ヒーローが戦闘員に陵辱される抒情詩 第1楽章 第5話

 

「ぐはあ…ッ!!

 その時、ブルースリー・南原竜太は辺り一面が真っ白な空間に連れて来られていた。最強メカクローン3体に担がれていた体は無造作に投げ捨てられ、地面に叩き付けられた。

「…ぐ…ッ、…うううう…ッッッッ!!!!

 彼の体を激しいダメージから守っていたバイオスーツは既にその機能を失っている。最強メカクローンの自爆と共に大ダメージを負ったそのスーツはあちこちが裂け、焦げ付き、回路が剥き出しになっている。言い換えれば、生身の人間と同じと言うことだ。その状態で地面に叩き付けられれば、ダメージも半端ないと言うことだ。

 もちろん、彼の場合はその前に与えられた大ダメージもあるのだが。

「…こ…こは…?」

 ヨロヨロと立ち上がると、南原は辺りを見回した。そしてすぐに、

「…うう…ッ!!

 と呻いたかと思うと、ブルースリーのマスクの耳の部分を両手で覆った。

「…凄く…、…静かだ…。…空気の…、…キィンと言う音が聞こえるようだ…」

 だが、そんな彼の刹那の感動は一瞬にして打ち砕かれた。

 ガシャンッ!!ガシャンッ!!

 あの忌まわしい、一定のリズムが聞こえ始めた時、南原はぎょっとした表情でその方向を見た。

「…メ、…メイスン…ッ!?

 ガシャン、ガシャンと言う一定のリズムを刻み続けるメカクローンが大量にいる。そして、その中にニヤニヤと不気味な笑みを浮かべ、ゆっくりと近付いて来る中年の男。新帝国ギア幹部ビッグスリーの1人、メイスンだ。

「南原竜太。閉鎖空間にようこそ」

 恭しくお辞儀をするメイスン。だが、その目はギラギラと光っている。

「…こッ、…ここはどこだッ!?

 ブルースリーのマスクの割れたバイザーから見える南原の瞳は動揺と恐怖が浮かんでいる。

「ここはドクターマン様がお創りになられた閉鎖空間。そして、ここがお前の墓場となるのだッ!!

 さっきまでの狡猾な笑みはすっかり消え失せ、ギラリとした大きな瞳が南原を睨み付けている。だが、南原も負けじと、

「…だッ、…だったらッ!!…ここから脱出してやるッ!!

 と怒鳴り、

「はあッ!!

 と体を大きく屈め、左足を膝から折り曲げて大きく前へ出し、右足は伸ばした状態で後ろへ。そして、右手を大きく前へ突き出した。

「攻撃ッ!!メカクローンッ!!

 メイスンの大きな声がその真っ白な空間に響き渡ったその時、

 ガシャンッ!!ガシャンッ!!

 と言う音を立てて、大量のメカクローンが一斉に動き出した。

「行くぞオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!

 ボロボロのスーツ姿のまま、その大量のメカクローンに飛び掛かって行く南原。

「はああああッッッッ!!!!

 1体のメカクローンに飛び掛かり、大きく投げ飛ばす。

「てやああああッッッッ!!!!

 大人数で飛び掛かって来たメカクローンの足元に竦み、一気に飛び上がってそれらのメカクローンを弾き飛ばす。

「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!

 火事場のバカ力とはこのことを言うのではないかと言うほど、今の南原はボロボロの状態でも相当のパワーを発揮していた。

「…ククク…!!

 そんな南原を、ドクターマンはモニター越しにほくそ笑みながら見つめていた。

「戦え、ブルースリーッ!!力の限りッ!!そして、お前の持つ能力の全てを我々に教えるのだッ!!

 攻撃が読まれると言うことにも気付かず、南原は無我夢中で戦い続けている。

「バイオッ、パンチッ!!

「パンチ力、2000kg

 ドクターマンのもとにあるコンピューターに数値が表示される。

「バイオッ、キィィィィックッ!!

「キック力、3500kg

「…ほう…。…随分と出るものだな…」

 ドクターマンが感心して言う。

「…だが、最強メカクローンと戦う時、ヤツは更なる力を引き出すであろう…!!

 

「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!

 その頃、南原は肩で荒い呼吸を繰り返していた。

「…クソ…ッ!!

 南原の周りには薙ぎ倒したメカクローンがあちこちに転がっていた。

「…ククク…!!

 メイスンがニヤニヤと笑っている。そして、その背後にはあの最強メカクローン3体が。

「…ブルースリー。今度はこの最強メカクローンがお前の相手だ。全力を出さない限り、お前に勝ち目はない!!

 まるでドクターマンの心の内が分かっているかのような言い方をするメイスン。ドクターマンに一番近いビッグスリーと言ったところか。

「やれッ!!

 メイスンが大声を上げた時、メッサージュウの能力を持っているメカクローンが物凄い勢いで飛び掛かって来た。そして、そのまま南原に体当たりしたのだ。

 ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!

 物凄い衝撃と共に、

「ぐはああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と、南原は悲鳴を上げて吹き飛ぶ。そして、そのメカクローンは両手で南原の首を絞め上げた。

「…ぐ…ッ!?

 息が出来ない。

「…お…、…おおおお…!!

 そのまま釣られるようにして立ち上がった時、そのメカクローンの口から蒼白い靄のようなものが吐き出された。そして、それが南原の体を包み込んだその瞬間、激しい電流と共に頭が割れるような感覚に襲われた。

「うがああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 至近距離から食らう超音波サイクル。

「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 両手で頭を抱え、ブンブンと左右に振ることくらいしか出来ない。

「やッ、止めろオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 その時、そのメカクローンは南原をブンと言う音と共に放り投げた。

「ぐわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 地面をゴロゴロと転がる南原。

「どうした、ブルースリー?本気で戦わないのか?」

 メイスンがニヤニヤと笑っている。

「本気で戦わなければ、お前は死ぬのだぞ?」

「…く…っそ…オオオオオオオオ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!

 ブルブルと体が震える。そして、握り締めている右拳がギリギリと音を立てた。

「次はこのメカクローンだ!!

 メイスンがそう言った時、今度はサイゴーンの能力を持っているメカクローンがゆっくりと前へ進み出たかと思うと、右手をグンと突き出した。その途端、

「うぐ…ッ!?

 と言う呻き声と共に、南原の体がその場で硬直したのだった。

 

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