ヒーローが戦闘員に陵辱される抒情詩 第1楽章 第4話
ドオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンンンンンンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
と言う大爆発と、
「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言うブルースリーの絶叫がモニターから聞こえて来た時だった。
「バッ、バカなッ!?」
その光景をモニター越しに見ていたドクターマンが物凄い勢いで立ち上がり、目を大きく見開いた。
「…ドクターマン様…?」
新帝国ギアの幹部ビッグスリーの1人・メイスンがドクターマンを訝しげに見上げる。
「いかがなされたのです?」
「…あ…、…あぁぁ…」
ワナワナと体を震わせ、呆然とモニターを見続けるドクターマン。そんなドクターマンに聞こえているのかは分からないが、メイスンはニッコリと笑うと、
「さすがはドクターマン様ですな。メカクローンを自爆させ、ブルースリーに大ダメージを与えるとは…!!…しかも…」
そう言って、メイスンがモニターへ視線を落とした時だった。
ポウ…。
自爆し、粉々になったメカクローンの全てのパーツが蒼白く光ったその途端、それらは1つのところに固まり始め、次第に人のような形になって行った。そして、
ガシャンッ!!ガシャンッ!!
と、今までと同じように一定のリズムで両手を振るメカクローンへと再生したのだ。
「…爆発し、粉々に砕け散ってもその再生能力が消えることはない…。…これではブルースリーも、手も足も出ませぬな…!!」
だが、ドクターマンは、
「…う…、…む…」
と歯切れの悪い返事をしたかと思うと、そのまま虚ろな表情でその場を後にした。
「…ドクターマン…、…様…?」
訝し顔のメイスン。中年男性の風体のメカ人間のその眉間に深い皺が寄った。
「…何故だ…?」
薄暗い部屋。ピッ、ピッ、と言う一定のリズムで音を立てる様々な機械。その部屋に、長い白髪の老人・ドクターマンは呆然と立っていた。
「…何故、最強メカクローンが自爆などしたのだ!?私のプログラムの中には、自爆と言うキーワードはなかったはず…!!」
その時、ドクターマンは何かを思い出したかのように、はっとした表情を浮かべた。
「…そう言えば、あの時、あのメカクローンが突然、勝手に動き出した。私の制御を振り払うようにして…!!」
「…ギ…ッ!?…ギギギギ…ッッッッ!!!?」
突然、1体のメカクローンの目が赤く光り、変な音を立て始めた時のことだ。
「私が作り出したメカに異常など起こるはずがないッ!!私は今世紀最初にして最後のメカ人間、偉大なるドクターマンなのだ!!」
バサバサと真っ黒なマントを翻す。
「どうして爆発したか、教えてあげよっか?」
その時、ボクはようやく言葉を発した。その言葉に、ドクターマンは耳聡く反応し、
「誰だッ!?」
と、鋭い眼光を私に向かって投げ掛けて来た。
「…フンッ!!」
ボクは物陰からゆっくりと姿を現す。すると、ドクターマンは、
「貴様ッ!!どこから入ったッ!?」
と言いながら、制裁ステッキを振り翳した。でもすぐに、
「…な…ッ!?」
と短い声を上げると、再び目を大きく見開いた。制裁ステッキの先から放たれた蒼白い光が、ボクの体をスゥッとすり抜けたからだ。
「…フフッ!!…無駄だよ。ボクは実体を持たないんだもの」
ボクはそう言いながら、ゆっくりとドクターマンへ近付いた。
「…貴様…。…化け物か…!?」
「化け物ぉ?」
ムッとしたボク。
「失礼だなぁ。キミはメカ人間になってから、口の利き方と言うものを忘れてしまったのかい?」
スゥッとドクターマンの横へ移動し、その顔を蔑むように見つめる。
「ねぇ、おじいちゃん?」
「誰がおじいちゃんだッ!?」
「…フフッ!!…ねぇ…。…ボクと手を組まない?」
「ふざけるなッ!!誰が貴様みたいな小娘と…!!」
「…小娘…?」
いちいち、ムカツクじじいだ。ボクは歴史を改変するためだけに、わざわざ、過去の世界へタイムスリップしていると言うのに…。
その時、ドクターマンははっとした表情を浮かべて、
「…貴様か…?…最強メカクローンを爆発させたのは?」
と言った。ボクはフフンと笑うと、
「そうだよ?ボクが、キミがいないうちにここに忍び込み、その体内に爆弾を仕込んだ。そして、いつ発動させようかって見てたんだけど、あまりにブルースリーがしつこかったんでね。思わず…」
と言い、手にしていたリモコンのボタンを押す振りをした。
「…」
けれど、ドクターマンはボクのことを未だに疑っているようだ。
「…まぁ、…いっか…。…このまま放っておいても、新帝国ギアは滅びるだけだし…」
「…何…?」
その時、ドクターマンの顔がピクリと動いた。
「…貴様…」
「貴様貴様ってさっきから失礼だなぁ。ボクはヨドンナ。この世界よりも遥か先の未来からやって来たんだ」
「…未来…、…だと…?」
「そう」
ボクはコクンと頷くと、ドクターマンの顔をじっと見つめた。
「信じられないって顔をしているね。まぁ、無理もないっか。タイムスリップなんて、現実的にはあり得ないんだもんね。でも、ボクはちゃんとここにやって来た。当然だけど、ボクはキミの作った新帝国ギアの末路も知ってる。バイオマンに滅ぼされるんだ…!!」
「…」
じっとボクを見つめるドクターマン。
「ねぇ、ボクと一緒に歴史を変えてみない?」
ボクがそう言うと、その機械室にあったモニターのスイッチを入れた。
ブゥゥゥゥンンンン…。
モーターが回り始める音が聞こえ、そこに凄惨な光景が映し出される。
「…あ…、…あぁぁ…!!」
しゅうしゅうと言う煙が立ち込め、俯せに倒れているブルースリーが映し出される。光沢のある鮮やかな青色だったスーツはあちこちが焦げ付き、ボロボロになった生地から南原の体を守る回路が飛び出していた。
そして、宇宙人のようなややコミカルなデザインのマスクのバイザーが割れ、南原の苦悶の表情が見えていた。
「このままとどめを刺すのは簡単なことだけど、その前に、もっといろいろやってみない?」
「…フッ!!」
その時、ドクターマンの目がギラリと光った。
「…フフッ!!…フハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ひとしきり笑うと、カタカタとコンピューターを操作し、
「最強メカクローンッ!!ブルースリーを捕らえよッ!!」
と指示を出した。その途端、
「…な…ッ、…何…を…ッ、…する…気…だ…ああああ…ッッッッ!!!!」
と、南原は両肩をメカクローンに担がれて立ち上がり、声を震わせる。
「バイオマンの能力を全て調べ上げ、それに勝る更に強化されたメカクローンを作り出すのだ!!」
「…フフッ!!」
ボクは笑った。
「…そうだねぇ…。…それもなかなかに面白いかもしれないね…!!」
ボクは舌舐めずりをする。今、目の前にいる老人・ドクターマンよりもおぞましい考えが、ボクの頭の中をグルグルと回っていたからだった。