違反切符 第18話
(…なんで…やねん…?)
呆然とし、意識が朦朧としている。いや、朦朧としていると言うよりも、自分を見失いかけていた。
(…この世には、…神さんはおらへんのか…!)
運が悪いと言うだけではすまされない。ワンパーに襲われ、悪戯をされていた少年・伊達健太を助けず、物陰に隠れた。その健太が、ワンパーによってズボンと下着を同時にずり下ろされ、公衆の面前で性器を露わにした。その時になってようやく動いた。だが、その行いが全て、離れたところにセットしてあったビデオカメラに録画され、更に、自身がグリーンレーサーにアクセルチェンジしたところもしっかりと記録されていた。
(…神さんも、…へったくれもあるかい…!!)
ビデオカメラに記録されていたことを揺すられ、健太とその友人・並木瞬にいいようにされている上杉実。今、実は健太の部屋で、グリーンレーサーにアクセルチェンジさせられ、健太が突き出した健太の男子としての象徴を口に含まされ、健太はその快感に耐えきれず、実の顔に向けて射精したのだった。
「…っああ…ッ、…気持ち良かったあああ…!!」
顔を赤らめ、荒い息をして健太はそう言うと、気だるそうにどすんとベッドの上に座り込んだ。
「…う…うぅ…!!」
顔に健太の精液をべっとりとこびり付かせている実。塊ではない液状の部分がトロトロと流れ、半開きになった実の口の中へ入って行く。
「…う…ッ!?…ゲホッ!!…ゲホッ!!」
その独特の臭気に思わずむせ返る実。その時だった。
「おい、実」
実と健太の情事をビデオカメラで録画していた瞬が冷たい声を発する。その声を聞いただけで、実はビクッと体を竦めた。
「お前のご主人様である健太が、お前にありがたい液体をぶっかけたんだ」
相変わらず冷たい視線を送る瞬。言われなくても、次の言葉が分かった。
「…舐めろよ…」
やっぱり…。うっすらと目を開けると、目の前にはニヤニヤと笑っている健太。
「…もう、…勘弁してくれ…!」
絞り出すように言う実。その時だった。
「なぁ、健太ぁ」
不意に瞬が健太を呼んだ。
「何だよ?」
瞬の言いたいことを見透かしているかのように、健太が更に笑みを大きくする。
「…確か、オレ達の同級生に、実と同じ会社に勤めているヤツがいたよな…?」
「んなッ!?」
その言葉に、実は思わずぎょっとなる。すると健太は、
「…ああ、いたいた!お坊ちゃま育ちで、いつも言葉の後ろに『でございます』って付けてたヤツ!」
と、実が知っている人物の真似をするかのように言った。
「…ま…さ…か…!!」
顔から血の気が引いて行く。
「そいつもここへ呼ぶか?」
「やッ、止めろォォォォッッッッ!!!!」
瞬のその言葉に、実は思わず叫んだ。その勢いで、縛り付けられているベッドがガタガタと揺れる。
「…アイツは…ッ!!…直樹は…ッ!!…何も関係ないやろぉッ!!」
土門直樹。実と同じくペガサスで働く18歳。いつもニコニコとして穏やかで、製図をすることが大好きな、実の弟のような存在。そして、実がグリーンレーサーとしてボーゾックと戦うのなら、直樹はブルーレーサーとして戦っていた。
そんな直樹まで巻き込もうとするのかと、実は勢いに任せてそう叫んでいた。だが、
「…あ…!!」
と瞬時に事を理解し、力なくベッドに崩れ込んだ。
「フフ…ッ!!」
瞬が勝ち誇ったように笑い、
「ようやく、自分の立場を理解したようだな…!」
と言った。そして、
「…じゃあ、実。…お前の顔をきれいにしろよ…!」
と言い、実の両手の拘束を解いた。
「…うう…ッ!!」
顔を真っ赤にし、目を固く閉じた実は、意を決したように、顔にかかった健太の精液をグリーンレーサーの白いグローブで掬い始める。
…グチュッ!!…クチュッ…!!
淫猥な音が健太の部屋に響き渡る。
「…ッ!!…うえ…ッ!!」
時折、実がえづく。
「…クッソォォォォッッッッ!!!!」
ブルブルと体を震わせながら、懸命に堪え、何とかその場をやり過ごした。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
荒い息をし、疲れた表情を見せる実。そんな実に追い打ちをかけるかのように、
「おい、実」
と瞬が実を呼んだ。
「…ッ!?」
その瞬を見た瞬間、実の体からは更に血の気が引いた。
瞬の股間。ジーパンと下着をも下げたそこからは瞬の大きく勃起した性器が露わになっていた。
「相変わらず、デッケェよな、瞬のそれ!」
ちょっと悔しそうに健太が言う。瞬はニヤリとすると、
「実、オレのもしゃぶれよ…!」
と言い、ゆっくりと実に近付いて行く。
「…も、…もう…、…勘弁してくれ…!!」
ぽろぽろと涙を零しながら、実は小さく首を左右に振る。
「じゃあ、直樹をここに呼ぶか?」
再び、瞬の冷たい声が響く。その背後には、ビデオカメラを持った健太がいる。
「たッ、頼むからッ、それだけは勘弁してくれッ!!」
もう、実には逃げ場所はどこにもなかった。やがて、諦めたかのように、
「…分かり…ました…」
と実は言うと、瞬のそれを解かれた右手で掴もうとした。だが瞬は、
「おっと!」
と言い、腰をクイッと後ろへ引いたのである。
「…?」
当然のことながら、実がきょとんとする。だが、瞬は勝ち誇った笑みを浮かべたままで、
「もっと面白いことを思い付いたぜ!」
と言い、いきなり実の両手両足を拘束していた拘束具を全て外した。
「…え?」
実が声を上げると、
「実、立てよ」
と瞬が静かに言った。
「…はい…」
静かにベッドから起き上がる実。
「うっわぁ…!」
瞬の後ろで、健太が声を上げた。
「実ぅ。お前のスーツ、ぐしょぐしょじゃねぇか!」
グリーンレーサーのクルマジックスーツ。きらきらと光沢のある鮮やかな緑色のスーツが、実自身が射精した分と、健太が射精した分とでぐっしょりと濡れ、大半が光沢を失っていたのである。だが、瞬はそれに目もくれず、
「実、両手を後ろで組めよ」
と言った。
「…こうか?」
実が両手を後ろで組むと、瞬があっと言う間に両手を手首のところで縛った。そして、物凄い力で実をその場に跪かせたのである。
「…な、…何や…ッ!?」
実が見上げた瞬間、言葉を失った。目の前には、瞬の大きく勃起した男子としての象徴があった。
「…さぁ、実。…口を開けろよ…!」
実は、暫く呆気に取られていたが、やがて、諦めたかのように目を閉じると瞬のそれをそっと口に含んだ。
「…あぁ…!」
その瞬間、瞬は甘い吐息を漏らし、目を閉じ、恍惚な表情を浮かべた。