ジグザグ青春ロード 第31話(最終話)
それから半年後――。
僕達は武蔵野学園高校を卒業した。この卒業式の前日、僕達はターボレンジャーも卒業したんだ。
レッドターボの炎力、ブラックターボの山形大地、ブルーターボで僕の彼氏の浜洋平、イエローターボの僕・日野俊介、そして、ピンクターボの森川はるな。と言うか、卒業式にも参加出来るか、本当は分からないほど、戦いは厳しいものになっていたんだ。
夏を過ぎた頃から、僕達ターボレンジャーと暴魔百族との戦いは激しさを増して行った。そこへ更に、流れ暴魔ヤミマルこと流星光が僕達のクラスへ転校して来た。そして、同じクラスメイトだった月影小夜子さんが流れ暴魔の末裔だったことが分かり、小夜子さんは流れ暴魔キリカに変身してしまい、僕達は暴魔百族と流れ暴魔を相手に物凄い苦戦を強いられた。まさに三つ巴とはこのことで。
そして、最後の戦い。ネオラゴーンと最後の戦いをすべく、地球に迫り来る暴魔城の中で、僕達は絶望を感じていた。このまま暴魔城が地球にぶつかったら、地球は吹っ飛んでしまう。それを止めたいのに、物凄いパワーを持つネオラゴーンの前では手も足も出なかった。それを救ったのがヤミマルだった。僕達は暴魔城を放り出され、ヤミマルは暴魔城と運命を共にしようとしていた。
実はこの時、キリカは戦いを止めていたんだ。もともと流れ暴魔と人間の混血だったキリカは、力の説得によって戦いの愚かさを知り、僕達と心が通じ合うようになった。でもそれは、ヤミマルを孤独に陥らせてしまった。自分は孤独で、誰からも愛されていない、そう言って自暴自棄になったヤミマル。そして、暴魔城と一緒に果てようとした時。
「月影さんを一人にする気かぁッ!!!!」
力の叫び声がヤミマルの暴走を止め、更にはキリカの指から放たれた運命の赤い糸がヤミマルを暴魔城から救い出した。
一気に形勢逆転。僕達はスーパーターボビルダーのスーパーターボビルダービームで、迫り来る暴魔城を見事に粉砕したのだった。
「愛だよね〜、愛!」
卒業を前に、僕はそんなことを呟いてみた。
「キリカのヤミマルへの愛。ヤミマルのキリカへの愛。それに、力のみんなへの愛…」
愛の力って、本当に凄いと思う。どんな不可能なことも可能に変えてしまうのだから。
それは、僕と洋平の愛にも効力を発揮した。
もともと成績も同じくらいだった僕と洋平。大学も同じになり、学部も同じ。だから朝から晩まで顔を突き合わせることになった。
「バイトも同じところにしよっと!」
洋平が悪戯っぽくニヤッと笑ったのを今でも覚えてる。でも、不思議と嫌な思いはしなかった。だって、ずっと一緒にいられることが物凄く嬉しいことだったから。
大学2年生になった時、僕は家を出て大学の近くにアパートを借りることにした。となれば、当然、洋平も転がり込むようになり、気が付いた時には、殆ど同棲していた。
そして、就職先まで同じところになった。
大学を卒業して暫くが経った。
「おーい、俊介ぇッ!!行くぞぉッ!!」
バタバタと準備をしている僕を、玄関先で洋平が呼んだ。
「…ちょッ、…ちょっと…ッ、…待って…ッ!!」
首もとをもぞもぞとする僕。
実は僕、今、ネクタイを絞めようと悪戦苦闘していたんだ。就職活動でネクタイを絞めてはいたんだけど、どうも苦手と言うか…。
「…ったくぅ、…しょーがねぇなー…!!」
洋平が苦笑しながら僕のもとへやって来る。そんな洋平の服装は上から下まで黒い礼服。そして、白いネクタイを絞めている。
「貸してみ!」
僕の目の前で洋平が僕の首元のネクタイを絞めて行く。僕も上から下まで黒い礼服。そして、銀色のネクタイ。
「…ほい、…完了っと!」
洋平がニッコリと微笑む。
「…あ…」
洋平の顔に思わず見惚れていた。すると洋平は、
「あれ?またオレに見惚れてた?」
と悪戯っぽく笑う。
「…うん…」
僕は顔を赤らめ、思わずそう言う。すると、
チュッ!
