機械の奴隷 第6話

 

「…んく…ッ!!…う…ッ、…ああ…ッ!!

 オーグリーンに超力変身した昌平。床の上に横たわり、その腰がビクビクと痙攣する。

「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!

 そんな昌平の、光沢のある鮮やかな緑色のスーツの2本の足の付け根部分。そこに息づく昌平の男としての象徴であるペニスは今、そのスーツの中で大きく勃起し、クッキリとその形を浮かび上がらせていた。

「…プッ…!」

 昌平の股の間でその姿を見下ろしていた清史郎が突然、吹き出し、笑い始めた。

「…ダッセェ…!…昌平さん、…オレみたいなガキに電気アンマされて感じちゃってたの?」

「…る、…るっせぇ…ッ!!

 顔を真っ赤にし、目尻に涙を溜めている昌平が息も絶え絶えに言う。

「…しょ、…しょうがないだろう…ッ!?…バラノイアとの戦いばっかりで、…ここを慰めている暇なんて全くと言っていいほどなかったんだ…!」

 すると清史郎はフフッと笑うと、

「じゃあ、オレが慰めてやるよ」

 と言い、昌平の体の上に伸し掛かって来た。

「…ちょッ、ちょっと待てッ!!

 その時、昌平は顔を真っ赤にして言った。目の前には、ニヤニヤと笑っている清史郎の顔がある。

「…オッ、オレがお前にレクチャーしてやるんじゃなかったのか…!?

 視線が忙しなくきょときょとと動く。すると清史郎は、

「そうだよ?でも、オレも中学3年生なんだぜ?中学3年生って言やあ、そのくらいの知識は持ってるよ!でも、実際にはやったことがないから、だから昌平さんに教えてもらおうと言ったんじゃないか!」

 と言った。そして、

「まずぅ、キスって確か、こんな感じだったかなぁ?」

 と言った途端、その小さな顔が素早く動いた。そして次の瞬間、昌平は唇に温かいものを感じていた。

「…ッッッッ!!??

 昌平の目がカッと見開かれる。

(…ウソ…だろ…!?

 みるみるうちに昌平の目に涙が溜まり始めた。

(…オ、…オレのファーストキス…)

 長い間、国際空軍(U.A.O.H.)の特別チームであるオーレンジャーに配属されてから、恋愛関係など皆無だった。そもそも、子供の頃から女性と付き合った経験すら、覚えていないほどないに等しかった。

 その時だった。

「…んん…ッ!?

 はっと我に返った時、昌平の口の中でヌメヌメと蠢いているものがあった。

「…ん…ッ!!…んんんん…ッッッッ!!!!

 自分の体の上に伸し掛かっている清史郎を両手で抱き締めるようにし、何とか引き剥がそうとする。だが、今の昌平は生身の姿ではない。そもそも、子供の清史郎と大人の自分。部活動もしていないであろう清史郎とボクシングの経験がある自分。体力に差があるのは歴然だ。

 いや、それだけではない。生身の、受身の取り方も知らないであろう中学生と、オーグリーンに超力変身し、相当のパワーを誇る昌平。ここで清史郎を振り解くと言うことは、清史郎を投げ飛ばすに等しく、大怪我をさせることは言うまでもなかった。

(…どッ、…どうしよう…ッ!!

 その時だった。

「…ねぇ、昌平さん…」

「…あ?…え…?」

 目の前にムスッとした表情の清史郎がいる。

「オレがキスしてるんだからさ、昌平さんもちゃんとキスしてよ!」

「…え?…あ、…あぁ…」

 やや落ち着きを取り戻すと、昌平はぎこちなく微笑んだ。

「スマンスマン。ちょっと、考え事をしてたんだ」

 そして、

「…じゃあ、…キスから教えてやろうかな!」

 と言うと、静かに目を閉じた。

「…フフッ!」

 清史郎の顔が近付いて来る。

 …チュッ!!

 清史郎の柔らかい唇が、昌平の唇に触れた。

「…」

 その時、昌平はうっすらと目を開く。すると、じっと昌平を見つめている清史郎と目が合った。

「…ぶふ…ッ!!

 その途端、昌平は思わず吹き出していた。そして、

「おいおい、清史郎!キスって言うのはな、目を閉じるものなんだぞぉ?」

 と言ってやった。すると清史郎は顔を赤らめて、

「べッ、別に昌平さんの顔を見つめていたっていいだろうッ!?って言うか、昌平さんを見ていたいんだよッ!!

 と言った。

「え〜?オレを見ていたいのぉ?」

 照れたように言うと、清史郎はしゅんとして、

「…ダメ?」

 と聞いて来た。

「ああッ、もうッ!!こいつぅッ!!

 あまりのかわいさに、昌平は思わず清史郎を抱き締めていた。すると清史郎は、

「んなッ、何だよッ!?

 と体を暴れさせる。

「かぅわいいなぁ、清史郎は!」

 ニコニコと言う昌平。そして、

「じゃあ、オレがどんな顔をしてキスをしているのか、その目でちゃんと確かめろよ?」

 と言うと、再び清史郎と唇を合わせた。そして、舌をゆっくりと動かすと、ツンツンと清史郎の唇を突いてみた。

「んッ!!

 その途端、清史郎が体をビクリとさせる。

「しょッ、昌平さんッ!?

 慌てて唇を離し、清史郎はびっくりして昌平に問い掛けた。すると昌平は、

「キスって言うのはな、ただ唇を合わせてチューだけじゃないんだぞぉ?」

 と言った。

「チュッ、チュッ、と唇を合わせるだけのタイプもあるんだけど、お互いの舌を絡め合うキスもあるんだ」

「…お互いの舌を、…絡め合う…?」

 清史郎はじっと昌平を見つめたままだ。

「そ!それをディープキスと言うんだ」

「でッ、でもッ、お互いの舌を絡め合うって言うことは、どっちかの口の中にどっちかの舌が入り込むってことだよな!?

 顔を真っ赤にして大声で言う清史郎。すると昌平はフフンと笑って、

「出来ないのか?」

 と問い掛けた。

「んなッ!?

 その言葉に、清史郎が言葉を詰まらせる。だがすぐに、

「…や、…やってやろうじゃんか…ッ!!

 と言うと、物凄い勢いで昌平の唇に自分の唇を重ねた。と、その時だった。

 ガチンッ!!

 鈍いような、乾いたような音が聞こえたその瞬間、

「痛ってええええッッッッ!!!!

 と、清史郎と昌平が同時に声を上げ、お互いに口元を押さえた。清史郎が勢い良く昌平の唇にキスをしたために、お互いの歯が唇を間にしてぶつかったのだった。

「…おッ、…おいおいッ、清史郎ッ!!…そ、…そこまで勢い良くやらなくたっていいんだよ…ッ!!

「…ごッ、…ごめんッ!!…って言うかッ、昌平さんが意地悪なことを言うからだろうッ!?

 2人のぎゃあぎゃあと喚く声が暫く聞こえていた。

 

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