終わらない因縁 第16話
クジャクの口から飛び出した言葉に、大五は暫くぽかんとしていた。
「…クジャク…?…何を、…言って…?」
だが、顔を真っ赤にし、目にはいっぱい涙を溜めているクジャクを見ていた時、大五の頭の中で少しずついろいろなことが繋がって行く。そして、俄かに顔を真っ赤にしたかと思うと、
「…んまッ、…まさか…ッ!?」
と言い、目を大きく見開き、体を震わせた。するとクジャクはコクンと頷き、
「…そう言う…、…ことだ…」
と言った。
「…私は孔雀明王の化身。…下界の、衆生の者に触れることは出来ぬ。…もし、それを破れば、私は化身としての資格を失い、二度と天界へ戻れなくなる」
その目からポロポロと涙が零れ落ちた。
「だがッ!!私は孔雀明王の化身である前に1人の女!大五ッ、私はお前を、本気で愛してしまったのだ!!」
そう言った時、クジャクは大五にしがみ付くように抱き付いた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
大五の体に、クジャクの柔らかい体が触れる。
「…ク…ジャ…ク…!?」
ドクンッ!!ドクンッ!!
大五の体を熱いものが駆け巡る。
ようやく、大五の夢だったクジャクをこの手で触ることが出来ると言う感情と、目の前にいる美しい女性と交わることが出来ると言うおぞましい感覚。
「…うう…ッ、…あぁぁ…!!」
クジャクの目の前で醜態を何度も何度も曝した。そのたびに、恥じらいもあった。だがこれからは堂々とその醜態をクジャクの目の前で曝すことが出来る。
「…ぁぁぁぁ…!!」
その時だった。
大五の体からピンク色の淫猥なオーラのようなものが湧き上がって来たかと思うと、その目が不気味に光った。そして、
「…ぁぁぁぁああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と叫んだかと思うと、
「…クジャク…!!…クジャクううううううううううううううううッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!…お前を、…お前をッ、…女にしてやるッ!!…そしてッ、…この世の者となったお前に、ずっと仕えさせてくれええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と叫び、クジャクを強く抱き締めていた。
「…すまぬ…、…大五…ッ!!…すまぬ…ッ!!」
クジャクが大五を強く抱き締める。
「…だが、シャダムを倒すことは忘れてはおらぬ!」
すると、クジャクは大五をじっと見上げ、
「…私に、…ついて来てくれるか?」
と尋ねた。
「当たり前だッ!!」
鼻息をふんふんと荒くしながら、
「俺はッ、シャダムを倒すためにもッ、そしてッ、クジャクを守るためにもッ、何だってするッ!!たとえ、他の仲間から何を言われようともなッ!!」
と言ったかと思うと、
「行くぜッ!!オーラチェンジャーッッッッ!!!!」
と叫んだかと思うと、右腕用のオーラギャザーと左腕用のオーラスプレッダーを挿し込んだ。その瞬間、大五の体が眩しく光り、次の瞬間には、光沢のある鮮やかな白と緑を基調としたシシレンジャーのスーツを身に纏っていた。
「さあッ、クジャクッ!!やってくれッ!!」
いつもと違った感情が篭っている大五。シシレンジャーの獅子をあしらったマスクは最初から外されていた。
「ああ、大五ッ!!」
シシレンジャーに気力転進した大五。その体が光沢のあるスーツに包まれ、キラキラと輝いている。
「…何と、…何と、逞しいのだ…!!」
クジャクがほうと溜め息を吐く。
「…お前の腕、足、胸…。…そして、…ペニス…。…あぁ、…全て、…欲しい…!!」
「ああ。お前の好きにしてくれ、クジャクッ!!」
その時、クジャクが大五に歩み寄ったかと思うと、大五の目の前で背伸びをした。そして、静かに顔が大五の顔に近付いて行く、お互いの唇が重なり合った。
「…ククク…!!」
その頃、そんな2人の様子を遠くから眺めている者がいた。シャダムだ。
「…やったぞ…!!」
その体がブルブルと震え、目はギラギラと輝いている。
「…大五…。…愚かなやつだ…!!…愛する女に現を抜かし、堕ちて行くとは…!!」
シュウウウウ、シュウウウウ…ッッッッ!!!!
そんなシャダムの目の前で抱き合っている2人の“男”。1人は当然のことながら大五で、もう1人は醜い顔を持ち、額に大きな筒を付けたゴーマ怪人・万華鏡伯爵だった。
「大地動転の玉も随分と大きくなった。だが、まだまだ足りぬ!!」
シャダムの右手の上で煌々と輝く白く眩しい、サッカーボールほどの大きさの球体が浮かんでいる。
「恐らく、次の1回で大五は完全に壊れる。大五の心は既に万華鏡伯爵が見せている幻影のクジャクに囚われている。あとはその体がどのくらい保つのか…。次の1回で壊れてしまったのなら、それもまたよし。その時は、他の連中を探せば良いだけのこと…」
シャダムの口元が不気味に歪む。
「そしてッ、より大きさを増し、より強力になった大地動転の玉を使い、俺はこの世界に復讐をするッ!!俺を貶めたこの世界をッ、俺の好き勝手にし、汚れた世界に作り変えてやるぞオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
…チュッ!!…チュクッ!!…チュクチュク…ッ!!
大五とクジャクの唇が重なり合い、くすぐったい音を立てている。
「…クジャク…!!…クジャク…ッ!!」
「…ああ…。…大五…ッ!!」
お互いの体を強く抱き締め、お互いの温もりを感じるように口付けを交わす。
「…大五…」
暫くすると、お互いの唇が離れ、クジャクが頬を赤らめて声をかけた。
「うん?どうした、クジャク?」
大五は穏やかな笑みを浮かべ、クジャクを見つめている。
「…また、…お前を拘束してもいいか?」
「…え?」
クジャクの放った言葉に、大五は戸惑いを覚えた。クジャクを女にして欲しいと言っておきながら、クジャクはクジャク自身に触れさせないように再びしようとするのか…。
「…確かに、私はお前に女にして欲しいと言った。…だが、…私とて恥じらいはある。…それに、女になるのなら、別にお前に触れられなくともなることも出来る。…私に任せてはくれぬか、大五?」
「…分かった!!…お前の、好きにしてくれ!!」
大五がそう言った時、
ガシャンッ!!ガシャンッ!!
と言う、金属の乾いた音が聞こえ、次の瞬間、大五は再びX字に両手両足を広げられていたのだった。