と言う音がして、僕の唇は洋平の唇に塞がれていた。
「…今夜、また、たっぷり愛し合おうな!」
洋平がそう言うと、僕はコクンと頷いた。
実は、今日は力とはるなの結婚式なんだ。
「ええええッッッッ!!??」
招待状が届いた時、僕は大声で叫んでいた。
「ああああ、あいつら、付き合ってたのッ!?いいいい、いつの間にッ!?」
その声を聞き付けた洋平がのほほんと、
「何だ、俊介、知らなかったのか?」
と言って来た。
僕と洋平が同じ大学。力と大地、はるなが同じ大学。大学は違えど、僕達は暇さえあれば集まっていた。それだけ絆が大きかったと言うか、休みの日は殆ど顔を合わせていたっけな。でも、力とはるなはそんな素振り、全く見せなかったのに…!
「あいつら、オレ達がターボレンジャーだった時から付き合ってたぜ?」
「ウソオオオオッッッッ!!!!????」
僕には初耳。僕は床にゴロンとひっくり返った。
「因みに、愛のキューピッドは大地みたいだけどな!」
そう言いながら洋平は、弓矢を放つ真似をしてみせた。
「…ね、…ねぇ、…洋平ぇ…!!」
泣きそうな顔で洋平を見ると、洋平は苦笑して、
「その顔だと、自分は全く気付いてませんでしたぁ、ってか?」
と言った。その言葉に僕は大きく首を縦に何度も振った。すると、洋平はニヤリと笑って、
「オレは気付いてたぜ?…まぁ、俊介君はオレにホの字だったしな!…愛は盲目なり、Love is
blind.ってやつか?」
と言った。
「んなッ!?」
僕は言葉に詰まった。確かに、僕は洋平一筋だった。と言うか、周りのことまで気にしている余裕がなかった。
「当然、参加、だよな?」
洋平がそう言うと、
「あ、当たり前だろッ!!」
と言うと、僕は招待状の「出席」のところに大きくマルを書いた。
チャペル式の結婚式。
上から下まで白いタキシードの力。そして、純白のウエディングドレスに身を包んでいるはるな。
「…うっわぁ〜…」
それを見て、僕は思わず顔をしかめた。
「フッ!」
僕の右横で洋平が吹き出す。
「力のヤツ、めっちゃくちゃ緊張してんじゃねぇの?動きが物凄くぎこちないんですけど…!」
そうなんだ。力の体に力が入っているのが分かる。動きがまるでロボットみたいにカクカクしてるんだ。
「…でも、幸せそうだよね?」
時折、照れ笑いを浮かべる力。はるなは終始、微笑み続けている。
「あれは将来、力がはるなの尻に敷かれるタイプだな!」
洋平はそう言って何度も頷いた。
「…ねぇ、…洋平…」
僕は洋平を呼んだ。その時、洋平が僕の右手をギュッと握ったのが分かった。びっくりして見上げると、そこには、あの、僕にだけしか見せない優しい微笑みを浮かべている洋平の顔があった。
「…大丈夫だ…!」
まるで僕の心を見透かしているように、洋平が言った。
「…オレ達は、…永遠に一緒だ。…死ぬまで、…いや、生まれ変わってもな…!」
「…うん…!」
僕の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。その涙をごまかすように、僕は洋平の左手をギュッと握り返したのだった。
ジグザグ青春ロード 完