FALLIN’ ANGEL 第26話(最終話)
「…はぁ…」
天知天文研究所。その一部屋で、ゴセイブルー・ハイドは大きく溜め息を吐いていた。
「…まさか、あんなことになるとは…」
デスクに向かい、頭を抱え込む。口から後から後から出て来るのは、後悔の溜め息ばかりだ。
この部屋で、ゴセイレッド・アラタを犯した。ゴセイブラック・アグリの部屋を掃除していたアラタが、男女の性交渉を収めたDVDを持って来た。その時のアラタと言ったら、顔を真っ赤にし、鼓動を早くし、目を潤ませ、子供のようにおどおどしていた。まるで、見てはいけない物を見つけてしまったかのように…。
この年齢になれば、当たり前に知っていることをアラタは全く知らないでいた。そんな純真無垢な彼を、ハイドは言葉巧みに犯したのだった。まさに、「汚す」と言う言葉が良く似合う情景だった。
「…オレは…、…アラタが…、…好きだったのかな…?」
アラタの疑うことを知らない、ハイドに向ける純粋な微笑みを、ハイドはドキドキしながら見つめていた。そんなアラタを裏切るかのように、制御の効かなくなったハイドが無理矢理襲ったと言ってもいいかもしれない。しかも、そんなところをアグリに見つかった。
最初は、アラタと同じようにうぶなアグリをからかうだけのつもりだった。いや、からかうと言うよりも、アグリのプライドをズタズタにし、アラタと共に自分に従わせるつもりだった。もっと酷い言い方をすれば、アラタとアグリを、都合の良い自身の性処理の相手として使うつもりだったのだ。
だが。事態は思わぬ方向へ動いた。
「…オレが、…あんな薬を、…使わなければ…!」
アラタをもっと汚すため、アグリと結託してアラタの体内に媚薬を打ち込んだ。しかし、その媚薬がハイドを、そして、アグリをも狂わせたのである。ハイドは腰が抜け、その快楽には勝てず、自らの体をアグリに差し出してしまった。そしてアグリは、今までうぶだったのが災いし、その快楽にすっかり酔い痴れ、アラタとハイドは、今ではアグリの言うがまま、されるがままになってしまったのである。
「「「行ってらっしゃ〜いッ!!」」」
今日も3人は、アラタの幼馴染みのゴセイピンク・エリと、アグリの妹のゴセイイエロー・モネ、そして、天知博士の一人息子・望を明るい声で見送る。
「…さて…と…!!」
3人の姿が見えなくなった瞬間、アグリの目付きが変わった。
「…アラタ。…今日の3人はどのくらい帰って来ない?」
ギラギラと野獣のような瞳で、アラタを見下ろすアグリ。すると、アラタはニコッと微笑んで、
「今日はね、週末だからあちこちのデパートでバーゲンとかセールとかやるみたい。買い物に目がないエリとモネだからね、数時間は帰って来ないと見たよ。それに…!」
アラタはそう言うと、
「じゃあんッ!!」
と大声で言うと、1枚の広告を広げて見せた。
「そのデパートの中のレストランの1つでね、ケーキバイキングを開催するみたいだよッ!!だぁかぁらぁ!!」
そう言うとアラタは、嬉しそうにアグリに寄り添う。
「今日は夕方までは帰って来ないと思うよッ!!」
「…よぉし…!!」
アグリはそう言うと、思わず舌なめずりをした。
「…ねぇ…。…アグリぃ…!!」
部屋に戻る途中、アラタが顔を赤らめ、アグリに凭れかかった。
「…どうした、アラタ?」
アグリはニヤニヤしながら、アラタに問いかける。
(…分かっているくせに…!)
