おばあちゃんの悪知恵袋 第19話(最終話)
「…う〜ん…」
このところ、タイガーレンジャー・ボーイは悩み続けている。それは目の前にいるダンのことだ。
「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「おおりゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
物凄い勢いで自主的な鍛錬を繰り返すダン。トリケラレンジャーにダイノバックラーし、自らを痛め付けるかのようにストイックに鍛錬に打ち込む。その光景は、年上2人組であるティラノレンジャー・ゲキとマンモスレンジャー・ゴウシさえ、戸惑わせるほどだった。
いや、戸惑っているのはプテラレンジャー・メイも同じことだった。今までだったら宮殿内にダンの所有物と思われる衣類や雑誌などがあちこちに置かれていたのに、今はそれが1つも見当たらない。
人が変わったようになってしまったのだった。
「…これで…、…良かった…の…かなぁ…」
「オレ、お前が好きだ!!」
ダンを散々甚振ったあの日。元から心が優しいせいか、ボーイはダンの無様な姿を見てスッキリしたと言うよりも胸が痛んでいた。だから、全てを告白した。ダンが飲んだ透明と青色の液体は魔女バンドーラによって作られていたこと、それはボーイが願う通りにダンを操るものだったこと、など。その時、ダンの口から出て来た言葉がこれだった。
いや、それだけじゃない。
「お前にいやらしいことをいっぱいされて、オレは物凄く気持ち良かったんだ!!これからもッ、オレを気持ち良くしてくれよなッ!!」
そう言った時のダンの顔はキラキラと輝き、どっぷりとその快楽に浸ってしまったかのようにも思えていた。だが、
「好きだぜッ、ボーイッ!!お前のことは、オレが絶対に守るからなッ!!」
とも言われた。
「…ああああッッッッ、もうッッッッ!!!!」
ガシガシと頭を掻くボーイ。
「ただ、気持ち良くなりたいだけなのか、本当に僕のことが好きなのか、どっちなんだよオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そう叫ぶと、ボーイは宮殿を飛び出していた。
「おばあちゃんッ!!バンドーラおばあちゃああああんんんんッッッッ!!!!」
向かった先は魔女バンドーラが住む古びた小屋。ギシギシと軋む部屋の引き戸を開けた時、中ではバンドーラがニヤニヤとしながら椅子にちょこんと腰掛けていた。
「来たね」
キラキラと目を輝かせ、ニヤニヤと悪戯っぽく笑うバンドーラ。
「おばあちゃんッ!!ダンに飲ませた薬って、ダンを操るための薬だよねッ!?」
ボーイが尋ねると、バンドーラはニヤリとして、
「本当にそう思っていたのかい?」
と尋ね返したのだ。
「…え?」
きょとんとするボーイ。
その時だった。
「ばあちゃん。オレが説明するよ」
家の奥の方から出て来た者を見た途端、ボーイはその場に固まっていた。
「…ダッ、…ダンんんんんんんんんッッッッッッッッ!!!!!!??」
「ヘヘッ!!」
やや照れ臭そうに笑うダン。
「お前が最初にオレに飲ませた透明な液体。あれは確かに、オレを操る薬だった。だから、オレはメイのスカートを捲ったり、ゲキに暴言を吐いたり、お前を抱き締めたり、お前の前でオナニーをしたりしたんだ。でも、操られたのはそこまで!!」
「ボーイに渡した青い薬。実は、あれは薬じゃなかったんだよ」
「…え?」
ボーイがきょとんとする。
「あれはね、本当にソーダ水だったんだよ」
ニヤニヤと笑うバンドーラの横で、ダンは穏やかな微笑みを浮かべている。
「…ど、…どう言う…こと…?」
「つまりぃ!!」
ダンはそう言いながらボーイの元へやって来ると、ボーイを優しく抱き締めた。
「お前がソーダ水と言って飲ませたのは、本当にソーダ水だったってこと。つか、その前にオレがばあちゃんにタネ明かしされてたってこと!!」
「はああああああああッッッッッッッッ!!!!!!??」
ボーイの悲鳴に似た大声がダンとバンドーラの耳を劈いた。
「…どどどど、…どう言うことなんだよッ、おばあちゃああああんんんんッッッッ!!!?」
「ウフフフフ…!!」
してやったりの顔で嬉しそうに笑うバンドーラ。
「どう言うこともこう言うこともないさね。お前がダンのことで怒っていると言っていても、結局は仲良しさんな2人だからねぇ。お前がダンに対して極悪非道なことが出来るわけないって、アタシャ、最初からちゃあんと見抜いていたんだよ!!」
「で、オレがお前の前でオナニーしちまった後、悔しくてさ。ばあちゃんにそれを話した時、お前がオレに対してお仕置きしたいって言っていたって聞いて。ムカついたんだけど、それが、お前が好きだと言うことを気付かせるきっかけになってさ…」
