最高のプレシャス 第19話
目の前に立っている暁の表情。今まで、こんな険しい顔を見たことがあっただろうか。それに、いつも見慣れているはずの暁の体が、いつもよりも大きく見えた。
「…暁…兄…ちゃん…?」
ベッドの上に投げ出され、呆然と暁を見上げている魁。
ボウケンレッドの光沢のある鮮やかな赤と白を基調とした生地に包まれた暁の体。暁の筋肉質な体に纏わり付くように密着しているそのスーツ越しに、暁の腕や足の肉付きがクッキリと浮かんでいる。
そして。
「…ッ!?」
暁の体の一点に視線が動いた時、魁は目を大きく見開いた。そして、
「さッ、暁兄ちゃんッ!?」
と大声を上げていた。
「…」
顔をほんのりと赤らめた暁。その肩幅よりやや広めに広げられた足の中心部分に息づく、暁の男としての象徴であるペニス。それが今、ボウケンレッドの眩しいほど白いスーツの中で大きく勃起していた。その長さ、太さは相変わらずで、時折、心臓の脈動に合わせるかのようにピクッ、ピクッと脈打った。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
それを見た魁が思わず呆然とすると、
「…オレは…。…オレがお前を犯す番だと言った。…オレは、…本気だ…!」
と暁が言い、ゆっくりとベッドに乗った。そして、そのまま魁の肩を掴み、ゆっくりと押し倒し始めたのだ。
「…な…ッ!?…さッ、…暁兄ちゃんッ!?」
慌てて魁が声を上げるが、その時、魁は両手首を頭の両横でガッシリと掴まれ、体の上に暁に伸し掛かられていた。
「…や、…やだ…!!…止めてよ、…暁…兄ちゃん…!!」
魁がそう言うと、暁はフッと笑い、
「お前だって、嫌だと言いながら勃ってるじゃないか」
と言うと、腰を前後左右に艶めかしく動かし、マジレッドの真っ赤なスーツの中で大きく勃起した魁のペニスに擦り付けるようにする。その途端、
「んあッ!?ああッ!?ああッ!!ああッ!!」
と、魁が艶かしく喘ぐ。
「…魁…!」
その時、暁は魁の名を呼ぶと、魁の唇に吸い付くようにしてキスをした。
「…ん…ッ!!」
暁の大きな体の下で、魁が一瞬、体をピクリと跳ねらせる。暫くすると、
…チュッ!!…クチュクチュッ!!クチュクチュクチュクチュッッッッ!!!!
と言うくすぐったい音が聞こえ始めた。
「…ん…、…んふ…ッ!!」
「…は…ッ、…ああ…ッ!!…んんんん…ッッッッ!!!!」
暁の男らしい呻き声と、魁のやや高めの声がハーモニーを奏でる。やがて、
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
と、お互いに呼吸を荒くし、じっと見つめ合った。
「…止めてよ…!!」
暫しの沈黙を破ったのは、魁だった。その顔は真っ赤になり、目は潤んでいる。
「…兄ちゃん…。…僕がしたことを、…怒ってるの…?」
その時、暁は暫く黙った後、
「…分からん…」
と言った。
「…確かに、…お前がしたことは普通じゃない。…お前がオレのアソコを触るのは、オレ的には全く問題がなかったが。実際、お前がオレのアソコを触っても、何も言わなかっただろう?」
「え?」
そうなのだ。
魁の勉強を見ている時、魁は幾度となく暁のジーパン越しに、暁の男としての象徴であるペニスに触れていた。すると暁はフッと笑い、
「だが、これが翼だったら引っ叩いていたかもしれん」
と言った。翼とは、魁の兄・小津翼のこと。魁と同じようにマジレンジャーの1人で、マジイエローに魔法変身する。
「オレはお前が好きだ。だが、その好きと言う感情が、お前がオレを徹底的に甚振り、ぐったりとしている間に泣きながら言ったことのような、そんな感覚かどうかは分からないんだ…」
「…え?」
顔を真っ赤にして言う暁に対し、魁は俄かに顔を更に赤らめたかと思うと、
「…まッ、…まさかッ、兄ちゃんッ!?…ぼ、…僕が泣いていたところ、見てたのッ!?」
と大きな声を上げた。すると暁も慌てたように、
「見たんじゃないッ!!オレがぐったりしていたら、お前が勝手に泣いていただけだッ!!」
と言った。そして、大きく溜め息を吐くと、
「…魁…。…お前、…本気でオレのことが好きなのか?」
と、魁を真顔で見つめて尋ねた。すると魁は、ゆっくりとベッドから起き上がり始めた。それに釣られるように、暁もゆっくりと体を起こした。
「…ああ…」
暫くして、魁がぽつりと言った。
「…僕は…」
その顔が真っ赤になり、目にはいっぱい涙が溜まっている。
「…僕は、…小さい頃から暁兄ちゃんのことが…、…ずっと好きだったんだ…!!…チィ兄ィや蒔人兄ちゃんとは違う好きって言う感覚にはずっと気付いてた。…でも…、…そんなこと、…暁兄ちゃんに言えるわけがなくて…。…高校生になった今でもずっとその気持ちを押し隠していたんだ」
その時、魁はフッと笑い、
「…でも、…その気持ちはバレバレだったみたいだね。…兄ちゃんのチンポを触りまくってたんだから…」
と言った時、魁の目から涙が頬を伝った。
「兄ちゃんは憧れの存在なんだ。いつでもどんな時でも真面目で、物凄くカッコ良くてさ。本当に大好きで大好きで。…でも…。…それ以上には進めないことも分かってた。いや、それ以上は進んじゃいけないって。そんな時、兄ちゃんがサージェスの一員になったことを知ったんだ」
「…オレの後を付けた時ってことか?」
暁が尋ねると、魁はコクンと頷いた。
「兄ちゃんのとんでもない秘密を知っちゃったって、僕、物凄く興奮したんだ。…でも同時に、…兄ちゃんのことが心配で堪らなかった…。…もし、…プレシャスを、…回収している時に、…大…怪我でも…したら…、…死んじゃったり…したら…、って思ったら…」
その時には、魁は既にしゃくり上げ始めていた。
「…そしたら…、…そしたら…ッ!!」
魁の目からは止め処もなく涙が溢れ、ポロポロと頬を伝っている。
「…兄ちゃんのことを、…考えれば考えるほど、…不安で、…怖くて…!!…そんな時、…そっか、兄ちゃんがサージェスを辞めちゃえばいいんだ…って…、…思ったんだ…」
暁はじっと魁の話を聞いている。
「…兄ちゃんが…。…暁兄ちゃんが僕に秘密を知られて、サージェスを辞めざるを得なくなれば…、…そうすれば、兄ちゃんはずっと僕の傍にいてくれる。…危険な、命懸けなことをしなくても良くなる、そう思ったんだ…。…でも…、…それは兄ちゃんの夢を奪うことになる。…ずっと冒険家になりたくて仕方がなかったっていつも話してくれてた。その話をする時の兄ちゃんの目が本当にキラキラしててさ。…僕の我が儘で、兄ちゃんがサージェスを辞めちゃうのは、…兄ちゃんの本心…、…なのかな…って…、…思ったら…。…思ったらああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
魁が叫んだその途端、堪え切れなくなったのか、魁は暁の胸に飛び込んでいた。
「兄ちゃんッ!!兄ちゃああああんんんんッッッッ!!!!…僕は…ッ!!…僕はッ、…どうしたら良かったんだよオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その時だった。
暁の顔が不意に動いたと思った次の瞬間、魁は唇を塞がれていた。