終わらない因縁 第23話
高らかな笑い声を上げて現れた男を見た途端、リュウレンジャーのマスクの中で亮は目を大きく見開いた。
「…シャ…ダ…ム…!!…ウソ…だろ…!?」
その表現はおかしいかもしれない。シャダムは自身で倒したはずなのだから!
「…ククク…!!」
ベルトをあしらったようなマスクの間から瞳を覗かれた瞳をギラギラと輝かせ、シャダムは笑っている。
「久しいな、亮。俺が貴様に倒されて以来、か?」
ゴーマ宮が崩壊した時、亮はシャダムと1対1で戦い、シャダムの腹部にナイフを突き刺した。そして、シャダムは亮の目の前で泥人形と化し、崩れ落ちたはずだった。
「…ク…ッ!!」
亮のはらわたが煮えくり返りそうになるほど、怒りが込み上げて来る。
「…て…め…え…ッ!!…兄貴に…ッ!!…大五に何をしたああああッッッッ!!!!」
思わずカッとなった亮が飛び出して行く。リュウレンジャーの光沢のある鮮やかな赤色のスーツが、亮の動きに合わせてキラキラと輝く。
「…フッ!!」
その時、シャダムが鼻で笑ったかと思うと、右手のひらの上でふわふわと浮いている真っ白く輝く大きな球体を亮に向けた。その瞬間、その球体が輝きを増したかと思うと、そこから光の矢が飛び出した。
シュパパパパッッッッ!!!!
乾いた鋭い音が聞こえたその瞬間、
ズババババッッッッ!!!!ズガアアアアンンンンッッッッ!!!!ガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う激しい衝撃音と、
「うわッ!?ああッ!?ぐぅわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う亮の悲鳴が辺りに響き渡った。
「…ぐ…ッ、…うううう…ッッッッ!!!!」
しゅうしゅうとスーツから煙を上げながら、亮が呻き声を上げる。
「…い…、…痛…て…え…!!」
思わずカッとなって飛び出し、無数の光の矢を一身に受けてしまった。その激痛が体中を駆け巡る。
「ハーッハッハッハッハ…!!」
シャダムの勝ち誇った笑い声が聞こえた。
「さすがは大地動転の玉だ。強力なパワーを宿している…!」
「!!!!」
その時、亮は耳を疑った。
「…今、…何…て…?」
冷や汗のような、嫌な汗が顔を伝う。するとシャダムは目をギラリと光らせ、
「聞こえなかったのか?大地動転の玉と言ったのだ!!」
と言った。
「…ウソだ…!!」
亮が信じられないと言った表情で呆然とする。
「…しッ、…信じられるかッ!!…オ、…オレの知ってる大地動転の玉はもっと小さくて、赤く光るもののはず…!!」
「バカめッ!!それは過去の話だッ!!今、ここにあるものが本物の大地動転の玉だッ!!」
その時、シャダムの目が大きく見開かれ、
「食らえええええッッッッ!!!!」
と叫んだ時、その大きな大地動転の玉が再び輝きを増し、そこから無数の光の矢が飛び出した。
「同じ手は食うかッ!!」
亮は身軽に体を翻し、その光の矢を避ける。行き場を失った光の矢は亮の後ろで爆発し、その光で亮の体が光る。
「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
亮が駆け出そうとしたその時だった。
「…え?」
シャダムが手にしている大地動転の玉。その玉から妖しいピンク色の靄のようなものが流れているのに気付いた。そしてそれはふわふわと宙を漂い、その先にはシシレンジャーに気力転身した大五がいた。そして、大地動転の玉から無数の光の矢が放たれるたびに、
「…う…ぐ…!?」
「…あ…あ…あ…あ…!!」
「…ああああ…ッッッッ!!!!」
と悲鳴のような呻き声を上げ、その場に蹲ってしまったのだ。その横には、そんな大五をニタニタと見つめる万華鏡伯爵がいた。
その時だった。
シュパパパパッッッッ!!!!
亮の目の前が眩しく輝いた。そして、全身に鋭い痛みを感じた次の瞬間、
ズババババッッッッ!!!!ズガアアアアンンンンッッッッ!!!!ガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う激しい衝撃音が響き、リュウレンジャーのスーツが爆発したのだ。
「ぐぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
大五に気を取られていた亮の体に、大地動転の玉から放たれる無数の光の矢がぶち当たり、爆発を起こしていたのだった。
「…ぐ…、…ああああ…ッッッッ!!!!」
地面の上でゴロゴロと転がる亮。
「ハーッハッハッハッハ…!!」
シャダムの狂ったような笑い声が聞こえる。
「…バッ、…バカめ…ッ!!…大五に気を取られ、自らの危険を忘れるとはなあ…ッ!!」
「…シャ…ダ…ム…うううう…ッッッッ!!!!」
その時、亮の頭の中で何かが繋がり始めていた。
「…ほう…」
そんな亮の目付きの変化に気付いたのか、シャダムが声を上げた。
「…さすがは、裏切り者・張遼の息子だな。…このカラクリに気付いたのは…!!」
その時、シャダムは右手のひらの上の大地動転の玉を見つめた。その視線を追うように、亮もそれを見た時、
「!!!!」
と、目を大きく見開いた。
「…大地動転の玉が…、…小さくなっている…!?」
「…ククク…!!」
シャダムが低く笑う。
「貴様も気付いているようだから教えてやろう。この大地動転の玉はそこにいる大五の気力を吸い取ったものだ!!」
「…な…に…!?」
嫌な予感が亮を包み込む。
「そこにいる万華鏡伯爵を幻影でクジャクに化けさせ、大五に近付かせた。そして、俺が復活したことを告げ、その俺を倒すためには大五の気力と、クジャクの妖力を混ぜ合わせた大地動転の玉を作り出すしかないと言わせた…!!…だが…!!」
そこまで言うと、シャダムは大五を一瞥した。
「…あいつは…。…あいつも、ただの男だったと言うことだ。…クジャクと交わることで快楽を得、それによって少しずつ壊れて行った。そして、罠とも気付かずに己の気力を殆ど放出した。そして、その気力は今、俺の手の中にある。この大地動転の玉から光の矢を、つまり、この中にある大五の気力を放出させれば、大五も弱って行く。つまり、この玉を消滅させれば、大五も死ぬのだッ!!」
「ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「ウフフフ…!!」
その時、クジャクの姿の万華鏡伯爵が笑い声を上げた。
「残念だったな、リュウレンジャー。大五は既に私のもの。お前も気付いていたのであろう?大五の体から気力が抜け、痩せ衰えて行ったのを…!!…もう少し、気付くのが早ければ、大五は死なずに済んだものを…!!」
「…だ、…だったら…!!」
いちかばちかの賭けだ。亮が動く。
「シャダムッ!!お前を倒してッ、その大地動転の玉を奪うッ!!そしてッ、それを大五にッ、兄貴にッ、戻すまでだああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
赤龍双龍剣を握り締めるリュウレンジャーの真っ赤なグローブがギリギリと音を立てた。
「うぅおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
雄叫びを上げた時、亮は物凄い勢いで飛び出していた。