違反切符 第4話
「激走ッ!!アクセルチェンジャーッ!!」
偶然のきっかけで出逢った高校生・伊達健太に、自分が激走戦隊カーレンジャーのグリーンレーサーであることがばれた上杉実。いや、ばれたと言うより、自ら墓穴を掘ったと言った方がいいかもしれない。言い訳も出来ない状況に置かれ、自分の素性がばれないようにして欲しいと懇願したところ、
「まずはぁ、オレの目の前でグリーンレーサーになってよ」
と言って来た。
そして今、実は健太の目の前でアクセルブレスにアクセルキーを差し込んだ。その途端、実の体が光り、グリーンレーサーに変身していた。
「…これで、…ええんか…?」
グリーンレーサーのマスクの中からくぐもった声が聞こえた。だが、健太はじっと実を見つめたままだ。
「何やぁ?オレのこの格好見て、見惚れてもうたんか?」
フッと笑みを漏らしながら、実は健太に近付いた。
その時だった。健太が急にニヤリとしたかと思うと、
「誰が見惚れるかよ!お前、バカだろ?」
と言い、実の腕を掴んだのだ。
「んなッ!?」
思わず背筋に悪寒が走り、実は慌てて逃げようとした。だが、健太が実の腕を掴む方が早かった。
「…は、…離さんかい…ッ!!」
実の声が思わず上ずる。すると健太はニヤニヤしながら、
「実さんさぁ、自分の立場分かってる?」
と言い、実をきちんと立たせると、ゆっくりとその首へ腕を回した。
「…んなッ、…何や…ッ!?」
実は今度は顔を仰け反らせ、体を硬直させた。
自分よりもやや年下の、しかも同じ男性が自分に抱き付いている。それだけでも鳥肌が立ち、体が動かなくなっていたのに、健太の蔑んだ目が、実を動けなくさせていたのも事実だ。
「…実さん。自分がグリーンレーサーだって言うことを黙っていて欲しいんでしょ?…僕を助けるのを少し躊躇ったことも?」
「…く…ッ…!!」
体を硬直させながら、実はブルブルと拳を震わせた。白いグローブがギリギリと音を立てる。健太はニヤリとすると、
「だったらさぁ、オレの言う事、きちんと聞いてくれなきゃダメだろう?」
と言った。
「…だ、…だったら、…何をすれば…?」
実がそう言った時だった。不意に健太が実から離れたのだ。
「?」
突然のことに、実はきょとんとする。
「てかさ」
健太はそう言いながら、実の体を何度も何度も上下するように顔を上下した。まるで、実の体を舐めるように…。
「そのスーツってさ、スッゲェ、エロいんだな!」
「あ?」
健太が何を言っているのか、最初は分からなかった。すると健太はツカツカと実のもとへやって来ると、実の両肩を掴んだ。
「?」
健太の動きを目で追うしか出来ない実。そんな健太はさっきから実にくっ付いたり離れたりを繰り返す。
「…な、…なぁ、健太ぁ。…お前、…何がやりたいねん?」
実がそう聞いた時だった。ゆっくりと健太が実の両腕を掴み、グニグニと揉み始めたのだ。
「実の腕、凄い筋肉だな!」
驚いたように言う健太。
「そ、そりゃあ、ボーゾックと戦ってるからな!日頃から、体も鍛えておかなアカンしな!」
ちょっといい気になる実。すると健太は、
「足もさぁ、凄く筋肉質なんだな!」
と言い、今度は太腿を片方の足ずつ揉み込み始めた。
「フフッ!な、何やねん、お前。…ちょ、ちょぉ…ッ!!」
健太の手の動きがくすぐったく、実は思わず声を上げる。
「…ちょ、…ちょぉ、…止め…!!…アハッ…!!…く、…くすぐったいわ…ッ!!」
健太は実の太腿を揉むように手を動かす。その感覚がくすぐったいのだ。
「実さん、後ろ向いてもらっていい?」
健太がそう言うと、
「こ、こうか?」
と実は後ろを向いて立った。
「足、もう少し開けよ」
健太の声に釣られるかのように、実が足を肩幅程度に開く。
その時だった。健太が実の尻をスルリと撫で上げたのだ。
「んああああッッッッ!!!!」
突然の刺激に、実の体に悪寒が走る。
「なッ!!なッ!!なッ!!なんやねんッ!!」
マスクの中が暑い。顔がそれだけ真っ赤になっているに違いない。だが健太は、
「いや、尻もすげぇ、筋肉質だなぁと思ったからさ」
と言い、再び、実の尻を撫でたり、揉み込んだりし始めた。
「…あ、…そ、…そう言うこと…」
ホッとしたような、違和感があるような、そんな不思議な感覚がする実。
すると健太は実の目の前に立った。
「今度はどうしたい?」
実が尋ねると、
「こうするんだよ!」
と健太の右手が動いた。そして、実の股間をスルリと撫で上げたのである。
「んあッ!?」
その瞬間、実が素っ頓狂な声を上げて思わず腰をくの字に折り曲げた。
「なッ、何すんねんッ!?」
思わず大声を上げる実。その時だった。
「動くんじゃねぇッ!!」
今までのニコニコ顔が一変、健太が物凄い形相で実に怒鳴り付けたのだ。
「!?」
その声に思わず圧される実。健太はニヤニヤと不気味な笑みを浮かべながら、
「最初に言った、『そのスーツってさ、スッゲェ、エロいんだな!』の意味、分かってんの?」
と言った。
「オレは別に、お前の手や足の筋肉なんて、どうでもいいんだよ!」
「…あ…、…うぁ…!!」
実は恐怖に思わず慄く。
「…お前が悪いんだからな、…実…!」