女王の妖魔術 第11話
「…う…、…ん…」
眩しい光が目に挿し込み、鮫島は顔をしかめた。
「…ここ…、…は…」
眩しい光が差し込むと言っても、自身の声がくぐもって聞こえる。そして、両腕にはバルシャークの光沢のある鮮やかな青色のスーツが纏っていた。
(…そうか…。…オレ、…まだ、バルシャークに変身したままなんだ…。…目の前の光は…、…蛍光灯…?)
そしてすぐに、
「…ッッッッ!!!!」
と、物凄い勢いで体を起こしていた。と次の瞬間、
「…うぐ…ッ!!」
と言い、反射的に体を抱き締めるように両腕を回した。
「…痛…て…え…!!」
全身を激痛が襲う。マジンモンガーから放たれら超高圧電流が、未だに鮫島の体を蝕んでいた。
それよりも。
「…パンサ―…」
自身がブラックマグマの魔の手にやられていた時、豹はバルパンサーに変身したまま、自身のやられている姿をそのまま見つめていた。それだけじゃない。その後、ヘドリアン女王の意思によって操られ、自身に手をかけて来た。
「…くそ…ッ!!」
体中を激痛が襲い、意識が朦朧としていた。そして、鮫島は豹に首を絞められ、文字通り、落とされていたのだった。
「…ここは…、…どこなんだ…?」
ゆっくりと立ち上がり、辺りを見回す。そして、ほぼ1回転するように見回したその時だった。
「お目覚めかな?」
その言葉にビクリとなる。
「…ヘ…ドリ…アン…ッ!!」
「ンハハハハハハハハ…!!」
ヘドリアン女王が目をギラギラと輝かせ、不気味に低い声で笑う。
それよりも、鮫島が目を奪われたもの。
「…」
バルパンサーに変身したままの豹が、ヘドリアンの横に立っていたのだ。相変わらず、豹の形をあしらったマスクを取ったまま、虚ろな表情をして…。
「ここはどこだッ!?パンサーに何をしたあッ!?」
思わず怒鳴る。するとヘドリアンはフンと鼻で笑うと、
「ここは格闘技場じゃ。ブラックマグマの歴代のつわもの達がその力を見せ付ける場じゃ。そして、バルシャークよ。お前の処刑場となるのじゃ!!…この、バルパンサーによって、な!!…アァッハハハハハハハハ!!」
と、相変わらず低い声で笑い声を上げた。
「…パンサーが…、…オレを…、…処刑…だと…!?」
改めてグルリと周りを見回す。太いロープが四方に3本ずつ取り付けられ、それに囲まれているのが分かった。その四隅には大きな支柱が1本ずつ立っている。
「…リング…?」
鮫島は大きく真っ白なリングの上に寝かされていたのだと初めて気付いた。
「…バルパンサーは我がベーダ―妖魔術マンダラの妖魔術によって、我々ブラックマグマの奴隷となったのだ。生け贄にされそうになった女が2人おったであろう?その者達の代わりに、生け贄のエネルギーを捧げたのじゃ」
「…生け贄の…、…エネルギー…?」
その時だった。
「…ッッッッ!!!!」
鮫島の視線が豹の体の1点を捕らえた時、鮫島はその場に凍り付いた。
「…パッ、…パンサー…ッ!?」
バルパンサーの光沢のある鮮やかな黄色のスーツ。その2本の足の付け根部分だけが光沢を失い、真っ白な液体の塊がこびり付いていた。
「…ま…さか…!!…まさか…!!」
「そう。そのまさかじゃ!!」
ニヤニヤと笑うヘドリアン。
「バルパンサーは生け贄のエネルギーを捧げたのじゃ。我々の目の前で、無様な姿を見せながらなぁ…。…アァッハハハハハハハハ…!!」
「止めろオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
顔が火照っている。誰よりもブラックマグマを憎む鮫島が我を忘れてカッとなった瞬間だった。
「行けッ、バルパンサーッ!!そなたの手で、バルシャークの生け贄のエネルギーを捧げるのじゃッ!!」
ヘドリアンが皺枯れた声でそう叫んだ時だった。豹の目がギラリと輝いたかと思うと、
「ウルアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、まるで野獣のように咆えたかと思うと、上空へ飛び上がった。そして、体を丸めてクルクルと回りながら鮫島に突進して来たのだ。
「ローリングッ、パンサアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
鮮やかな黄色の物体が目にも留まらぬ速さで飛び込んで来たその瞬間、
ドガアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う音と共に、
「うぅわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う悲鳴を上げて、鮫島の体が吹き飛んでいた。そして、床の上に倒れた鮫島の上に豹が跨ったかと思うと、
「ウオオオオオオオオンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と咆え、両手を物凄い勢いで振り下ろし始めた。
「パンサーッ、クロオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ドガドガッッッッ!!!!ドガガガガッッッッ!!!!
「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!」
鮫島は悲鳴を上げるしか、為す術がない。
「…やッ、…止め…ろ…オオオオオオオオ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!…パンサアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
反撃したくても、体が激痛で思うように動かない。そもそも相手が豹だ。鮫島自身が弟のように思っている仲間だ。そんな仲間を手にかけることなんて、出来るわけがない。だが、それこそが、鮫島の弱点だった。そんな鮫島の心の内を知ってか、
「どうしたのじゃ、バルシャーク?反撃せぬではないか?」
と、ヘドリアンはニヤニヤと笑いながらその光景を見つめている。
「反撃せねば、お前が死ぬぞ?ンハハハハハハハハ…!!」
「…く…っそ…オオオオオオオオ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
鮫島は何とかしてその場から逃れようと、
「パンサー!!すまんッ!!」
と言い、右足を思い切り振り上げた。
ドガッ!!
「うがッ!?」
突然、後頭部に衝撃を受けて、豹が鮫島の体から転げ落ちた。その隙を狙って、鮫島は素早く体を起こすと、リングのロープに手を掛けた。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
「グオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
その時、豹は目を真っ赤にし、物凄い殺気で鮫島に近付くと鮫島の胸倉を掴んだ。そして、体を屈めると、鮫島の腹部に足をかけ、柔道の巴投げのようにそのまま投げ飛ばしたのだ。
「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
鮫島の体が吹き飛ぶ。そして、ダァン、と言う音と共に体をマットの上に激しく打ち付けた。
「オルアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
豹が更に鮫島に襲い掛かろうとした。
「…ッッッッ!!!!」
咄嗟に後ずさりし、鮫島の両腕がリングのロープに乗ったその瞬間、
ビキビキビキビキビキビキビキビキッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う、前にも聞いたことのある衝撃音と共に、体に再び激しい痛みが襲った。