ヒーロー陵辱 第6話
それは、僕が今の現場に配属されて間もない時のことだった。
「…よ…、…っと…」
ここにいる他のスタッフは明らかに僕より年下の者もいた。けれど、ここでは僕よりも先輩だ。確かに、僕の方が年が行っているからと言って、変に気を遣う者もいた。けれど、僕はそう言うのは全く気にせず、自分が一番下っ端なのだからと、みんなが嫌がるような仕事を進んでやっていた。
その日もたまたま重い荷物を何往復して運んでいた。
「…ふぅぅぅ…!!」
とは言え、年には抗えない。何度も何度も重い荷物を持ち、腕はガクガク、腰にもかなり負担が来ていた。そんな時だった。
「…よっこい…せ…」
一人きりの倉庫の中。重い荷物を下ろし、少し屈んだ状態から立ち上がったその時だった。不意に目の前がぐにゃりと歪んだような感覚がした。
(…あ…、…れ…?)
視界がどんどん傾いて行く。自分が倒れて行こうとしていると言うことに気付いたのは、まさに倒れる寸前だった。床が視界に入って来たその時だった。
「危ないッ!!」
突然、大きな声が聞こえたその瞬間、ガシッ、と言う音が聞こえるかのように腕を捕まれた。そして、
「おりゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う掛け声と共に、僕の視界が物凄い勢いで映り変わって行ったんだ。
(…え?)
「大丈夫ですかッ、正樹さんッ!?」
気が付いた時、僕は1人の男の子の胸の中にぽすんと蹲るような格好になっていた。
「一人で重い荷物を移動させている正樹さんを見て、心配になって倉庫に来てみたら、正樹さんが急に倒れるから、ビックリしましたよ!!」
僕を心配そうに見下ろす若い男。イケメンとはこう言うヤツのことを言うのかと思うほどの甘いマスク。だが、その中に幼さを残しているこの男。確か、淳市とか言ったっけ。
「…あ…、…ありが…とう…」
少しずつ意識がはっきりして来て、僕は淳市を見上げ、そう言った。
「大丈夫、ですか?」
「…あ…、…ああ…。…少し…、…ふら付いただけだよ…」
その時、淳市は力なく言う僕の腕を支えるようにして歩かせると、近くにあった椅子に座らせてくれた。そして、
「…無理…、…し過ぎですよ、正樹さん」
と言った。
「…けど…。…僕はここでは一番下っ端だから…」
「下っ端だからって、自分だけがそんなに無理することはないでしょうッ!?」
淳市の真剣な眼差しが僕をじっと見つめる。そして、不意に視線を逸らすとおもむろに立ち上がり、
「んしょッ!!」
と言う掛け声と共に、僕が運ぼうとしていた残りの重い荷物をひょいっと簡単に持ち上げた。
「こんなの、お安い御用っすよッ!!」
ニカッと笑うその表情もまさにイケメン。そして、あっと言う間にそれを所定の位置へ移動させてしまっていた。
「…あり…、…がとう…。…淳市…くん…」
すると、淳市は眩しいほどの笑みを浮かべ、
「困ったことがあったら、いつでも言って下さいッ!!オレが何でもしますからッ!!」
と言い、戻ろうとした。だが、ほんの数歩のところで歩みを止めたのだ。
「…?」
ぼんやりと淳市を見つめる。すると、淳市は僕の方へ戻って来た。そして、僕の目の前で立ち止まると、じっと僕を見下ろしたんだ。
「…何?」
突然の淳市の行動に、僕は当然のことながら、声を上げる。すると淳市はフッと優しい笑みを浮かべ、
「…正樹さんって、かわいいっすね!!」
と言ったのだ。
「…は?」
当然、僕は目が点になる。20代後半くらいに見える若い男に、その倍以上の年齢があるかもしれない僕のことをかわいい、なんて言われるなんて…。
確かに、僕は見た目が童顔で、30代そこそこにしか見られない。昔はそれがちょっとした優越感だったのに、最近では劣等感に思える。周りの友人達が年相応になって行くのに、僕だけは何故か、時が止まったような感じになっている。周りの友人達にどんどん置いて行かれているような、そんな感覚が時々、無性に惨めになるのだ。
