新帝国の奴隷 第16話

 

「…は…、…は…!」

 グリーンツーの、光沢のある鮮やかな緑のバイオスーツ。その胸が小刻みに上下していた。同時に、硬い素材で出来ているマスクが上下左右に動く。

「…う…、…あぁ…!」

 体が動かない。下半身にじんじんとした痺れが残っている。

(…オレは、…一体、…どうしたって言うんだ…?)

 ぼんやりとする意識の中、グリーンツーに変身している真吾はゆっくりと考えてみる。

 ギアに捕らわれ、サイゴーンと、プリンスに洗脳された蔭山秀一に良いように弄ばれ、散々痛めつけられた挙句、男としての象徴であるペニスをよりによって秀一に何度も弄られ、そのたびに射精し、気絶した。

 そして目が覚めてみると、グリーンツーの変身は解け、今度はどこかの部屋へ移されていた。ギアの秘密基地にしては似つかわしくないほど、ごくありふれた内装の部屋。その中には真吾だけではなく、普段着姿の秀一がいた。赤のジャンパーに、白のジーンズ。そして、白のスニーカー。洗脳が解けたのかと聞いてみると、本人は洗脳なんかされていない、ずっとここにいたと言った。

 だが、秀一はまるで恋する女の子のような瞳で真吾を見つめ、ここから逃げ出そうとする真吾に寄りかかり、2人で床の上へ倒れた。そして真吾にキスをして、グリーンツーに変身してくれとせがんで来た。

 その時、真吾にも異変が起こっていた。体が、心が、秀一を拒否しなかった。そして、グリーンツーにもう一度変身し、秀一にはプリンスと同じように自身のペニスを愛撫され、勃起したところを電気アンマをされ、再び射精して果てたのだった。

(…気持ち、…良かった…のか…?)

 床の上に大の字に寝転がっている真吾のバイオスーツ。鮮やかな緑と白の光沢が失われている部分があった。その部分には濃白色の異臭を放つ物体が塊となって落ち、液体質なものがスーツの光沢を失わせていた。真吾が射精した時、スーツと言う障壁を飛び越えて飛び出して来た真吾の精液であった。

「気持ち良かった、真吾さん?」

 不意に声が聞こえ、真吾は思わずその方向を見やる。

「…秀…一…君…?」

 マスクの中で、真吾が力なく微笑む。秀一がニコニコと微笑んでいる。

「…あぁ…。…気持ち良かった…よ…?」

 その時、真吾は秀一に違和感を感じた。

(…秀一君の、…靴って…?)

 確か、白のスニーカーだった記憶がある。だが、今は銀色のブーツのようなものを履いている。それだけじゃない。

「気持ち良かった、真吾さん?」

 同じ質問をまたして来た。

「…あぁ…。…だから、…気持ち良かった…って…」

 その時、秀一の姿が少しずつ変わり始めていたのを、真吾は見逃さなかった。

 秀一の白のジーンズ。それが黒くなっていた。

 秀一の赤のジャンパー。それも黒くなっていた。

「…キモチヨカッタ、…真吾サン?」

 次の瞬間、真吾は言葉を失っていた。

 秀一の声が機械の合成音のようなトーンに変わり、ニコニコとしていた秀一の顔が、見覚えのある、冷たい機械の顔に変わっていたからだ。

「…ううッ!?…うわあああああッッッッッ!!!!

 慌てて飛び上がると、尻で後退りした。

「…メッ、…メカクローンッ!?

 目の前にはメカクローンが1体、お決まりのように両手を振っていた。

「アーッハッハッハッハ…!!

 と突然、甲高い笑い声が聞こえたかと思うと同時に、空間がぐにゃりと歪んだように思えた。

「なッ、何だッ!?

 何度も射精させられたせいで眩暈を覚えたのかと思った。だがそれも束の間、ごくありふれた内装の部屋がみるみるうちに消えて行き、代わりに出て来たのは、見慣れた鉄格子のある部屋だった。

「随分、お楽しみのようだったね、真吾さん?」

 鉄格子の向こうでは、プリンス姿の秀一がニヤニヤと笑っていた。

「…プリンス…!?

 マスクの中なので表情までは読み取られていないはず。だが、呆然と立ち尽くす真吾を見て、秀一が大きく溜め息を吐いた。

「やれやれ。あまりの気持ち良さに現実まで忘れてしまったのかい?」

 そう言われて、真吾は改めて周りを見回す。そして、秀一の横にいるジューノイド五獣士の一人、メッツラーを見た瞬間、

「…ま、…まさ…か…!?

 と声を上げ、ブルブルと体を震わせ始めた。すると秀一はフンと鼻で笑い、

「当たりィ!」

 と言った。

「あの夢のような空間は、メッツラーが見せた擬似空間さ。真吾さんをすっかり油断させ、夢のような時間を与えてあげたってわけだよ。…それにしても…」

 秀一はそう言うとチラリとメカクローンを見やり、

「メカクローンに大事なところを弄られて射精してしまうなんてね!」

 と不気味に笑った。

「真吾さんって、本当に変態だったんだね!」

「うわああああッッッッ!!!!

 顔が物凄く熱い。次の瞬間、真吾と体を重ねていたメカクローンは粉々に砕け散っていた。

「…はぁ…、…はぁ…!!

 肩で大きく息をする真吾。

「フハハハハハ…!!…ご満足いただけたかな、高杉?」

 真っ赤な一つ目。右手にはレイピア、左手はペンチのようなものを持つジューノイド・メッツラーが真吾をバカにするかのように声を上げる。

「…メッ…ツラー…ッ!!

 真吾の右拳が握られて行く。そのたびに、真っ白なグローブがギリギリと音を立てて行く。

「…貴様ぁ…!…許さんッ!!

 真吾がぐっと腰を落とし、臨戦態勢に入る。

「やれやれ」

 不意に秀一が声を上げた。

「…あのさぁ、真吾さん。…いくらカッコいいポーズを取っても、それじゃ、全くカッコよくないよ?」

「え?」

 秀一に言われ、改めて自分の状況を確認する真吾。そして、

「ううッ!?うわああああッッッッ!!!!

 とまた大声を上げた。そして、マスクを両手で抱えるようにして蹲った。

 …グチュッ!!

 その途端、真吾の股間は淫猥な音を立てた。

「フハハハハハ…!!…こいつは楽しませてくれそうだ!」

 メッツラーが何度も頷く。

「…クッ!!

 真吾はそれでもヨロヨロと立ち上がり、ファイティングポーズを取る。股間部分はぐっしょりと濡れており、異臭を放っている。スーツの中で、自身が放った精液が足を伝って落ちて来ているような気がして、下半身が気持ち悪い。

「おい、メッツラー!」

 その時、秀一が声を上げた。メッツラーが秀一の方を振り向く。

「真吾さんのバイオスーツをきれいに掃除してやれよ!」

 そう言って秀一はニヤリとする。

「…かしこまりました!」

 秀一の意図を理解したのか、メッツラーの目がギラリと光った。

 

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