新帝国の奴隷 第17話

 

「…ククク…ッ!!

 一つ目のジューノイド・メッツラーが低く笑い、目の前で臨戦態勢を取っているグリーンツー・高杉真吾を嘲笑う。

「どうした、高杉?かかって来ないのか?」

 右手のレイピア、左手のペンチを何度も打ち付ける。そのたびに、金属独特の乾いた音が響く。

「…う、…うぅ…ッ!!

 グリーンツーに変身している真吾。その瞳は怒りに満ち、ぎりぎりと歯軋りをした。しかし、どうしても気になる部分がある。

 真吾の下半身。がっしりとした、筋肉質な2本の足の付け根。

 真吾の男子としての象徴であるペニスが収まっている部分がぐっしょりと濡れていた。

 …グチュッ…!

 真吾が足を動かすたびに、そこから淫猥な音が響き、更に強烈な異臭が周りに立ち込める。更に、ひんやりとした感覚が真吾の集中力を奪い、がっしりとした足がブルブルと震えた。

「…フフッ!」

 事の成り行きを見守っているプリンスこと蔭山秀一が、これまた低く笑った。

「真吾さん。ひょっとして戦えないんじゃないの?」

「な、何を…ッ!?

 秀一の声に我に返ったのか、真吾が声を上げる。

「真吾さんがあんなに変態だったとはね。メカクローンといやらしいことをして、いやらしい液体を出しちゃうんだもんね!」

「…だッ、黙れッ!!

 マスクの中が熱い。恥ずかしさと悔しさで顔が火照っているのだろう。心なしか、目も潤んでいるように思える。

「それとも、真吾さん。僕に気があるんじゃないの?」

「んなッ!?

 ドキッとした。

「…ばッ、馬鹿なこと言うなッ!!…オ、オレは男で、…秀一君も男の子だろうッ!?

 だが、真吾の心臓はドキドキと相変わらず早鐘を打ち続けている。

(…オレは、…オレは…?)

 必死で否定したい考えが頭の中をグルグルと駆け巡る。

 確かに、秀一は新帝国ギアの支配者であるドクターマンの実の息子だ。父親が狂気に満ちた科学者で、この世をメカによって支配しようと企んでいる、そんな大きな運命を背負っている。

(…オレは、…秀一君を…)

 真吾は秀一のことを、ある意味、同情で見ていたはずだった。確かに、レッドワンの郷史朗、ブルースリーの南原竜太と同じように、ただ、守りたいだけの存在のはずだった。

「…ふ〜ん…」

 不意に秀一が声を出した。その瞬間、真吾ははっと我に返る。

「…しゅ、…秀一君…?」

 明らかに不機嫌な、いや、やや悲しげな表情で秀一が真吾を見つめていた。

「…真吾さん…、…僕のこと、…愛してくれてるんじゃなかったんだね?」

「…な…!?

 その時だった。秀一が手に持っていたスティックを思い切り振り上げた。と同時に、そこから電撃が迸り、それはぼんやりとしていた真吾をしっかりと捕らえたのだ。

「ぐわああああッッッッ!!!!

 体中を電撃に絡め取られ、激痛が真吾を襲う。突然のことに体が硬直し、弾き飛ばされるかのように後ろへひっくり返った。

「がああああッッッッ!!!!うおおおおッッッッ!!!!

 特に、真吾の股間が激しい痛みに襲われる。自身が射精し、ぐっしょりと濡れていたため、そこへ電流が集中的に流れた。

「…うあ…、…あ…あ…!!

 激しい痛みに体を抱えるようにし、ゴロゴロと転がる真吾。鮮やかな緑のバイオスーツが、砂埃で汚れて行く。

「フハハハハ…!!

 その時だった。メッツラーがゆっくりと真吾に近づいて来たかと思うと、左手のペンチで真吾の首をガッシリと掴んだ。

「…ぐ…ッ!?

 激しい痛みにまともに息も出来なかったのに、メッツラーの硬いペンチに首をガッシリと掴まれ、更に息が出来なくなる。

「やれッ、メッツラーッ!!グリーンツーを徹底的に痛め付けろッ!!

 秀一のやや高めの声が響いた。

「ぬううううッッッッ!!!!

 その途端、メッツラーが物凄い力で真吾を持ち上げ始めたのだ。

「…ぐ、…あぁ…ッ!!…あ…が…ッ!!

 ペンチに持ち上げられ、嫌でも立ち上がらされる格好になる。

「こんなにぐっしょりと濡らしおって…!…この、…変態がぁッ!!

 メッツラーがそう叫んだ瞬間、真吾の体がふわりと浮いたような感覚を覚えた。そして、次の瞬間、反対側の壁へ投げ飛ばされたのである。

 ドガッ!

「…ぐふ…ッ!!

 背中を激しく打ち付け、一瞬、息が止まった。と同時に、

 グチュッ!!

 と言う淫猥な音が股間から聞こえた。

「うわッ!!

 そのあまりの冷たさと恥ずかしさに、素っ頓狂な声を上げる真吾。同時に、股間を両手で覆った。

「フハハハハッ!!まだまだぁッ!!

 そう言うと、メッツラーの一つ目がギラリと光った。

「メッツラー・アームストレッチッ!!

 その瞬間、メッツラーの右手が物凄い勢いで伸びて行き、壁際で崩れ込んでいる真吾の首を再び掴んだ。

「うぐッ!?

 今や、真吾は完全に冷静さを失っていた。パニックになっていたと言ってもいいだろう。

「さぁ、こっちへ来るんだッ!!高杉ぃッ!!

 メッツラーの叫び声が、鉄格子の冷たい部屋に響き渡る。そして、伸びていたメッツラーの腕が収縮を始めたのに釣られるかのように、真吾の体がズルズルとメッツラーのもとへ寄せられる。

「…ぐ、…あぁ…ッ!!…あは…ッ!!

 意識が次第に混濁して行く。だが、この状況を何とか振り切ろうと、必死にメッツラーの腕を掴み、引き解こうとするが、その力ですら、今の真吾には残されてはいなかった。

 やがて、真吾はメッツラーの目の前まで引き寄せられた。

「…さて…」

 鉄格子の扉が開けられ、秀一が中へ入って来る。そして、

「この代償は高く付くよ、真吾さん」

 と怒りに満ちた眼差しで真吾に言った。

「…!?

 その瞳を見た瞬間、真吾は恐怖で息を呑んだ。

「…お前を徹底的に辱めてやるよ!」

 

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