「…僕が…、…かわいい…?」
僕が尋ねると、淳市はニッコリと微笑んで、
「はいッ!!正樹さん、滅茶苦茶、かわいいですッ!!」
と言ったのだ。
「…止めろよ。年上の人間を、からかうなよ」
思わず声が低くなる。だが、淳市は、
「別にいいじゃないですか!!他の人達はどう思っているか知りませんけど、少なくとも、僕は正樹さんのことが滅茶苦茶かわいいと思えるんですから!!」
と言った。そして、
「そんなかわいい正樹さんだったら、何でも言うことを聞いたり、正樹さんのしたいことをいっぱい叶えてあげたいですッ!!」
と言うと、僕をぎゅううううっと抱き締めて来たのだ。
「…おッ、…おいッ、淳市くんッ!!」
思わず顔が真っ赤になる。誰もいないとは言え、いつ何時、誰がこの場所を通り過ぎるか、分からないのだから。
「…やッ、…止めろって!!淳市くんッ!!」
淳市の太く、逞しい腕にすっぽりと包まれ、筋肉質な胸に顔を埋めるような格好になっている僕。思わず身を捩らせる。すると、淳市は僕をぱっと離し、
「本当に、困ったことがあったら何でも言って下さいねッ!!」
と言うと、淳市は眩しいくらいの笑みを浮かべ、手をひらひらと振って倉庫を出て行った。
「…」
暫く、呆然と倉庫の入口を見ていた僕。だが、暫くすると、
「…クッ、…ククク…!!」
と、口元をぐにゃりと歪ませていた。
「…何でも言うことを聞く、だと…?…僕がしたいことを、いっぱい叶えてあげたい、だと…?」
ドクンッ!!ドクンッ!!
僕の心臓が大きく高鳴り、心の奥底におぞましい感情が湧き上がって来るのを感じていた。
「…だったら…、…叶えてもらおうじゃないか…!!」
そうなのだ。
僕はその時から、淳市をいつか、自分のものにしてやると心に誓っていた。
これも何かの縁だ。こうやって話すきっかけが作れただけで、ヤツの懐の中に容易に入り込むことが出来る。しかも、言質は既に取れている。
(僕がしたいと思っていることを、何でも叶えてあげたいと言ったお前が悪いんだからな…!!)
何かをきっかけにして、ヤツが抵抗出来なくし、あの眩しいほどに美味そうな体をじっくりと味わってみたい。そんなことをずっと思っていた。
「…なぁ、淳市…」
「…く…ッ!!」
街の外れにある小さなSMホテルの一室に呼び出された淳市。イエローライオンの光沢のある鮮やかな黄色と白を基調とした全身タイツを着せられ、壁に備え付けられた拘束具に両手両足をX字に拘束されている。
「…お前、言ったよな?僕のことがかわいいし、何でも言うことを聞いたり、僕がしたいことをいっぱい叶えてくれるんだよなぁ?」
「ああッ!!ああッ!!ああッ!!ああッ!!」
その時、僕は淳市のガッシリとした2本の足の付け根部分に息づく、淳市の男としての象徴、既に大きく勃起し、硬く、熱くなっているそれを握り、ゆるゆると上下に刺激していた。
「…や…ッ、…止めて…、…下さい…ッ!!」
「止めるわけないだろう?」
目をギラリと輝かせ、僕は不気味な笑みを浮かべて淳市を見上げる。
「僕の言うことを何でも聞くんだろう?僕がしたいことをいっぱい叶えてくれるんだろう?」
「…だ…ッ、…だから…って…」
「…僕がしたいことは…、…淳市を僕の奴隷にすることなんだよ…!!」
そう言うと、僕は淳市のペニスを握る手の動きを更に速めた。その瞬間、
「ああッ!?ああッ!?ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!」
と、淳市は膝をガクガクさせながら悲鳴を上げ始めた。
「…や…、…めろ…!!…止めろオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
体を仰け反らせ、真っ赤になった顔を天井の方へ向け、淳市は悲鳴を上げ続けたのだった。