僕だけのヒーローU 第19話
瞬間的な沈黙が辺りを包み込みました。
「ドモンさん!」
僕の部屋の入口に、タイムイエローにクロノチェンジするドモンさんが呆然と立っていたのです。目を激しくぱちぱちとさせて、僕の部屋の中の様子を窺っています。
「…あ…」
その時、ドモンさんがようやく声を上げました。
「…シ、…シオン…様…。…何を、…なさってらっしゃるんですか?」
「…見て…分からないのか、貴様は…!」
その時、タイムファイヤーにクロノチェンジしている直人さんが、やや呼吸を荒々しくさせながら、相変わらずの口調で言いました。その途端、
「ある程度のことは分かってらあッ!!」
とドモンさんが半ば怒鳴るように言います。
「もうッ、止めろよッ、2人ともッ!!」
その時、タイムレッドにクロノチェンジする竜也さんが声を上げました。
「…そりゃ、…こんな状況をまじまじと見せ付けられたら、…誰だって…、…同じような質問をすると思うよ?」
そうなんです。
今、僕の部屋は僕が作り出した空間制御装置によって大きく歪められ、奥行きの広い空間になっていました。そして、薄暗く照らされた空間の中央にタイムレッドにクロノチェンジした竜也さんと、タイムファイヤーにクロノチェンジした直人さんが上から両腕を吊り下げられ、向かい合わせになっていました。そして、そんなお二人の腰回りには黒く大きなゴム状のものが巻き付けられ、お二人を拘束していました。そして、そんなお二人の足元からは異臭を放つ白く固まった液体がポタポタと零れ落ちていたのです。
「えへへ。そう言うことです、ドモンさん!」
タイムグリーンにクロノチェンジしている僕はそう言いながら、竜也さんと直人さんを拘束している黒いゴム状のものを取り外しました。
「…あぁあぁ…」
「…うっわぁ、…ぐしょぐしょだぁ…!」
直人さんと竜也さんがそれぞれ足元を見やり、苦笑します。お二人の光沢のある鮮やかな赤色のクロノスーツ。その股間部分がぐっしょりと濡れていました。僕が作り出した黒く大きなゴム状の拘束具にはスイッチが付いていて、それを押すことで巻かれている人の腰を強制的に動かし、向き合うようにして拘束されているお二人の股間を擦り合わせます。そして更に、そんなお二人の股間の間に、これまた僕が作り出したエビル・サンダーを入れ、前からも後ろからも振動を与えることによって、今まで感じたことがなかっただろう快感を与えるんです。その実験台に、竜也さんと直人さんがなってくれたと言うわけです。
でも今、僕の部屋の前で呆然と佇んでいるドモンさんには別の理由があるはずです。
「…な、…何で、…直人が、…ここにいるんだ?」
やっぱり、その質問ですか。すると直人さんは、
「俺がここにいちゃいけないのか?」
とわざと意地悪い質問を投げかけます。するとドモンさんは、
「ああ!お前にいて欲しくないねッ!!」
とムキになって怒鳴るように言います。
「お、おい、ド…」
「ちょっとッ、ドモンさんッ!!」
僕の後ろで、竜也さんが口をパクパクさせています。そんな竜也さんが言いかけた言葉を、僕が言い放ったんです。
「ドモンさんも、直人さんも、ケンカはしないで下さい。僕は、みんなが大好きです。ドモンさんも、直人さんも、竜也さんも、僕が尊敬出来る仲間だと思っています。そして、僕を守ってくれるヒーローだとも思っています。だから、せめて僕の前ではケンカをして欲しくないんです…」
すると、竜也さんが背後から僕を抱き締めてくれました。そして、僕の頭を撫でながら、
「大丈夫だよ、シオン。直人もドモンも、本気でお互いを嫌っているわけじゃないから」
と言うと、
「そうだよなッ、ドモンッ!!直人ッ!!」
とお二人を見て言います。
「…やれやれ…」
直人さんが大きく溜め息を吐き、そう言いました。そして、
「敵わないなぁ、シオン様には」
と言い、僕の前に跪くと、
「シオン様。申し訳ございませんでした」
と頭を下げたんです。
「おい、ドモン!お前はどうするんだよ?」
竜也さんは、今度はドモンさんに尋ねました。するとドモンさんは、
「…べッ、…別にッ、直人のこと、…嫌い…、…って言うわけじゃねぇし…ッ!!…強えぇのは、…分かってるしなッ!!」
と顔を赤らめて言いました。
「じゃあ、ドモンさん。中に入って下さいよ!」
僕がそう言うと、ドモンさんは僕の部屋の中へ入って来ました。そして、僕の部屋の扉は静かに閉まりました。
「えへへー!」
何だか嬉しくなって、僕はドモンさんに抱き付きました。
「…う〜ん…」
それでもドモンさんは変な顔をしています。
「…何か、…複雑だなぁ…」
「まぁまぁ。別にいいじゃねぇか!」
竜也さんがニコニコ笑いながら言い、ドモンさんの肩をぽんと叩きました。
「シオンが喜んでくれるのが一番嬉しいだろ?」
「…まぁ…な…」
するとドモンさんは直人さんを見ると、
「おい、直人ッ!!シオン様の前では停戦だからな!!」
と言ったのです。すると直人さんは、
「別に俺はお前と冷戦状態になっているとは思わんが、まぁ、いいだろう」
と言ってフッと笑いました。
「…あんの野郎…ッ、…ほんっとに素直じゃねぇなぁ…ッ!!」
ドモンさんはそう言いながら、拳をブルブルと震わせています。
「じゃあ!」
本当はいつでもケンカをして欲しくはないんですが、まぁ、このお二人の性格上、いがみ合ってしまうんでしょうかね…。そんなことを思いながら、僕はわざと大声を上げました。
「じゃあ、ドモンさん!クロノチェンジして下さいよ!」
僕がそう言うと、ドモンさんはニッコリと微笑み、
「かしこまりました、シオン様ッ!!」
と言ったかと思うと、
「クロノチェンジッ!!」
と叫んだのです。
その途端、ドモンさんの体が眩しく光り、光沢のある鮮やかな黄色のタイムイエローのクロノスーツに身を包んでいました。
「ドモンさん、相変わらず筋肉質ですねぇ…!」
両腕や太腿、腹筋など、常に鍛えているドモンさんの体付きがクッキリと分かります。すると、ドモンさんは顔を赤らめて、
「そんなに見るなよォ!恥ずかしいじゃねぇか!」
と言いました。
「じゃあ!」
僕の心臓がドキドキと早鐘を打っています。そして、僕の下半身も熱くなっているのに気付きました。
「もっと恥ずかしくなって下さい…!」
そう言うと僕は、
「ドモンさん、バンザイをしてもらってもいいですか?」
と言いました。
「…こうですか?」
何も疑わないドモンさん。言われたままにバンザイをしました。その途端、ガチャンッ、と言う金属音が大きな空間に響いたのでした。