新帝国の奴隷 第4話
(…オレは、…悪い夢を見ているのか…?)
目の前にいるプリンスが、ドクターマンが作り出したメカ人間ではなく、自分を慕ってくれ、ついさっきまで一緒にいた蔭山秀一が新帝国ギアに拉致され、洗脳された姿だと言われた。嘘だと思い、超電子スコープで正体を見破ろうとしたが、そこに映ったのは助けを求める秀一の姿そのものだった。しかも、秀一は自分を特別な感情で慕っていたことを告げられた。
一度にいろいろなことが起こりすぎて、グリーンツー・高杉真吾は頭が混乱していた。
「…そ、…そんな…。…嘘だ…ッ!!」
光沢のある鮮やかな緑と白のバイオスーツに包まれた体をブルブルと震わせ、両方の拳を固く握り締めている。
「…そんなこと、あるわけないッ!!」
頭を何度も左右に振る。これが悪夢ならば、一刻も早く目覚めて欲しかった。と、その時だった。
「おい、グリーンツー・高杉真吾ッ!」
目の前に立っていたプリンスが真吾を呼んだ。
(!?)
マスクの中の真吾はギョッとした表情でプリンスを見つめた。プリンスはニヤニヤとしながら、真吾を上から下から舐めるように見ていたのである。しかも、手にしているステッキを淫猥な真っ赤な舌で舐めながら。
「…お前、…そそられる体つきをしているな…。…食べたくなるよ…!」
「んなッ!?」
背筋にゾクゾクと冷や汗が流れる。
「…へ、…変なこと言うなッ!!気色悪いッ!!」
ブルブルと震える体で、精一杯の強がりを吐く真吾。しかし、そんな真吾をプリンスはフンと一笑に付した。
「確か、バイオマンの男3人の中では体格が一番ガッシリしていたよなぁ。その胸板、腕の肉付き、太もも…。噛み付きたくなるよ…!!」
「止めろぉッ!!」
真吾は右腕を振り上げた。しかし、それ以上は動くことは出来なかった。
「…出来ない…。…オレには、…戦えない…ッ!!」
「アハハハッ!!」
プリンスが笑い声を上げる。
「どうした、高杉?お前が攻撃して来ないのなら、こっちから行くぞぉッ!!」
そう言うとプリンスは再びステッキを振り上げた。
「食らえッ!!」
そのステッキの先端から高圧の電流が発射された。
「うぐわああああッッッッ!!!!」
はっと気付いた時には既に遅く、真吾はその電流に体を絡め取られていた。
「…ああッ!!…ああああッッッッ!!!!」
超高圧電流が真吾の体を蝕み、体中に激痛が走り、体を抱えるようにして地面をゴロゴロと転がる。
「少しは抵抗してくれた方が、甚振り甲斐があるんだけどなぁ…!」
プリンスがやや不満気な顔で真吾を見下ろしている。
「…うく…ッ!!」
痺れからブルブルと震える手で、真吾はプリンスの足を掴んだ。
「…も、…もう…!!」
時折、ガクリと体から力が抜けて倒れそうになりながら、真吾はプリンスの体を支えにして立ち上がる。
「…なッ、何を…ッ!?」
プリンスがやや驚いた表情をして真吾を見つめる。すると真吾は、ようやく立ち上がったかと思うと両腕をプリンスの背中へ回し、しっかりと抱き締めたのである。
「…もう、…止めてくれ…ッ!!…秀一君ッ!!」
真吾の腕に力が篭る。と、その時だった。
ドスッ!
鈍い音がした。
「…あ…、…あ…あぁ…!!」
真吾の下半身に鈍い痛みが走り、息が詰まった。
真吾の下半身、2本の足の中心部分が盛り上がっている。光沢のある鮮やかな緑色のスーツに黒い革のズボンが減り込んでいた。プリンスが、真吾の股間に膝蹴りを入れたのである。
「…秀…一…君…!!」
真吾はプリンスの顔を見る。その目は明らかに真吾を憎悪の眼差しで睨み付けていた。
「…触るな、汚らわしいッ!!」
プリンスが真吾の体を突き飛ばす。真吾がよろめく。その瞬間、プリンスは右足を振り上げ、真吾を弾き飛ばしたのである。
「うわああああッッッッ!!!!」
真吾の体が宙を舞い、遥か後方の壁に激突して崩れ落ちた。
「…う…、…あぁ…!!」
真吾の意識が朦朧とし始める。下腹部からの鈍痛と、プリンスに蹴られた顔面、電撃による全身の痺れ。そして、何よりも。
ドクターマンに洗脳された、秀一のプリンスとしての姿。その全てが今の真吾を蝕んでいた。
「サイゴーンッ!!」
その時だった。プリンスがサイゴーンを呼んだのである。
「はッ、ははッ!!」
事の成り行きを見守っていたサイゴーンがふと我に返り、慌てて声を上げた。
「グリーンツーの動きを封じろ!こいつを徹底的に痛め付ける!」
プリンスがゆっくりと真吾の方へ向かって歩いて来る。
「…う…、…あぁ…!!」
真吾はよろよろと立ち上がった。マスクの中の瞳は恐怖で滲んでいた。
「サイゴーン、不動念力ッ!!」
サイゴーンが右手をグンと突き出したその瞬間だった。
「…うぐッ!?。…あ、…ああ…ッ!!」
真吾の体がグインと硬直し、両腕は肩の高さに、足は大きく開かれ、大の字になってその場に直立したのである。
「…かッ、…体がッ!!…動かない…ッ!!」
サイゴーンの超能力によって動きを封じられている。何とかして、その呪縛を解こうとするのだが、それは無駄に終わった。
「…覚悟しろ、グリーンツーッ!!」
プリンスが目をギラギラと輝かせ、真吾のもとへ歩み寄った。次の瞬間、プリンスは、まるで真吾をサンドバッグにするかのように、容赦ないパンチやキックを加えて来たのである。
ドガッ!!ドガガッ!!バキッ!!バキバキッ!!
「ああッ!!ああッ!!あああッッッ!!!!あああッッッ!!!!あああああッッッッッ!!!!」
体の至るところを殴られ、蹴られ、真吾が悲鳴を上げる。
「とどめだぁッ!!!!」
プリンスが大きく足を振り上げた。
ドゴォォォッッッ!!!!
鈍い音がし、プリンスの右足は、真吾の大きく開かれた両足の間に減り込んでいたのである。
「…あ…、…が…!!」
真吾は声を上げることすら出来ないでいた。その時、サイゴーンが呪縛を解いた。
「…う…!」
真吾はゆっくりと前方へ崩れて行き、ドサッと言う音と共に地面へ倒れ伏した。
「コイツをオレの部屋へ連れて行け!」
プリンスがサイゴーンに向かって言う。
「コイツは、オレの慰み物にする!!」