アースフォースを奪え! 第3話

 

「…な…、…ん…だと…!?

 光沢のある青いチェンジスーツ。チェンジペガサスにチェンジし、顔は同じく光沢のある青と黄色であしらわれ、額に天馬のデザインが施されているマスクに覆われている。その顔はさっきまで赤かったはずなのに、今は血の気が引いているかのように真っ青になっていた。

「…ど、…どうして…!?

 チェンジペガサスにチェンジした大空勇馬は自分が置かれている状況がなかなか理解出来ず、ブツブツと呟くように言った。

「…ヒ、…ヒドラー兵が…!?

 さっき、自分の目の前にいたヒドラー兵はペガサスアタックで全て倒したはず。だが今、そんな勇馬の体を押さえ付けるかのように、両腕と両足に合計4体のヒドラー兵がいたのだ。しかも、耳元でクカカカと不気味な声を上げられ、鳥肌が立ちそうになる。

「あれで全てだと思ったか?」

 身動きが取れない勇馬の目の前で、同じようにヒドラー兵の姿をした宇宙獣士ヒドラスが腕を組んで立っている。

「我々ヒドラー兵は無尽蔵に作り出される。そして、どこからでも現れる。特に今、お前達に倒されたヒドラー兵や宇宙獣士の怨念がピークに達している今はな!」

 そう言うとヒドラスは、勇馬の方へ向かってゆっくりと歩き始めたのである。

「…く…ッ!!…放せえッ!!

 勇馬が懸命に体を動かそうとする。だが、勇馬の両腕に背後からしがみ付いているヒドラー兵も、勇馬の両足に地中から体を半分乗り出してしがみ付いているヒドラー兵もびくとも動かない。

「放せえッ!!放せったら…ッ、…こんのおおおおッッッッ!!!!

 勇馬が体をくねらせ、懸命にその束縛から逃れようとする。だが、それまでに体力を使い果たし、疲弊し切っている勇馬の抵抗は、普段は簡単に払い除けることが出来るヒドラ―兵も、今はビクともしなかった。それどころか、クカカカと不気味な笑い声を上げながら、ヒドラ―兵達は勇馬の腕や足をその粘液の付いた手でペタペタと執拗に触り始めたのだ。

「んなッ!?

 勇馬の筋肉質な両腕と太腿、脛などがどんどん粘液で汚されて行く。キラキラと光沢を放っていた鮮やかな青色のチェンジスーツはその光沢を失い、代わりにヒドラ―兵達の粘液で光沢を放ち始めた。

「やッ、止めろオオオオッッッッ!!!!気持ち悪いッ!!

 これには勇馬もチェンジペガサスのマスクの中で顔を真っ青にして悲鳴を上げた。

「フフフ…」

 目の前にいるヒドラスが満足気に頷く。

「…それにしてもお前、いい体付きをしているな…!」

「んなッ、なん…だと…ッ!?

 その時、1体のヒドラ―兵が勇馬の腰を偶然にも押すようにした。

「…あ…」

 腰を突き出すような体勢を取らされている勇馬。当然のことながら、勇馬の男子としての象徴であるペニスがヒドラスの目の前へ突き出される格好になっている。だが、勇馬のペニスは今、その膨らみを失い、小さな小さな山を作り出しただけであった。

「…みッ、…見るなよッ!!

 ヒドラスの視線を感じたのか、勇馬が言った。するとヒドラスは、

「…フッ!」

 と勇馬のことを鼻で笑うと、

「そこは後でじっくりと、な!」

 と言った。

 その時だった。

 しげしげと勇馬の腕を見つめていた1体のヒドラ―兵が不気味な声を上げたかと思うと、口を大きく開いたのだ。

「…ひッ!?

 それを見た勇馬は思わず悲鳴を上げる。醜い怪物の顔をしたヒドラ―兵の口の中には、鋭く尖った歯が何本も見えた。それで噛まれたら…!

「…ッ!!

 勇馬が思わず目を閉じたその時だった。

「止めろッ!!

 ヒドラスの声が聞こえた。

「…?」

 恐る恐る目を開ける。すると、自分の腕に噛み付こうとしていたヒドラ―兵が委縮しているのが分かった。

「…お前達へのおこぼれは後だ!」

「…あ…あ…あぁ…!!

 勇馬は別の意味で恐怖に陥っていた。

 例え今、ここでヒドラー兵達にその鋭い歯で噛まれることがなかったとしても、結局は後でそのはけ口になるのか。そしてそれよりも、今は目の前の宇宙獣士ヒドラスに甚振られるのか…。

「…止めろ…!!

 声が震える勇馬。

「…止めろ…!!…止めろオオオオッッッッ!!!!

 一刻も早くここを逃げ出したい。勇馬はその一心で必死に体を動かす。だがどう足掻いても、ヒドラー兵から逃れることが出来ないでいた。

「おい、お前達。こいつをしっかりと捕まえていろよ?」

 不意にヒドラスが歩き始め、勇馬の体の周りをゆっくりグルグルと回り始めた。

「…な…、…な…!?

 目と頭を動かし、必死にヒドラスを追い掛ける勇馬。するとヒドラスは勇馬の真後ろに立った。その途端、

「んあッ!?

 と言った勇馬がビクンと体を跳ねらせた。

「…んどッ、…どこ…ッ、…触ってんだよ…ッ!!

 ヒドラスの両手が、粘着質な液体を出している両手が勇馬の背後、2つのこんもりとした丘を静かに撫で回していた。

「…あぁ…!」

 ヒドラスが甘い吐息を上げる。

「…何と、…何とぷりんとしているのだ…!!…程よい弾力性と筋肉。…あぁ…!!

 ヒドラスの両手が、勇馬の尻を上へ下へと舐め回すように撫でる。そのたびに、クチャクチャと言う淫猥な音が響き、勇馬のチェンジスーツの、その部分の光沢を失わせて行く。

「…んん…ッ!!…く…ッ!!

 ぞわぞわとした悪寒が勇馬の体を駆け抜ける。身動きの取れない満員電車の中で、男が男に痴漢行為を受けている、そんなふうにも思えた。

「…く…っそおおおお…ッッッッ!!!!

 チェンジペガサスのマスクが下を向き、その中から呻き声のように勇馬の声が聞こえる。

「…次は…」

 その時、ヒドラスがそう言ったかと思うと、勇馬の右の尻をしっかりと握っていた。

「…ま…、…まさか…!?

 勇馬の顔に冷たい汗が流れ落ちる。

「…止めろ…!!

 しげしげと勇馬の後ろの膨らみを見つめるヒドラス。

「…噛み付きたい…!!

 ヒドラスがそう言った瞬間、

 ドシュッ!!

 と言う音がして勇馬の体に激痛が駆け抜けた。

「…あ…あ…あ…!!

 勇馬の体がグインと硬直し、顔は天を見つめるように上へ向いた。

「…ぁぁぁぁ…!!

 ヒドラスの口が、鋭い牙が勇馬の右尻に食らい付いている。

「…ぁぁぁぁぁあああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 勇馬の絶叫が冷たい大地に響き渡った。

 

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