ヒーローが戦闘員に陵辱される抒情詩 第1楽章 第7話
「…う…、…ん…」
どのくらい時間が経っただろう。ブルースリー・南原竜太の瞳がゆっくりと開いて行った。
「…こ…、…こは…?」
白い靄の中に放り出され、その冷たい地面の上に大の字に寝転がっていた。だがすぐに、
「…ッッッッ!!!?」
と、何かを思い出したかのように目を見開き、ガバッと起き上がった。
「…そうだ…!!…オレは、メイスンとメカクローンに捕らわれて、ここに…」
南原は立ち上がると、改めて周りを見回した。しんと静まり返り、キィンと言う空気の流れる音が聞こえる。そのあまりの静けさに、
「…み、…耳が…、…痛くなりそうだ…!!」
と言うと、咄嗟に両耳を塞いだその時だった。
「…あれ?」
違和感を覚え、ゆっくりと体を見回した。そして、
「…な…ッ!?」
と短く呻いたのだ。
「…オッ、…オレ…ッ!!…変身が解けてる…!?」
そう言った時だった。
ガシャンッ!!ガシャンッ!!
一定のリズムを刻むあの忌まわしい音が聞こえ始め、南原は思わず身構えた。
「…ククク…!!」
遠くからゆっくりと歩いて来る新帝国ギアの幹部ビッグスリーの1人・メイスン。
「目が覚めたか、南原竜太ッ!!」
中年の風体のメカ人間がニヤニヤと笑っている。その目はギラギラと輝き、今にもブルースリー・南原竜太と言う獲物を捕らえようとしているかのようだ。
「…こッ、ここから出せッ!!オレを解放しろオオオオッッッッ!!!!」
南原は顔を真っ赤にして怒鳴る。だがメイスンはフンと鼻で笑うと、
「ならば、全力で戦えッ、南原竜太ッ!!ブルースリーに変身し、ここにいる最強メカクローン3体を倒すことが出来たのなら、ここから解放してやろうッ!!」
と大声で言った。
「…よぉし…ッ!!」
そんなメイスンの挑発にまんまと乗ってしまった南原はカッとなり、両腕を頭上へ掲げた。そして、
「ブルーッ、スリーッ!!」
と叫び、その両腕を胸の前まで下ろした。その途端、南原の体が眩く輝き、光沢のある鮮やかな青色を基調としたスーツに身を包まれていた。
「…ッ!?…スーツがッ、直ってるッ!?」
「…ククク…!!」
その光景をモニター越しに見つめていたドクターマンが低く笑う。
「そうだ、ブルースリーッ!!貴様が全力で戦うために、そのスーツを元通りにしてやったのだ!!」
「…まぁ、そうしたのはボクだけどね…」
ボクはドクターマンをちらりと見下ろして言うと、
「フンッ!!」
とドクターマンは言った。そして、ボクの言葉を無視するかのように、
「さあッ、戦えッ!!お前がフルパワーで戦った時の能力を、我々に教えるのだッ!!」
と言った。
「行くぞオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
南原の頭の中は今、この閉鎖空間から脱出することだけを考えていた。
「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
いつもよりも雄叫びを上げ、その動きも大きくなっている南原。その体が、その腕が、その脚が動くたびに光沢のある鮮やかな青色のスーツがキラキラと輝く。
「バイオッ、パァンチッッッッ!!!!」
「パンチ力2500kg」
ドクターマンが見つめるモニターに数値が表示される。
「バイオッ、キィィィィックッッッッ!!!!」
「キック力4000kg」
「…素晴らしい…!!」
数値が次々と表示されるのを見ながら、ドクターマンは目を輝かせた。
「…フフッ!!」
その時、ボクは別の意味で笑っていた。
(…もうすぐだ…!!)
思わず舌なめずりをする。
(…もうすぐ…、…あの最強メカクローンが…!!)
「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
無我夢中な南原。その戦闘能力が読み取られているとも気付かずに…。
その時、大量のメカクローンが南原に一気に押し寄せて来た。
「それええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
南原は、そんなメカクローン達を一気に薙ぎ払い、あっと言う間に粉々に破壊し尽くしてしまった。
「破壊力4500kg」
ドクターマンのモニターに数値が表示された。
「…そろそろ…、…か…」
ニヤリとすると、ドクターマンはモニター越しに声を掛けた。
「メイスンッ!!もうブルースリーに用はないッ!!必要なデータは頂いたッ!!」
「…データ…、…だと…!?…まッ、まさかッ、オレの戦闘能力を調べているのかッ!?」
その声は南原にも聞こえていた。するとメイスンは、
「…ククク…!!」
と笑ったかと思うと、
「そうだ。貴様をメカクローン達と戦わせ、そのスーツによってどのくらいの力が引き出されるか、また、大ダメージを与えてもそのスーツによってどのくらい体が守られるのか、そして、そんな大ダメージからどのくらいの時間で貴様の体が回復するのかまでを全て、ドクターマン様がお調べになられていたのだ!!」
「…そッ、…そのためにッ、オレにとどめを刺さなかったのか…!?」
今頃、気付いても遅すぎる。ブルースリーのマスクの中で、南原の表情は文字通り、真っ青になっていた。
その時だった。
「うぐッ!?」
その時、南原は自分の体が金縛りにあったかのように動かなくなったのを感じた。いや、実際には背後から何者かに羽交い絞めにされているような感覚に陥っていた。
「…ぐ…ッ、…うううう…ッッッッ!!!!」
その時、背後でメカクローンが姿を現した。そして、そのメカクローンが右手に持っていたレイピアの鋭い剣先が南原の胸に突き刺さった。その瞬間、
バリバリバリバリッッッッ!!!!
と言う物凄い衝撃と共に、体中に激しい電流が流れた。
「うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
南原の体が激しく痙攣し、ガクガクと震える。
「…メッ、…メッツラーの…ッ、…能力を持つ…、…メカクローン…か…ッ!?」
その時、そのメカクローンは南原の体をぱっと離した。
「あうッ!?」
不意にバランスを失い、前のめりに倒れ込む南原。そんな南原に更に追い打ちをかけるように、メッサージュウの能力を持ったメカクローンがズカズカと足音を響かせながらやって来ると、南原の首を物凄い力で絞め上げ始めたのだ。
「…お…ッ、…ご…ぉ…ッ!!」
息が出来ない。体中に力が入らない。
「…どうする…ッ!?」
何とかしてここから脱出したいのに、それも出来ない。
「…どうすれば、…いいんだ…ッ!?…このままでは…ッ、…バイオマンの戦闘マニュアルが…ッ!!」