
「…ぬうううッッッ…!!!!」
右手でステッキを突き出したまま、サイゴーンは左手の拳を突き出し、その指を少しずつ開き始めた。
「…う、…あぁ…ッ!!」
するとどうだろう。真っ直ぐに立った状態で金縛りのようになっていた真吾の両手両足が少しずつ開かれているではないか。
「…か、…体が…ッ!!…言うことを、…聞かない…ッ!?」
程なくして、真吾の体は立った状態で大の字に開かれていたのだった。
「…フフフ…!!」
格子の扉を開けて、プリンスが再び入って来た。
「さぁ、第2ラウンドだよ、グリーンツー!!」
その目は更に淫猥な輝きを増していた。