終わらない因縁 第21話
大声が聞こえた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
キーンと言う空気が流れる音が聞こえるくらいの静寂に包まれた白い靄の空間に、亮が飛び込んで来ていたのだ。
「…お、…おお…。…亮…、…じゃないか…」
シシレンジャーに気力転進した大五。その光沢のある鮮やかな緑色のスーツが荒い呼吸で大きく動く。そのたびにキラキラと眩しく輝いた。バイザー越しに見える顔を真っ赤にしている大五。その虚ろになった目尻が垂れ下がり、微笑みを浮かべていた。その足元には、クジャクが無言で亮を見つめている。
「…何…やってんだよ…!」
反対に、亮は目を大きく見開き、声を震わせる。そして、
「何やってんだって、聞いてんだよオオオオッッッッ!!!!兄貴イイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「…何…って…?」
不思議そうな表情で亮を見返す大五。だがすぐにニヤリと笑って、
「見れば分かるだろう?クジャクとイイコトをしてたのさ!」
と言った。
「…兄…貴…?」
だが、亮は相変わらず呆然としたままだ。
それはそうだろう。亮に映るクジャクは、醜い顔、額の先に筒状のものが付き、しゅうしゅうと白いガスを上げているゴーマ怪人・万華鏡伯爵なのだから!その時、大五が真顔に戻り、
「亮。お前も知ってるだろ?シャダムが復活したことを」
「あ?…あ、…ああ…」
「クジャクによれば、蘇ったシャダムは相当な怨念を持っているらしい。そのシャダムを再び、封じ込めるために、俺とクジャクで大地動転の玉を作ろうとしていたんだ」
「…大地動転の…、…玉…?」
一瞬、呆然とした亮だったが、
「…だッ、…大地動転の玉は、…シャダムを倒した時に消えたはず…!!」
と、とんちんかんなことしか言えずにいた。大五は、
「そうだ。だから、その大地動転の玉を、俺の気力とクジャクの妖力を使って再び作り出そうとした。だから、こうやって俺とクジャクは何度も何度も交わり…」
「止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
大五の言葉を遮るように、亮が叫んでいた。
「…何…言って…」
握り締められた拳がブルブルと震えている。
「何言ってんだよッ、兄貴イイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
目をカッと見開き、大五に怒鳴る。だが、大五は相変わらずきょとんとした表情のままだ。
「…そ、…そこにいるのは、クジャクじゃないッ!!…ゴーマ怪人なんだよオオオオッッッッ!!!!兄貴はそのゴーマ怪人と、変なことをずっとしてたんだよオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その時、クジャク、いや、亮から見れば、万華鏡伯爵ガがゆっくりと立ち上がった。そして、
…ゴクン…!
と、喉を大きく鳴らした。
「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
亮は大声で叫ぶものの、大五はと言うと、
「おいおい、クジャク。俺のいやらしい液体を飲んでしまったのか?」
と、シシレンジャーのバイザーの中で目を細めている。
「フフッ!!」
その時、クジャクは悪戯っぽく微笑んだ。そして、
「私とて、1人の神、…いや、…お前と交わったからすでに神から堕ちた。最早、ただの女に過ぎぬ。だから、そなたのいやらしい液体を飲みたくなったのだ」
と言った。そして、亮をチラリと一瞥すると、
「私が作り出した閉鎖結界に他人が入って来ることなど、あり得ぬと思ったのだが。やはり、亮も気力が残っていると言うことか…」
と言い、
「亮の気力もシャダムを倒すために大いに役立ってくれるかもしれぬな!」
と言ったかと思うと、万華鏡伯爵の目がギラリと光ったのだ。
「…い、…いい加減にッ!!…しろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
亮がありったけの声で叫ぶ。だが大五は、
「さっきから、どうしたんだ、亮?怒鳴ってばっかりじゃ、何も分からないじゃないか?」
と言うだけだ。
「…分からないのは、…兄貴の方だああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
はぁはぁと荒い呼吸をして、大五を睨み付ける亮。
「…兄貴…!!…そこにいるのはクジャクじゃないッ!!ゴーマ怪人なんだッ!!」
「…は?」
大五はそう言うと、クジャクと見つめ合い、
「…プッ!!」
と吹き出した。
「…りょ、…亮…ッ!!…お前ッ、…目が…、…おかしいんじゃないのか?…ここにいるのは、…紛れもない…クジャクだぜ?」
「…ぁぁぁぁ兄貴イイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
何を言っても無駄だと分かった亮。すかさず、オーラチェンジャーを構えた。
「…言葉で言っても分からないのなら、…力ずくでも分からせてやるぜええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!行くぞぉッ!!オーラチェンジャーッッッッ!!!!」
右腕用のオーラギャザーと左腕用のオーラスプレッダーを挿し込む。その瞬間、亮の体が眩しく光り、次の瞬間には、光沢のある鮮やかな白と赤を基調としたスーツを身に纏っていた。
上半身はまるでベストのように光沢のある真っ白なデザイン、そこから伸びる鮮やかな赤色の四肢。亮の頭部を覆うマスクには龍の装飾が施され、金色のデザインが煌びやかさを醸し出していた。リュウレンジャー、亮のオーラチェンジした姿だった。
「天火星ッ、亮ッ!!」
軽くポーズを決めると、
「赤龍双龍剣ッ!!」
と、ダイレンロッドを変化させた剣を握り、
「行くぞオオオオッッッッ!!!!」
と宙高く飛び上がったのだ。
「何をやってるんだッ、亮オオオオッッッッ!!!!」
「大五ッ!!私を守っておくれッ!!」
大五が怒鳴った時、大五の背後にクジャクが隠れる。
「獅子棍棒ッ!!」
その時、大五の両手には亮と同じくダイレンロッドを変化させた棍が握られていた。
「退けええええッッッッ!!!!兄貴イイイイッッッッ!!!!」
「退くもんかッ!!」
大五は片膝をついた状態で獅子棍棒を左右に伸ばし、宙から真っ直ぐに下りて来る亮の赤龍双龍剣を受け止める構えを取る。
「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
亮が吼え、赤龍双龍剣を振り下ろした。その瞬間、
ギイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う冷たく響く金属音が辺りに響き渡ったのだった。