新帝国の奴隷 第8話
「…う…ん…!」
ぼんやりと視界が開けて行く。薄暗い天井、何もない空間。格子状になった柵だけがあり、どこからか隙間風が吹いて来て、ひんやりとしている。
(…ここは、…どこだ…?)
真吾はゆっくりと起き上がった。
「…オレ、…どうしたんだっけ…?」
一言呟くと、立ち上がろうとしたその時だった。
「うぐッ!?」
真吾は、激痛に顔を歪ませた。
「…ぐ…あ…あ…!!」
自然に右手が股間へと伸びて行く。
「…何で、…こんなところに、…痛みが…!?」
その時、真吾の頭の中では記憶が一気にフラッシュバックした。
「…あ…あ…!!」
顔を真っ青にし、冷や汗を垂らす。
「…そう…だった…!!」
くりくりとした目がカッと見開かれ、忙しなく動く。
「…オレは!!…オレは…ッ!!」
グリーンツーに変身し、プリンスと、サイゴーン、メッツラーと戦っていたのだ。そのプリンスは、自分を慕い、一緒に出かけていた蔭山秀一が拉致され、洗脳された姿だった。そんな秀一に真吾は手出しも出来ず、ただ、秀一のされるがままになっていた。そして、秀一は真吾のペニスを弄り、勃起させ、最後にはそこへ強烈な電撃を浴びせたのだ。
「…うああああ…ッ!!」
顔が真っ赤になる。思いだしたくもない記憶が蘇る。
「…オレはッ!!…秀一君の目の前でぇ…ッ!!」
あの時。
プリンスが放った電撃が股間に直撃し、その痺れの中でペニスが自ら意思を持ったかのように勃起し、瞬時に射精して果てた。しかも、大量に。
「…うああッ!?」
その時だった。
「…どう…して…!?」
真吾の股間。白いジーンズの中でそれは大きく勃起し、窮屈そうにジーンズを持ち上げていた。
「(…オレは、…プリンスの電撃を浴びせられて、…感じていたのか?)…そんなバカなッ!!」
ブンブンと大きく首を振る。
「…秀一君に、…いいようにされたって言うのにッ!!…感じてなんか、…いないッ!!」
だが、考えれば考えるほど、股間はドクンドクンと脈を打つ。
「…はぁ…、…はぁ…!!」
真吾の息が次第に荒くなる。そして、右手はいつしか、股間のそれをそっと撫でていた。と、その時だった。
「目が覚めたようだね、真吾さん!」
突然、格子状の柵の向こうから声が聞こえた。
「…しゅ、…秀一君ッ!!」
思わず身構える真吾。するとプリンスはムッとした表情をし、
「オレはプリンスだッ!!何度言ったら分かるんだッ!!」
とあの電撃を飛ばして来た。
「ああああッッッッ!!!!」
その電撃を生身の体で浴び、真吾がゴロゴロとのた打ち回る。
「ああッ!!あああッッッ!!!!」
激痛に顔を歪ませ、脂汗を滲ませる真吾。
「フフフ…!!」
プリンスがニヤニヤと笑いながら、ゆっくりとその部屋に入って来た。
「…プリンス…ッ!!」
真吾がフラフラと立ち上がる。するとプリンスは、ニヤニヤと笑いながら真吾のもとへ歩み寄った。
「ぐっすり眠っていたようだな。…まぁ、当たり前か。あれだけの電撃を浴びて、あれだけたくさん射精していればな!」
「んなッ!?」
真吾の顔が瞬時に真っ赤になる。
「アハハハ…!!恥ずかしがることないじゃないか!気持ち良かったんだろ、真吾さん?」
するとプリンスは真吾に抱き付いた。
「…な…!!」
プリンスは、うっとりとした表情で真吾を見つめている。
「…もっと気持ちいいこと、してやろうか?」
「やッ、止めろぉぉぉッッッ!!!!」
真吾はそう言うと、プリンスをドンと突き飛ばした。その瞬間、バランスを失ったプリンスは背後へ後退りし、真吾を睨み付けた。
「…おんのれぇッ!!…高杉ィッ!!!!」
プリンスが怒りにブルブルと震える。
「もう止めるんだッ、プリンスッ!!お前は、プリンスなんかじゃない!!本当は蔭山秀一って言う名前でッ、もっと心優しい子のはずなんだッ!!」
「黙れええええッッッッ!!!!」
次の瞬間、プリンスが物凄い勢いで真吾に掴み掛かり、パンチの連打を浴びせて来た。
「うおッ!!ぐああッ!!ああああッッッッ!!!!」
顔面、腹部など、至るところにパンチを受け、そのたびに真吾が叫び声を上げる。それでも真吾は、その攻撃に反撃をしようとしない。
「ぐああああッッッッ!!!!」
最後に強烈なキックが真吾の体に炸裂し、真吾は横へ思い切り吹き飛んだ。そして、ドサッと言う音を立てて地面に倒れ込んだ。
「…う、…ぐお…ッ!!」
真吾がブルブルと震えながら、それでも立ち上がる。
「…はぁ…、…はぁ…!!」
プリンスが荒い息をして立っている。そして、
「サイゴーンッ!!」
とサイゴーンを呼んだ。
「こちらに!」
スゥッと姿を現すサイゴーン。
「こいつを徹底的に痛め付けろ!!」
プリンスはそう言うと、格子状の柵を出て、荒々しくそのドアを閉めた。
「かしこまりましたッ!!」
銀色のロボット然のジューノイド・サイゴーンが、ニヤニヤと余裕の笑みで真吾を見つめる。
「お前の遊び相手となってやろう!」
「…よぉしッ!!」
真吾の体に闘志が漲り始める。
「行くぞぉっ!!」
真吾は左手の拳を握り締め、右手は開いた状態で頭上で合わせた。そして、
「グリーンツーッ!!」
と叫び、その両手を胸の前へ下ろしたのである。
その瞬間、真吾の体が輝き、光沢のある鮮やかな緑と白のスーツを身に纏った、グリーンツーへと変身していたのであった。