最高のプレシャス 第18話

 

 それから、また暫くの月日が流れた。

「…よし。OKだ」

 最後に魁に犯されてから、間がかなり空いていた。あの屈辱的なことを思い出すだけでも、暁は頭を悩ませることが多かった。

(…それに…)

 ぐったりと横たわり、意識を朦朧とさせていた時に見た、魁の泣き顔。

「…僕は…。…僕は、…こんなにも兄ちゃんのことが大好きなのに…!!…何で…、…何で兄ちゃんは、…振り向いてくれないんだよ…ッ!?

 願いが叶わない、すぐ近くにいるのに決して受け入れてもらうことの出来ない想い…。

(…オレは…)

 小さい頃から、魁をはじめ、他の兄弟姉妹とも仲良くやって来た。その中で、魁は暁にべったりで、まるで憧れの対象を見るかのように目をキラキラさせていたのを今でも覚えている。それはずっと変わらないはずだった。

(…なのに…)

 暁がサージェスの一員、ボウケンジャーのリーダーであるボウケンレッドであったことが分かった途端、魁が豹変した。暁の、絶対に知られてはならない秘密を知り、それを弱みとし、黙っていてやる代わりに暁に恥辱行為を与えたばかりか、挙句の果てには魁の特殊能力である魔法を使って暁の性感帯の感度を引き上げ、淫猥な液体の放出を堰き止め、限界になったところで大量放出させた。

 

「…ちゃん…。…暁兄ちゃんッ!!

「…あ…」

 ぼんやりと突っ立っている暁に苛立ちを覚えたのか、魁の大きな声が暁を現実に戻した。

「もうッ、どうしたんだよッ、暁兄ちゃあんッ!!

 ぷっと顔を膨らませている魁。

(…こうしていれば、…普通の高校生なんだがな…)

 じっと見下ろす暁に対し、魁は眉をひそめると、

「…な、…何だよ、暁兄ちゃん…?…今日はぼぉっとしてさぁ…」

 と言ったかと思うと、すぐにニヤリとし、

「…もしかしてぇ!この間からかなり間が空いてるから、久しぶりにまたいじめられたくなったとか?」

 と暁をからかうように言った。そして、暁のがっしりとした2本の足の付け根部分に息づくふくよかな膨らみに手を伸ばしたその時だった。

 ガシッ!

 不意に暁が動いたかと思うと、魁の手首をしっかりと掴み、じっと見下ろしていた。

「…暁…兄…ちゃん…?」

 今までに見たことがないのではないかと言うほど、厳しい目付きで魁をじっと見下ろしている暁。

「…な、…何だよ…!?

 魁のくりくりとした目に、怯えが見え隠れしている。

「…」

 そんな魁を、暁はグイッと引っ張った。

「…あ…」

 その反動で魁の体がふわりと動き、次の瞬間には暁のがっしりとした両腕の中にすっぽりと収まっていた。

「…え?」

 一瞬、何が起こったのか、分からなかった。だが気が付いた時には、魁は暁の温もりにしっかりと包まれていたのだ。

「…暁…兄…ちゃん…?」

 呆然と暁を見上げると、暁は顔を赤らめ、困ったような表情で魁を見下ろしていた。

「…な、…何、…やって…」

 魁がそう言い掛けた時だった。

 不意に暁の顔が動いたかと思うと、魁の唇が柔らかく温かいものに包まれていた。

「…んん…ッ!?

 暁の凛々しい、精悍な顔が至近距離にあった。そして、

 …チュッ!!

 と言う音を立てて、魁の唇から暁の唇が離れた。

「…兄…ちゃん…」

「…」

 だが、暁は無言のまま、もう一度、魁にキスをした。

 …チュッ!!…チュッ!!

 触れては離れ、触れては離れを繰り返す甘いキス。それに対し、魁は、

「…ん…、…んん…ッ!!

 と、顔を真っ赤にして呻き声を上げる。

 その時、暁は魁の口を舌で抉じ開け、その中に侵入を開始していた。

 …クチュクチュ…ッ!!…チュッ!!…クチュクチュ…ッ!!

 淫猥な音が大きくなる。

「んんんんッッッッ!!!!んんんんッッッッ!!!!

 この頃になると、魁は呻き声を大きくしていたが、体から力が抜けるのが分かった。

「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!

 やがて、暁の唇が魁の唇から離れた時、魁は荒々しい呼吸をしていた。暁はと言うと、無言のまま、魁を見下ろしている。

「…な…ッ、…何だよッ、暁兄ちゃあんッ!!…ど、…奴隷からキスなんかしていいと思ってんのかよオッ!?

 顔を真っ赤にし、目に涙を溜めて言う魁。そんな魁に対し、暁は、

「…うるさい…!」

 と、一言だけ言ったかと思うと、アクセルラーを取り出した。そして、

「ボウケンジャーッ、スタートアップッ!!

 と叫び、右手に持っているそれを左腕に添え、一気に滑らせる。その瞬間、暁の体が光を帯び、光沢のある鮮やかな赤と白いアクセルスーツに身を包み、ボウケンレッドにアクセルチェンジしていた。

「…暁…兄…ちゃん…?」

 呆然と見上げている魁に対し、暁は、

「魁。お前もマジレッドに魔法変身するんだ」

 と静かに言った。その言葉にカチンと来たのか、

「…い、…言われなくてもやってやるよッ!!

 と言ったかと思うと、マージフォンを取り出した。

「天空聖者よッ!!我に魔法の力をッ!!

 携帯電話のようなものを腕にクロスさせ、そう叫ぶ魁。そして、

「マ〜ジ・マジ・マジ〜ロ!!

 と言いながら腕を大きく振り、最後にマージフォンを天へ突き上げた。その途端、魁の体が光を帯び、光沢のある鮮やかな赤色の、体の側面から足の中心にかけて真っ直ぐに金色と黒色のラインが入り、背中にはマントがあるマジレッドへと魔法変身していた。

「…魁…」

 魁がマジレッドに魔法変身した途端、暁がゆっくりと歩み寄り、魁を再び静かに抱き締めた。

「…ちょ、…ちょっと…ッ!!…ど、…どうしたんだよッ、暁兄ちゃあんッ!?

 いつもの暁と様子が違うことに、魁は明らかに戸惑っていた。

 その時だった。

 魁は自分の体がふわりと宙に浮くのを感じていた。

「…え、…ええええええええッッッッッッッッ!!!!!!??

 気が付いた時には、魁は暁の腕の中に体ごとすっぽりと収まる格好、いわゆる、お姫様抱っこをされていたのだ。

「…やッ、…ヤダッ!!…さ、…暁兄ちゃああああんんんんッッッッ!!!!

 暁の腕の中で魁がバタバタと暴れるが、暁の腕の力の方が強く、あっと言う間にベッドの上に放り投げられていた。

「あうッ!!

 ドスンと言う音と共にベッドに落ちる魁。そんな魁の目の前に、暁が無言のまま歩み寄ると、魁の体の上に伸し掛かった。

「…な、…何…だよ…!?

 魁の声が明らかに震えていた。それとは逆に、

「…魁…」

 と言う、暁の男らしい静かな声。

「…今度は…。…オレがお前を犯す番だ…!!

 

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