新帝国の奴隷U 第11話
「…ん…」
ゆっくりと視界が開けて行く。真っ暗だった中から少しずつ意識が回復して行くような感覚。
「…オレ…は…」
どのくらい眠っていたのだろう。と言うか、ここはどこなのだろう。相変わらず、無機質な部屋。何もなく、ただグレーの壁が一面を覆っている。だが、翔吾の周りは暖かく、真っ白な柔らかな布団に包まれているようだった。そして、柔らかく、ところどころが硬い何かにすっぽりと覆われているような感覚もした。
その時だった。
「よう、翔吾。やっと目ぇ覚ましたか…?」
その声に一気に現実に引き摺り下ろされた。
「…うわ…。…うわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
悪寒が走り、全身に鳥肌が立つ。そして、物凄い勢いで背後へ飛び退いた瞬間、体がふわりと宙を舞ったのを感じ、一気に引力で床の上に叩き落された。
「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ドスンと言う音を立てて後頭部をしたたかに床に打ち付けた。
「…痛…って…ぇ…」
「おいおい、翔吾。大丈夫かよ!?」
ベッドの上では真吾がニヤニヤとしながら横向きに寝転がったまま、翔吾を見下ろしている。その体は色褪せた緑色のスーツを身に纏い、真吾が未だにグリーンツーに変身したままであることを窺わせた。
「…兄…貴…ぃ…ッ!!」
そう言う翔吾もグリーンツーの光沢のある鮮やかな緑色のスーツを身に纏っている。
「かわいかったぜ、翔吾ぉ」
「…え?」
一瞬、きょとんとなる。
「相変わらず、天使のような寝顔で寝てるんだな、翔吾って!!昔、よく一緒に寝たよなぁ。翔吾、いっつもオレにくっついて来てさぁ。オレ、オレの理性を保つのに必死だったんだぜ?今だって一緒に寝ていたらお前がくっついて来てさぁ。オレのここ、こんなになっちまった!!」
そう言った時、真吾は布団を引き剥がす。そこに突き出た真吾の男としての象徴・ペニス。色褪せたグリーンツーのスーツにテントを張るようにし、その先端はぐっしょりと淫猥な液体で濡れていたのだ。
「うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
嫌悪感で悲鳴を上げる翔吾。
「…やッ、…止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!…へッ、…変なこと、言うなアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そして、何とかして立ち上がると、翔吾は真吾を睨み付けた。
「なぁ、翔吾」
「なッ、何だよッ!?」
「ほら、ここに来いよ!!」
そう言って布団をめくると、自身の大きく勃起したペニスの前に出来たスペースをぽんぽんと叩いた。その瞬間、翔吾はカッとなり、
「ふっざけんなああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言うと、真吾に飛び掛かった。
「…ククク…!!」
その時、真吾の目がギラリと光った。そして、
ヒュッ!!
と言う音と共に何かが翔吾に向かって飛んで来たのだ。
「…何…ッ!?」
気付いた時には遅く、翔吾の両腕に毒々しいほどに真っ赤な蔦のようなものが纏わり付いていた。
「…な…ッ、…何だッ、これッ!?」
「アハハハハハハハハ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その笑い声にはっとなる。
「…しゅ…、…い…ち…イイイイッッッッ!!!!」
目の前には秀一ことプリンスがニヤニヤとしながら立っていたのだ。
「相変わらずダサいヤツだな!!」
「何だとオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!?」
その瞬間、
バリバリバリバリッッッッ!!!!
と言う衝撃音と共に、翔吾の体に強烈な電流が流れた。
「ああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
翔吾の体が硬直し、弓になる。
「…フンッ!!」
不機嫌な顔をした秀一。その手には制裁ステッキが握られている。強烈な電流はそこから出たのだった。
「…く…っそ…オオオオオオオオ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
体をやや前のめりにし、懸命に秀一と真吾を睨み付ける翔吾。そんな翔吾に対し、秀一はニヤリと笑うと、
「罠にかかったなァ、翔吾ぉ?」
と言った。
「…何ッ!?」
「ここはお前を更なる地獄に落とすための処刑場なのさ!!まぁ、そもそもお前は意識を失っていたからそれに気付くことはなかったんだがな!!」
「でも、お陰でいい夢を見られたろう?」
真吾もニヤニヤしながら言う。
「オレに添い寝されていた時、お前は無意識に両腕をオレの体に絡ませ、『兄ちゃん。兄ちゃん』って上の空のように言っていたんだぜ?」
「…ウソだ…!!」
翔吾の顔が真っ赤になる。だが、真吾は相変わらずニヤニヤとしながら、
「かわいかったなぁ、翔吾。オレ、もう少しでタガが外れるところだったんだぜ!?」
と言ったのだ。
「止めろオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
さっきから叫びっ放しの翔吾。その顔が真っ赤になり、目は僅かに潤んでいる。
「…兄貴…。…秀一…!!…てめえらッ、ぶっ飛ばしてやらああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その時だった。
ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
鈍い音が聞こえたその瞬間、翔吾の体がビクンと跳ねていた。
「…お…、…ご…!!」
目はカッと見開かれ、体がくの字に折れ曲がる。
「…あ…、…に…き…!?」
翔吾のガッシリとした2本の足の付け根部分が不自然に盛り上がっている。その下には、真吾のガッシリとした右足が減り込んでいた。
「…ぐ…ッ、…うううう…ッッッッ!!!!」
下腹部を襲う鈍い痛み。男にしか分からないその痛みが翔吾を襲っていた。
「…ククク…!!」
そんな翔吾を見てニヤニヤと笑う真吾。
「悪いな、翔吾。グリーンツーに変身したお前に攻撃されたら、オレは大怪我じゃ済まないからな」
「…どう言う…ことだ…!?」
「言った通りさ。オレのこのスーツはただの服に過ぎないんだよ」
そう言った時だった。
「ダメだよ、真吾さぁん」
秀一が目を輝かせてニヤニヤと笑っている。
「そんな説明じゃ、オツムの弱い翔吾には理解出来ないよ」
「んだとオオオオッッッッ!!!?」
「ほら、すぐに怒るんだもん。冷静に物事を判断出来ないくせに、よくバイオマンになんかなれたなぁ」
「そッ、それは俺達家族がバイオ粒子を浴びた子孫だからだろうがッ!!そしてッ、兄貴がだらしないから、お前のもとに堕ちたからッ、オレが二代目グリーンツーにならざるを得なかったんだろうがああああッッッッ!!!!」
それまで溜めて来た感情が一気に爆発したかのように、翔吾は怒鳴り散らした。
「…そうだ…。…兄貴が…、…兄貴がもっとまともだったら…。…オレは…、…オレは…!!」
真吾がグリーンツーとして新帝国ギアと戦う戦士であったのなら。プリンスに変貌を遂げた秀一に心を奪われることさえなかったのなら、今頃、翔吾はプロのラグビー選手として活躍していただろうに…。
「仕方がないだろう?」
その時、真吾がフンと鼻で笑った。
「オレは秀一様に魂を売ったのさ!!バイオマンなんて、オレには関係ないッ!!」
「…兄…、…貴…ィィィィ…ッッッッ!!!!」
握り締めた両拳がギリギリと音を立てる。
「無駄だ、翔吾!!最早、お前に勝ち目はない。諦めるんだな!!」
秀一がそう言った時だった。
ブスッ!!ブスブスッッッッ!!!!
突然、翔吾の両腕に纏わり付いていた毒々しいほどに真っ赤な蔦のようなものから棘が飛び出し、翔吾の腕に突き刺さった。