刹那の夢 第7話
…トクン…、…トクン…。
お互いの肌の温もりがスーツを通して伝わって来る。それと同時に、お互いの心臓の大きな脈動も伝わっていた。
いや、温もりと大きさはそれだけではなかった。
重なり合っている2人の2本の足の付け根部分。それぞれの男としての象徴であるペニスがそれぞれのスーツの中で大きく勃起し、ビクッ、ビクッ、と蠢いていた。
「…南…郷…」
「…竜…さん…」
ダイナブラックのマスクの中で、竜はぼんやりとした瞳を南郷に向けている。反対に、ダイナイエローのマスクの中で、南郷は顔を引き攣らせ、大きく喉を動かして息を飲み込んだ。
「…ほ、…本当に…、…いいんだね…?」
南郷の声が心なしか、震えている。すると竜は、
「…ああ…。…拙者に、…いろいろ教えて下され…!」
と、囁くように言ったのだ。
「…じ、…じゃあ…」
その時、ダイナイエローのマスクが光ったかと思うと、中から緊張した面持ちの南郷の顔が現れた。
「…りゅ、…竜さんもマスクを取ってよ」
「…ああ…」
一言そう言うと、ダイナブラックのマスクが光り、中から顔を赤らめ、目をやや虚ろにした竜の顔が現れた。
「…い、…行くよ?」
おぞましい感情を持ち合わせていながらも、いざとなると緊張してしまう。
(…何で、…オレが…!?)
男同士でいかがわしいことをしている。しかも、自らの意志ではなく、今、目の前にいる竜の願いを叶えるためにやっているのだ。竜がいざ、ダイナブルー・島と付き合い始めた時、年上として、島をリード出来るようにするためだ。
(…でも…)
南郷の心の中を支配しようとしているおぞましい感覚。
(…竜さんを…、…支配したい…!!)
自分よりも年上の竜。その体付きだけではなく、ジャシンカ帝国と戦うその姿も、南郷にとっては憧れでもあり、羨望の相手でもあった。それゆえに、そんな竜にどこか優越感を持ちたいと常々思っていた南郷にとっては、竜のこの願いは自らを優越な場所へ置き、竜をあの手この手で支配出来ると言う思いさえあったのだ。
「…ッ!!」
その時、南郷は目をギュッと閉じると、顔を竜の顔へ近付ける。そして、ぷにっとした柔らかいものに触れた途端、顔を真っ赤にした。
「「…ん…ッ!!」」
2人同時に声を上げ、2人同時に体をビクリと跳ねらせる。
「「…」」
暫くの間、無言で固まってしまう2人。
ドクンッ!!ドクンッ!!
2人の心臓の脈動が大きくなっている。もう、後戻りは出来なかった。
その時、南郷がゆっくりと口を開き、舌をおずおずと出し始めた。
「…ッ!!」
すると、竜は顔を真っ赤にし、眉間に皺を寄せ、体をピクリと跳ねらせたのだ。
「…竜さん…。…口、…開けてよ…」
「…しッ、…しかし…ッ!!」
竜は南郷とまともに視線を合わせようとしない。
「…島を…、…リードしたいんだろ?」
囁くような南郷の言葉に、竜は一瞬、はっとしたような表情をしたが、すぐに、
「…ッ!!」
と唸り、目を硬く閉じ、眉間に深い皺を寄せた。
「…もう一度…」
南郷の顔がゆっくりと竜の顔に近付き、再び、唇を重ねる。そして、舌を出してみると、今度はそれはするんと竜の口の中へと入って行った。
…チュッ!!…チュク…ッ!!
南郷の舌が、竜の口の中で蠢く。そのたびにクチュクチュと言う淫猥な音が響き渡る。
「…ん…ッ!!…んん…ッ!!」
竜は南郷の体をしっかりと抱き締めるようにし、懸命にその感覚に耐えようとしている。その証拠に、眉間の皺が更に深くなっていた。
クチュクチュクチュクチュッッッッ!!!!クチュクチュクチュクチュッッッッ!!!!
南郷の舌はそんな竜に構わず、激しく竜の口腔内を蹂躙する。その舌を限界まで奥に入れ込み、竜の舌を掬い上げるようにする。
「んんんんッッッッ!!!!んんんんッッッッ!!!!」
その時、竜が南郷の背中をドンドンと叩いていた。
「…あ…」
夢中になっていた。竜を支配していると言うおぞましい感覚が、南郷を支配していたのだ。
「…いッ、…息苦しいでござるよッ、南郷…ッ!!」
顔を真っ赤にし、はぁはぁと荒い呼吸をする竜。そんな竜を見て、
「…ごッ、…ごめんごめんッ、竜さんッ!!…ちょっと、思わず情熱的になっちゃった…!!」
と、南郷は照れたように笑うと、
「…島には、こんな乱暴なことはしちゃダメだよ?」
と言い、
「さ、もう一度。今度は、竜さんも舌を動かしてみてよ」
と言うと、竜と三度、唇を重ねた。
…チュッ!!…チュクッ!!
くすぐったい音がそこから聞こえ始める。
「…ん…ッ、…んふ…ッ!!」
「…んん…ッ!!…んんんん…ッッッッ!!!!」
お互いの舌を求め合い、懸命に動かす。南郷は慣れているのか、ゆっくりとしているのに対し、竜は相変わらず、苦しそうな声を上げ続ける。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
暫くしてお互いの唇が離れた時、竜は更に呼吸を荒々しくしていた。
「…フフッ!!」
そんな竜を見て笑う南郷。
「…竜さぁん。…何だか、…物凄くかわいい…!!」
「…へ?」
その時だった。
南郷が腰を前後に動かし始めたのだ。それはつまり、お互いに勃起している男子としての象徴が擦れ合うことを意味していた。そして、そんな経験も初めてな竜にとって、それは竜の体に強烈な電流が流れることを意味していた。
「うあッ!?ああッ!?ああッ!!ああッ!!」
大きく勃起したペニスから流れる強烈な電流に、竜は思わず喘いでいた。と同時に、
グチュッ!!グチュッ!!
と言う淫猥な音までも聞こえて来る。
「フフッ!!竜さぁん、オレのキスだけで感じちゃったのぉ?」
腰を前後に動かしながら、南郷が竜に問い掛ける。その顔もほんのりと紅潮している。
「…わッ、…分から…んで…、…ござる…ッ!!」
「またまたぁ。気持ちいいから、竜さんのチンポ、勃ってるんでしょお?」
「…ッ!!」
図星を指され、竜は顔を真っ赤にして黙り込む。
「…フフッ!!」
ニヤニヤと笑っている南郷。その顔が、竜にとっては物凄く意地悪い顔に見えていた。
(…こんな南郷、…今までに見たことがあっただろうか…?)
記憶を巡らせても、ここまで意地悪い表情をする南郷は思い当たらない。
「…さん…。…竜さんッ!!」
「…え?…あ…」
はっと我に返った時、竜は南郷に呼ばれていた。
「大丈夫かい、竜さん?」
「…あ、…ああ…」
南郷から与えられる快楽に、意識が半分ぼんやりとしているのも事実だった。目の前にいる南郷は、口では心配そうにしているように見えたが、実際、その目はギラギラと輝き、ニヤニヤとしている。
「…ッ!!」
そんな南郷に、ゾクゾクとした感覚が体を走ったのが分かった。
「まだまだ、これからが本番なのに…。…耐えられるかなぁ、竜さん?」
「…え?」
その時だった。
キスの時とは違った、ビリビリとした激しい電流が竜の体を流れたのだった。