ヒーローが戦闘員に陵辱される抒情詩 第2楽章 第0話
その時、ボクはヨドンの拠点に帰って来ていた。
「…ふ〜ん…」
ボクが手にしている1冊の本。人間共に言わせれば、コミック本と言う部類に入るらしい。
「…男同士の恋愛…か…。…くっだらな…!!」
恋愛、ねぇ。人間と言うのは、本当に愚かと言うか、低俗な種族と言うか。
「…しかも、同性で恋愛なんて…」
あり得ない。物好きな者もいるものだ。男とか、女とか。そもそも、誰かを好きになるなんて。
「…プッ!!…アハッ!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
あまりに滑稽すぎて笑えて来た。でもすぐにピタッと笑いを止めると、
「…今の使い方で、合ってるのか?」
と独り言を言った。
「…そう言えば、キラメイジャーの中でもこれに近いヤツらがいるな…」
キラキラと眩しいほどに輝くキラメイジャー。ボク達ヨドン軍の敵。その中でもキラメイレッドは類希なる想像力の持ち主で、閃いたことを具現化し、次々とボク達ヨドン軍の邪魔をする。
「…そして…」
そんなキラメイレッドを支え、守るのがキラメイイエロー。この2人がタッグを組むと最強になる。
「…まさか…!?」
まさか、キラメイレッドとキラメイイエローは、このコミック本のようなことを夜な夜なしているのか…!?
「…プッ!!…アハッ!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
体を仰け反らせて笑い転げるボク。
「…くっだらな…!!…滅茶苦茶、…くっだらなすぎる…ッ!!」
目から涙が零れて来た。
「…ヒィ…ッ、…ヒィ…ッ!!」
息が出来ない。
「…に…、…人間ごときが…ッ!!」
愛だの友情だの仲間だの、虫唾の走ることばかり言う。
「…でもまぁ、それが人間共にはお似合いだ。…それにしてもこの本がどうしてここに…?」
まぁ、だいたい察しは付く。物好きなヤツがこのヨドン軍にいるとしたら、アイツしかいない。
「ああああ〜〜〜〜ッッッッ!!!!ヨドンナああああッッッッ!!!!」
と思ったら背後から大声。
「おおおお、お前ッ!!また私のモノを勝手に持って行きおってええええッッッッ!!!!」
「…はぁ!?」
思わずムカッと来て、ボクは眉間に深い皺を寄せて思い切りその声の主・クランチュラの方を振り向いた。その途端、
「ひぃぎぃやああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、クランチュラが声を上ずらせて悲鳴を上げた。
「うるさいッ!!何だッ、いきなり悲鳴を上げてッ!?」
「…ヨ、…ヨ…、…ヨ…」
「だからッ、何だって聞いてるんだッ!?」
いちいちイライラするヤツだ。今度、ヨドン皇帝にお願いして消してやろうか…!!すると、クランチュラは手にしている大きな杖を私に突き出すようにした。
「…な、…何だ…!?」
その鏡のように姿を映し出している部分に移ったボクを見て、
「…あ…」
と、ボクは言葉を失った。
「…ヨッ、ヨドンナああああッッッッ!!!!お前ッ、鼻血が出てるじゃないかああああッッッッ!!!!いいいい、一体ッ、何を読んだんだああああッッッッ!!!?」
クランチュラはそう言うと、ボクが手にしていたコミック本を取り上げた。
「…ボクが…!!」
心の奥底から湧き上がって来る感情。ゴゴゴゴ、と言う音が聞こえそうなほど、ボクの体が熱くなる。
「…ボクが…!!…このボクが、…は、…鼻血…!?」
「おおおお、お前ッ、このコミック本を読んで興奮したって言うのかッ!?」
クランチュラはそう言うとニヤリと笑った。
「…ま、…まぁ、この作品のストーリーはとても耽美だからな。見た目にも美しい男2人がお互いの体を重ね合い、本能の赴くままに快楽を貪る。お互いがお互いを思いすぎるがゆえ、その行為は回を重ねるごとにますます激しくなって行き…」
「うぅわああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「ひぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
思わず大声で叫んでいた。その声に驚いたのか、クランチュラも悲鳴を上げ、背後へひっくり返る。
「…人間ごときが…ッ!!…人間ごときがああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
人間ごときが、このボクに鼻血を出させるなんて…!!
「…あ…」
その時、ボクは思い出したことがあった。
「…ど…、…どうした…?」
ビクビクしながらクランチュラがボクに聞いて来る。
「…そう言えば、…過去にもそんな戦隊ヒーローがいたな…」
「…は?」
クランチュラは訝しそうにボクを見ている。
悪魔に魂を売った親友を必死に救う戦隊ヒーロー。一度は闇に堕ちたその親友を救った時、いや、その前からこの2人にはそう言う感情が芽生えていたはず。悪魔に魂を売った優等生な親友と、その親友を救おうと戦隊ヒーローになり、戦う熱血漢な友。
「…ふ〜ん…」
「お、おい、ヨドンナ?」
ボクがニヤニヤしていたからだろう。クランチュラが思わず声をかけて来た。
「おい、クランチュラ!!」
「…なッ、…何だッ!?」
ボクが突然名前を呼んだからだろう。驚いたクランチュラが返事をした。
「ちょっと出かけて来る」
「ど、どこへ?」
「過去さ」
「…ふむ、…過去…、…って、ええええええええッッッッッッッッ!!!!!!??」
二度見するとはこう言うことなのかと分かるほど、クランチュラは一度はボクから顔を背けたかと思うと物凄い勢いでボクを見た。
「…な…、…な…、…何を言ってるんだッ、ヨドンナああああッッッッ!!!?」
「フンッ!!お前には分からなくていい。今、ボクはとってもワクワクしてるんだ…!!」
ウットリとした表情をし、目を輝かせるボク。
「お前が置いておいてくれていたそのコミック本を読んで閃いたのさ。キラメイレッドの言葉を借りれば、『ひらめキーング!』ってヤツか…?」
そう言った時、
「アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、ボクは大声で笑っていた。
「…」
クランチュラは呆然としている。ボクはピタッと笑いを止めると、
「そう言うわけで、行って来るッ!!」
そう言った時、ボクの目の前にどす黒い闇の渦が現れた。
「だッ、だからッ、どこへッ!?」
はっと我に返ったクランチュラが慌てて声をかけて来る。
「…決まってるだろ?」
ボクの体はその時、その黒い闇の渦に半分以上、体を包まれていた。
「…過去の、歴史改変さ…!!」
そう言って、ボクはその黒い闇の渦に消えた。
「…ヨドンナ…」
クランチュラは呆然としている。
「…アイツがウットリとした表情をするなんて…!!」
その時、クランチュラは頬を少しだけ膨らませたかと思うと、
「…おええええ…ッッッッ!!!!…キモッ!!…キンモオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と叫んでいた。