「…それで…。…騙されたフリをしていた、…ってこと…?」
呆然としているボーイ。するとダンは、
「そ!」
と明るく言うと、
「だったら、お前に騙されたフリをし続けよう、お前のしたいようにさせてやろうって思ってさ!!」
と言った。
「でッ、でもッ、あの青い薬を飲ませた後、ダンに人形になってもらうって言った時、ダンの体が動かなくなったよねッ!?…そ、…それって、僕がそう願ったからじゃないの!?」
「…あのなぁ…」
苦笑するダン。
「お前、今、自分で何つった?」
「…え?」
はたと止まるボーイ。
「…あの青い薬を飲ませた後、…ダンに人形になってもらう…って…。…ああッ!?」
「やっと気付いたのかよ、お前はぁ…」
「アーッハッハッハッハ…!!」
その途端、バンドーラが火が付いたように笑い出した。
「…いッ、…今頃…ッ、…気付いた…のかい…ッ!?…こッ、…これは…ッ!!…傑作…だねええええ…ッッッッ!!!!…プク…ッ!!…アヒッ!!…ヒヤアアアアッハッハッハッハ…!!」
「ばッ、ばあちゃんッ!?」
「…ぐッ、…ぐるじ…!!」
「だッ、大丈夫ッ、ばあちゃんッ!?」
ダンがバンドーラの背中を擦り、ボーイがバンドーラに水の入ったコップを差し出す。すると、バンドーラはその水をグビグビと音を立てて飲み干し、
「…ッ、ああ〜…。…死ぬかと思ったぁ…!!」
と、目を小刻みに瞬かせてゼエゼエと呼吸をした。
「…じ、…じゃあ…。…僕は…、…ダンを操ったつもりでいて、…ダンを甚振ってるんだって勝手に思ってた、…ってこと?」
「いや、実際にオレはお前に甚振られてたさ。あぁ、オレ、ボーイに甚振られてる。すっげぇ、気持ちいい、って思ってたんだ!!」
「…ウ…、…ソ…ぉ…」
力が抜けたようにへなへなとその場に座り込むボーイ。その時だった。
「ボーイ」
バンドーラがボーイの顔を覗き込むように、その場にゆっくりとしゃがみ込んだ。
「アンタ達はお互いがお互いのことを想ってるんだよ。ボーイはダンのことが気に入らないと言っていたけれど、それはダンにきちんとして欲しかったからであって、根っからダンのことが嫌いじゃない。そうだろ?」
「…うん…。…ダンのことは、…好き…だよ…?」
「そうだろ?まぁ、その、好き、って言うのが、ダンの好きとは違うかもしれないけどね。でも、ダンを虐めながら、ボーイはどこか、ダンに甘えていたんじゃないのかい?」
「…僕が…、…ダンに…、…甘える…?」
ボーイは顔を上げると、ダンを見上げる。するとダンはボーイの横に座り、
「だってお前、オレを甚振りながら、オレの体をベタベタ触ってたもんなぁ!!特に、ココなんかさ!!」
と言いながら、ダンの2本の足の付け根部分に息づく、ダンの男としての象徴であるペニスを指差していた。
「ダッ、ダンんッ!?」
「…ヘヘッ…!!」
照れ臭そうに笑うダン。黒いズボンの中で、ダンのペニスが大きなテントを張っていた。
「…お前に甚振られている時のことを思い出したら、勃っちまったぜ…!!」
「…あ…あ…あ…あ…!!」
顔を真っ赤にし、呆然とダンを見つめるボーイ。
「ボーイ。これはね、アタシがアンタ達にかけた魔法さ!!」
「…魔法…?」
「そう。アンタとダンがずっと仲良くいられますように、って言うね!!」
「だからさ、ボーイ」
その時、ダンはボーイの手を握り、ゆっくりと立たせた。
「…この間も言ったけど、お前のことはオレがちゃんと守る!!お前を守れるように、オレはもっと強くなるッ!!…その代わり…!!」
ニヤニヤと笑うダン。
「その代わり、オレをお前の奴隷にしてくれ!!お前の手で甚振られて、お前の手でイカされたいんだ!!」
「…何だよ、…それ…!!」
口元がついつい綻ぶ。
「…意味、…分かんないよ…!!」
そう言った時、ボーイはダンに思い切り抱き付いていた。
「そのうち、分かるようになるさ!!」
「え?」
目をキラキラと輝かせ、悪戯っぽく笑うダン。
「だって、お前はまだまだお子ちゃまだもんなあッ!!しょうがねえよなぁッ、オレが守ってやんなきゃなあッ!!」
「プッ!!」
その言葉に、バンドーラが噴き出す。
「…ダッ、…ダンんんんんッッッッ!!!!」
「ほぉら、また怒ったあッ!!よぉっし!!これで今夜のお仕置きは確定だああああッッッッ!!!!」
「だッ、誰がお仕置きなんかするかああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!だッ、第一ッ、意味が全く分かんないよオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「アーッハッハッハッハ…!!」
ダンの嬉しそうな声、ボーイの嬉しさ混じりの喚き声、そして、バンドーラの皺枯れた笑い声がいつまでも響き渡った。
おばあちゃんの悪知恵袋 完