終わらない因縁 第4話
「何ィッ!?シャダムと戦ったああああッッッッ!!!!!!??」
亮が大きく目を見開き、口の中に含んでいたお茶を盛大に吐き出した。
「…あ…」
気が付いた時には、そのお茶は目の前に座っている大五の顔に盛大にかかり、ポタポタと床に垂れていた。
「…おい…!」
目を閉じ、眉間に皺を寄せている大五が静かに声をかける。
「…口に何かを入れてる時には話すなって、小さい時に教わらなかったのか…?」
大五の眉間がピクピクと動いている。それを見た亮は、
「…わ、…悪リィ、兄貴ィ…!」
と言いながら、タオルで大五の顔を拭く。
「…それに、あまり大声で叫ぶと、洋子さんが起きるぞ?」
「…あ!」
洋子と言われて慌てて口を両手で塞ぐ亮。洋子とは、亮の5歳年下の妹のことである。
「…まぁ、…洋子さんが、お前がダイレンジャーだと言うことは、最後まで気付かなかったようだがな」
ようやく目を開けた大五が静かに微笑んで言った。
「…確か、ゴーマ3ちゃんズが初めて現れて、お前が無謀にも1人で突っ込んで行ってやられそうになった原因が、ゴーマ3ちゃんズが洋子さんを攫ったのが原因だったんだよな?」
「ちょっとッ、洋子を原因みたいに言わないでくれないかッ!?」
亮がムッとして声を上げる。そんな亮を意地悪く見つめている大五。
「それに、そもそも、その時に洋子はオレがダイレンジャーだったとは気付いていないんだからな!」
「だから良かったんじゃないか」
その時には優しい笑顔に戻っている大五。そして、亮の頭に手をぽんと乗せ、
「もし、洋子さんに亮がダイレンジャーだったってことがバレていたら、それこそ、もっと危ない目に遭わせていたかもしれないんだぞ?」
と言った。すると亮は、はっとした表情を浮かべ、
「…そ、…そうかも…しれねぇ…」
と俯いてしまった。
「それがなかっただけでも、良かったと思わなきゃな!」
大五が優しく諭すように亮に声を掛けると、亮は目を潤ませ、
「…兄貴ぃ…」
と言った。
「…?…どした、亮?酔ってるのか?」
亮がいつの間にか、大五に寄り掛かっていた。
「…大五ぉ…」
「今度は何だ?俺のことを名前で呼び直したりして」
亮の頭を静かに撫でながら尋ねる大五。すると亮は、
「…オレ…。…オレぇ、…大五に出逢えて、…大五が仲間で、…本当に良かったぁ…!」
と言った。そんな亮の言葉に、
「…ああ。…俺も、お前が仲間で、…弟でいてくれて良かったって思ってるぞ?」
と、やや照れながら言った。
「…もし、…シャダムが本当に復活したりしたら…」
「…ああ。…その時は、…俺達はもう一度、やつらと、ゴーマと戦わなきゃならないな…!」
いつの間にか、戦士としての表情に戻っていた亮と大五は、お互いに顔を見合わせ、静かに頷いた。
「シャダムは大地動転の玉を探しているようだ」
「でッ、でもッ、大地動転の玉は、オレ達の天宝来来の玉と一緒に飛んでっちまったじゃねぇかッ!?」
「だからだ。シャダムはどうやって大地動転の玉を探し出そうとしているのか、分からない。それが余計に不気味なんだ…」
大五の眉間に再び、深い皺が出来ていた。
「…どこだ…!」
その頃、シャダムはボロボロの姿で暗闇を彷徨っていた。
「…オレの…!…オレのッ、大地動転の玉ッ!!…ゴーマの頂点の証である大地動転の玉はッ、…どこだああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その時だった。
「ホーッホッホッホッホ…!!」
どこからともなく、甲高い笑い声が聞こえて来る。
「…こッ、…この声は…ッ!?」
何度も聞いたことのある、忌々しい笑い声。辺りを鋭い目付きで睨み付けるシャダム。
「大地動転の玉は、天宝来来の玉と一緒に遠い世界へ飛んで行ってしもうたわ…!」
「ゴーマ十五世ッ!!どこにいるッ!?姿を現せッ!!」
その時だった。
「ホーッホッホッホッホ…!!」
突然、シャダムの目の前に全身白ずくめの、貴族のような姿をした男が姿を現した。
「…ゴッ、…ゴーマ十五世ッ!?…貴様ッ、…俺が作り出した泥人形で、あの時、葬り去ったはずではなかったのかッ!?」
「ホーッホッホッホッホ…!!ワシは確かに貴様のせいで朽ち果てた!!忌々しや、シャダムッ!!大地動転の玉をワシから奪っただけではなく、王位の座も奪うとは…!!」
血走った大きな目がシャダムを睨み付ける。だが、すぐにフッと笑い、
「じゃが、今ではワシも貴様も亡霊に過ぎん。つまりは同じ穴のムジナじゃ!」
と言った。
「戯言をッ!!俺はこうして肉体を復活させたのだッ!!」
「ホッホッホ…!!それは仮初めの姿じゃて…!!」
「何だとッ!?」
いちいちゴーマ十五世の言葉が癇に障る。
「相変わらず、血気盛んじゃの、シャダム」
ゴーマ十五世は穏やかにそう言うと、
「大地動転の玉は、ワシや貴様が持っておったそれだけではない」
と言い、ニヤリと笑った。
「気力と妖力が混ぜ合わされば、おのずとそれは出来上がる…!!」
「…なん…だと…ッ!?」
普段から大きなシャダムの瞳がカッと見開かれた。するとゴーマ十五世は、
「…これが何を意味しているか、…よぉく、考えてみよ…!」
と言うと、その姿がスゥッと透き通り始めた。
「…ゴーマ十五世…。…貴様…!?」
シャダムが声にしようとするが、
「…最早、…ワシは力を持たぬ。…悔しいが、…ゴーマを復活させられるとすれば、…それは貴様じゃろうて…!」
と言う声が聞こえた時、ゴーマ十五世の姿はどこにもなかった。
「…気力と、…妖力を混ぜ合わせる…?…気力…、…妖力…」
みるみるうちにシャダムの瞳に光が宿り、その口元には不気味な笑みが浮かび始めた。
「…クックック…!!」
シャダムが低く笑い始めたその瞬間、
「…ッ、アーッハッハッハッハッハッハ…ッッッッ!!!!」
と高らかに笑い始めたのだ。
「分かったぞッ!!ダイレンジャーの倒し方がッ!!」