ハイドは大きく溜め息を吐いた。
「…今日も、…アグリのを、…欲しいよ…!」
「…オレの何が欲しいんだ、アラタ?」
ニヤニヤとするアグリ。そんなアグリの股間部分が大きく盛り上がっていた。すると、アラタは更に顔を赤らめて、
「…アグリの、…オ、…オチンチンが…、…欲しい…!」
と小さく呟くように言ったのである。
「…フフッ!!」
アグリは低く笑うと、アラタの手を握り、自身の部屋のドアを開けた。
「来いよ!」
アグリがニヤリとし、アラタを手招いた。
「…うん…!」
アラタは頷くと、はにかんだ笑顔をアグリに向けた。
「お前も来ないのか、ハイド?」
アグリが勝ち誇った笑みをハイドに向けた。
「…いや…」
ハイドは、敢えて作り笑いをした。そして、
「…今日は…、…止めておくよ…」
と言った。
「そっか。…じゃな!」
アグリはそう言うと、部屋の扉を勢い良く閉めた。
ハイドは一人部屋へ戻り、ドアを静かに閉めた。
「…はぁ…!」
椅子に腰掛けると、再び大きく溜め息を吐いた。
「…オレは…」
アラタの笑顔が浮かぶ。
(ハイド!)
屈託のない笑顔。キラキラと輝く、汚れを知らないその笑み。
「…オレは…、…アラタが…、…好きだったんだな…!」
そう呟いた瞬間、ハイドの体が光り、ゴセイブルーに天装していた。
隣りの部屋から、アラタの、少し高めの喘ぎ声が聞こえて来る。今日もアグリはゴセイブラックに天装し、大きく勃起した股間を突き出しているのだろう。そして、そんなアグリの股間を、ゴセイレッドに天装したアラタが愛撫しているに違いない。
「…アラタ…」
そう言いながらハイドは、光沢のある真っ白なズボンの股間をゆっくりと揉みしだき始める。
「…ん…!…あぁ…ッ!!」
静かに目を閉じ、甘い吐息を漏らす。そんなハイドの股間はみるみるうちに大きくなり、真っ白なズボンに大きな山を作り出した。
「…アラ…タ…!!」
隣りの部屋からの嬌声を聞きながら、ハイドがアラタの名を呼ぶ。
アグリのあの勝ち誇った笑みに腹立たしさを覚えた。それに、アラタがアグリに寄りかかることにも、胸の苦しさを覚えた。だが、そうさせてしまったのは自分自身で、そんな自身が犯した愚行を後悔してももう遅い。「後悔先に立たず」とはよく言ったものだと、ハイドは思っていた。
「…アラタ…ッ!!…アラタ…ぁ…ッ!!」
自身の大きく勃起した股間を上下する右手のスピードが徐々に早く、小刻みになって行く。
同時に、
…クチュッ!!…クチュクチュ…ッ!!
と言う淫猥な音が部屋に響き始める。
「…う、…あぁ…ッ!!」
ハイドは股間を見て、声を上げた。自身の股間は痛いほど大きく勃起し、その先端は光沢を失い、ねっとりと輝く液体が溢れ出していたのである。
更に、隣りの部屋では、嬌声がますます大きくなって行っていた。
「…アラタ…ッ!!…アラタぁぁッッ!!…ああッ!!…イクッ!!」
ハイドがそう呻いた時だった。
ドビュッ!!ドビュドビュッ!!ビュクビュク…ッ!!
ハイドの真っ白なズボンの股間部分が更に光沢を失い、代わりに濃白色な液体が物凄い勢いで溢れて来たのだ。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
大きく荒い息をするハイド。そのままの状態でヨロヨロと歩くと、
「…う…!!」
と呻いて、ベッドの上にドスンと寝転がった。
「…マジス…」
朦朧とする意識の中、ハイドは、今は亡き大親友のゴセイグリーン・マジスの名前を呼んだ。
「…これは、…天罰なのか…?」
目尻に涙が浮かぶ。
「…オレは、…汚してはいけないものを、…汚して…しまった…の…か…?」
ハイドの目がゆっくりと閉じられ、涙が一雫、零れ落ちた。
FALLIN’ ANGEL 完