新帝国の奴隷U 第2話
「グリーンツーッッッッ!!!!」
光沢のある鮮やかな緑色のスーツが太陽の光に照らされてキラキラと輝く。
「行くぞオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
グリーンツーのスーツに包まれたガッシリとした体型の男が、真っ黒な外見を持つメカクローンに飛び掛かる。
「おりゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そして、その腕力を生かしてメカクローンを投げ飛ばしたり、物凄い勢いで突進して行ってメカクローンを弾き飛ばして行く。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
兄と同じく低い声で、その体躯でメカクローンやジューノイドを圧倒して行ったのだった。
ブウウウウウウウウンンンンンンンン…。
閑静な住宅街を、1台のスポーツカータイプの車が走って行く。運転しているのは若者で、その若者の眉間には深い皺が刻み込まれていた。
「…ったく…。…兄貴のせいで…!!」
その右手には「BIOMAN」と書かれたブレスレット・テクノブレスが填められていた。
2代目グリーンツー・高杉翔吾。初代グリーンツー・高杉真吾の弟で20歳の大学生。大学ではラグビー部に所属し、毎日のように汗を流している。
(…兄貴のやつぅ…ッ!!)
カーレーサー志望だった兄・慎吾はプリンスへと自身を改造した蔭山秀一によって洗脳され、秀一の奴隷へと成り下がっている。その尻拭いが弟である翔吾に回って来た、と言うわけだ。
真吾や翔吾の先祖は昔、バイオ粒子を浴びていた。だから、翔吾もグリーンツーになることが出来たのだ。
だが、それよりも、兄・真吾が新帝国ギアの下僕に成り下がったことにより、翔吾自身の人生が大きく狂ってしまった。もともとラガーマンで、兄・真吾と同じく気は優しく力持ち。将来はラグビーのプロ選手を目指していた。だが、この一件でラグビーを辞めることを余儀なくされ、死と隣り合わせの激しい戦いに身を投じることになったのだった。
「…ククク…!!」
その様子を、秀一はニヤニヤと笑いながら見ていた。
「翔吾さん、随分、荒っぽい性格だね」
「本当なら、オレと同じ、気は優しく力持ち、だったんだけどな…」
ベッドの上に腰掛けていた真吾がぼそっと言った。相変わらずグリーンツーの色褪せたスーツを身に纏い、ぼんやりとしている。
「…多分、オレのせいだろうな…」
その声に秀一は、
「…え?」
と思わず反応していた。
「…真吾さん?」
だが、真吾の目はギラギラと輝き、ニヤニヤと不気味に笑っている。
「…いや、いいさ。別に」
「…え?」
すると、真吾は立ち上がると、ゆっくりと秀一の前まで歩み寄った。そして、その華奢な体を優しく抱き締めると、
「オレは、もうバイオマンなんかじゃない。秀一様をお守りする、秀一様だけのヒーローだからさ!!」
と言った。
「…真吾…、…さん…」
暖かく、力強い腕の中で秀一がウットリとした表情を見せる。
「…真吾さん…」
「何でしょうか、秀一様?」
秀一よりも身長も体躯もある真吾が、あどけない笑みを浮かべる。それは、真吾の八重歯がそうさせているのだった。その時、秀一は顔を赤らめて真吾を見上げていた。
「…ッッッッ!!!!」
その顔に、真吾は息を大きく飲み込んで喉を大きく動かし、ガッシリとした2本の足の付け根部分に息づく、真吾の男としての象徴であるペニスがムクムクと物凄い勢いで勃起し、色褪せたグリーンツーのスーツの中から真っ直ぐに飛び出した。
「…真吾さんのペニス…、…欲しい…」
そう言いながらゆっくりと跪くと、秀一は真吾のそれを優しく包み込む。
「…んく…ッ!!」
その刺激に、真吾はビクリと体を跳ねらせる。
「…あぁ…、…真吾さんのペニス…。…本当に大きい…」
ウットリとした眼差しでそう言うと、秀一は真吾のペニスをゆっくりと口に含んだ。
「…あ…ッ!!」
その甘い刺激に真吾は目を閉じ、顔を天井の方へ向けたのだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
兄・真吾と秀一が耽美な世界を繰り広げていた頃、弟・翔吾はグリーンツーに変身し、一心不乱にメカクローンと戦っていた。
「おいおい、翔吾ッ!!もう少し落ち着けって!!」
自分より年下ではあるが、バイオマンとしては先輩格のブルースリー・南原竜太が翔吾の肩を掴んでそう言った。
「分かってますよッ!!…でもッ!!…でも…ッ!!」
「翔吾ッ!!戦いに私情を挟むなッ!!」
レッドワン・郷史郎までもが翔吾を窘める。
「…う…」
郷に窘められると、何も言えなくなってしまう。
(…きっと、…秀一君も…)
きっとこんな思いだったのかもしれない。レッドワン・郷史郎は厳しいところがある。本人は自覚がないのかもしれないが、まるで保護者のように一切甘やかさず、ダメなものはダメとビシッと言う。それに比べ、兄・真吾はお人好しで、明るく、バイオマンのムードメーカーでもあった。実際、兄・真吾が秀一のことを話す時、翔吾が嫉妬してしまうほどに優しい瞳をしていた。
(…だったら…ッ!!)
兄・真吾がこんなことになってしまったのは、ある意味では郷のせいなのではないかとも思えて来た。
「ああああッッッッ!!!!もうううううッッッッ!!!!」
頭を抱え、思い切り絶叫する翔吾。
「兄貴のッ!!馬鹿野郎オオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「おッ、おいッ、翔吾オオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
背後から南原の悲鳴に近い叫び声が聞こえて来る。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
だが、完全に自身を見失っている翔吾は物凄い勢いで駆け出していた。
「…ククク…!!」
そんな光景を、高いビルの上から秀一と真吾が眺めていた。
「…動き出したな…」
秀一の目がギラリと光る。
「…じゃあ…、…行こうか、真吾さん!!」
「…ああ…」
物凄い勢いで駆け出して行く翔吾を見ながら、真吾はニヤリと笑うと、自身の2本の足の付け根部分の大きな膨らみをゆっくりと揉みしだいた。
「…あ、…あれ?」
気が付いた時、翔吾は一人、閑静な住宅街に迷い込んでいた。
「…やっべ!!」
急いで戻らないと、郷に大目玉を食らうことになる。だが。
「…あれ?」
その時、翔吾は異変に気付いていた。
「…何か、…変だ…」
バイオマンになっていなくても、その街の異変は簡単に分かった。たくさんの住宅が建ち並んでいるのに、一切、生活音がしない。それどころか、キィンと言う空気の流れる音しか聞こえないのだ。
「…まッ、…まさか…ッ!?」
「そうッ!!そのまさかさッ!!」
ギクリとなって思わず振り返る。そして、振り返ったところを見た時、翔吾はその場に凍り付いていた。