終わらない因縁 第10話

 

「…五…。…大五…!」

 暗闇の中、いや、ぼんやりとする意識の中に聞こえて来る自分を呼ぶ声。

「…大五…!」

 物悲しくも、凛とした女性の声が頭の中に響いて来る。

「…ん…」

 その声の主を求める。その時だった。

「大五ッ!!

 自分の名を呼ぶ声が一際大きくなった途端、

「クジャクッ!?

 と、大五は驚いて目を覚まし、布団を跳ね上げた。

「…クジャク…?」

 半分、寝ぼけているのか、状況をいまいち理解出来ない大五。自分の名前を呼んだはずのクジャクが周りにいない。

 と、その時だった。

 バシュウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!!!!!!

 激しい衝撃音と共に、大五を眩しい光が包み込んだ。

「…ッ!?

 そのあまりの眩しさに大五は完全に目を覚まし、その光を腕で遮った。

「…?」

 やがてその光が消えた時、大五は真っ白な空間にいることが分かった。キーンと言う耳が痛くなるほどに静寂な空間。

「大五!」

 コツコツと言うヒールが高鳴る音が聞こえ、大五が振り返ったそこには鮮やかな赤と白を基調とした美しい女性がにこやかに佇んでいた。

「クジャク!」

 思わず駆け寄り、その柔らかい体を抱き締める。

「久しぶりだな、大五!」

 クジャクは優しげにそう言い、そのしなやかな指を大五の背中へと回した。

「ああ!元気だったか、クジャク…」

 と言いかけて、

「…そっか。…お前には、元気も何も関係なかったな。…お前は、…孔雀明王の化身なのだから…」

 と苦笑した。するとクジャクは、

「確かに、私は孔雀明王の化身。だが、私とて神である前に1人の女性。この前もそう言ったであろう?」

 と悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「…こ、ここは?」

 逸る気持ちを抑えるかのように、大五はクジャクに尋ねた。すると、それまで優しげな笑みを浮かべていたクジャクが真顔に戻り、

「ここは私が作り出した閉鎖空間」

 と言った。

「…大五。この間のことだが…」

「え!?…あ…」

 ドキッとした。

 クジャクが顔を真っ赤にしている。その目が少しだけ潤み、大五と視線を合わせたかと思えばすぐに反らせる。

「…ク、…クジャク…!?…お、…俺、…お前を、…傷付けたのか…!?

 思わず聞き返していた。するとクジャクは、

「え!?

 と、きょとんとした表情を大五へ向けた。

「…そ、…その…!!…クジャクの、…その、…表情を見ていたら、…あぁ、俺は何かクジャクにやったのか…、と思ってしまってな…」

「…プッ!!

 今度はクジャクが吹き出したかと思うと、大声で笑い始めた。

「…クジャク…?」

 今度は大五がきょとんとする番だった。暫くするとクジャクは、

「…す、…すまぬ、…大五…。…お前が、…あまりに純真なものだから…」

 と、目にいっぱい溜めた涙を拭った。

「…クジャク…?」

 大五は未だに状況を理解出来ず、きょとんとしたままだ。

「…ただ、この間のことを思い出して、少し恥ずかしかっただけだ。…まさか、…お前とあのようなことを…」

 その頃になると、クジャクは真剣な眼差しに戻り、大五を見つめている。

「だが、それは致し方のないこと。シャダムを倒すためには、大地動転の玉をお前の気力と、私の妖力で作り出すしかないのだから」

「ああ!分かっている!」

 大五も真剣な眼差しで頷いた。

「だが、あの場所ではいけなかったのだ」

「…それと、…ここが関係しているのか?」

 大五が訝しげに尋ねると、クジャクはコクンと頷き、

「…この間の情事を、…どうやらシャダムが見ていたようなのだ」

 と言った。

!!!!!!??

 その言葉に思わず目を見開き、絶句する大五。

「お前の気力を放出させることをしながら、私は禍々しい気を感じていた。いくら気力を放出させるためとは言え、やっていることは男と女の情事そのもの。それをニタニタとシャダムは見ていたのだろう。自分と敵対する私達が、あのようなことをしている。それは彼にとっては滑稽に見えたのであろうな」

「…ッッッッ!!!!

 大五の握り締められた拳がギリギリと音を立てる。

「…おのれ…ッ、…シャダム…ッ!!

 怒りに体までもがブルブルと震える。

「落ち着け、大五!」

 その時、クジャクが大五の目の前まで来たかと思うと、大五の体に静かに抱き付いた。

「…ッッッッッッッッ!!!!!!!!

 大五の体に、クジャクの温もりと、ふわっとした心地良い香りが溢れる。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 むちっとした女性独特の体の柔らかさに、心臓がドキドキと高鳴り、体の中を熱いものが流れる。

「…ク…ジャ…ク…!!

「…え?」

 下半身に何かぶつかる感覚を覚え、クジャクは驚いて見下ろす。そして、顔を真っ赤にした。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 大五の下半身。ジーパンに包まれた2本の足の付け根部分に息づく、大五の男としての象徴であるペニス。それが今、ジーパンの中で大きな膨らみを作り出していたのだ。

「…フフッ!!

「すッ、すまんッ、クジャクッ!!

 大五は思わず顔を真っ赤にする。だがクジャクは、

「別にあやまることはない。それが、男としての正常な反応だ」

 と言うと、大五のその大きな膨らみをスルリと撫で上げた。その途端、

「んああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と大五が声を上げ、体をくの字に折り曲げる。

「…大五…。…今宵も、…大地動転の玉を作り出す手伝いをしてくれるか?」

「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!

 その時、大五は既に虚ろな瞳をクジャクへ向け、顔を真っ赤にしていた。そして、

「…する…!…シャダムを封じるための、…大地動転の玉を、…俺が、…作る…ッ!!

 と言ったかと思うと、

「オーラチェンジャーッッッッ!!!!

 と右腕用のオーラギャザーと左腕用のオーラスプレッダーを挿し込んだ。その瞬間、大五の体が眩しく光り、次の瞬間には、光沢のある鮮やかな白と緑を基調としたシシレンジャーのスーツを身に纏っていた。

 

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