ヒーローが戦闘員に陵辱される抒情詩 第2楽章 第1話
「オブラー!!よ;/くもおめおめと戻って来れたものだッ!!」
広大な闇・宇宙。そこにぽつんと浮かんだ大きな宇宙船・ヅノーベース。ボクがそこに辿り着いた時、大広間では公開処刑並みなことが行われていた。
「命を懸けた作戦を行うと言いながら、あの無様な姿は何だッ!?」
眉と目を吊り上げ、怒鳴り散らしている男。大教授ビアスとか言ったっけ。この宇宙船の主であり、この集団の支配者。この男、中年の風体なのにどことなく若々しさが漲り、妖艶な雰囲気を醸し出していた。
「最早お前など私の弟子ではないッ!!」
物凄い剣幕で怒鳴るビアス。そんなビアスの足元に、見るも醜態なおぞましい姿の元人間が体を震わせて佇んでいる。ドクターオブラー。
「何を仰せられますか、ビアス様ッ!?今一度、今一度だけチャンスをお与え下さい!!」
オブラーは弱々しい声でビアスの足に縋り付く。すると、大教授ビアスは目を更にカッと見開き、
「見苦しいぞッ!!」
と言うと、オブラーを足蹴にした。
「ああああッッッッ!!!!」
勢いで吹き飛ぶその男。すると、周りにいた者達が彼を見下すように鼻で笑った。
「…ククク…ッ!!」
いかにもナルシスト的な青い服を身に纏った男が笑う。ドクターケンプとか言ったっけ。
「…オブラー。所詮、貴様は我々天才とは格が違うと言うことだッ!!」
「…な…に…ッ!?」
オブラーがケンプを睨み付ける。すると、ケンプの横にいた赤い服を身に纏った女性・ドクターマゼンダがあからさまに侮蔑する態度でオブラーを見下ろした。
「お前は天才なんかじゃない。ビアス様にお情けでボルトへ入れて頂いた、言ってみれば、落第生なのよ!!」
その時だった。
「…黙れ…!!」
オブラーはわなわなと体を震わせていたかと思うと、
「黙れッ!!黙れ黙れ黙れええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と喚き散らし、物凄い勢いで立ち上がった。
「…僕は…。…僕は…ッ!!…落ちこぼれなんかじゃないッ!!落第生なんかじゃなああああいッッッッ!!!!」
「…オブラー…?」
その時、オブラーはビアスを睨み付けていた。
「…大教授ビアス様…ッ!!…最早、信じては下さらないかもしれませんが…。…もう一度、…もう一度だけ、チャンスを下さい…!!…宿敵ライブマンを内部から分裂させ、必ずや葬り去ってご覧に入れますッ!!」
すると、
「ああ、もう、しつこいしつこいッ!!」
と、金髪の男性がうんざり気味に声を上げた。ドクターアシュラだったっけ。
「お前はなぁ、ビアス様より落第のレッテルを貼られたんだ!!ここにいる必要はないってことなんだよッ!!分かったら、ほら、さっさと消えろッ!!」
「うるさいッ、アシュラッ!!」
物凄い剣幕のオブラーに、ビアスをはじめ、ケンプ、マゼンダ、アシュラがビクリとする。
「…僕は…ッ、…落ちこぼれなんかじゃないと言っているだろうッ!?」
その時だった。オブラーはアシュラを睨み付け、
「貴様みたいなクズに言われる筋合いはない!!」
と言ったんだ。
「んだとオオオオッッッッ!!!!」
カッとなったアシュラがオブラーに掴み掛かろうとしたその時だった。
「いいだろう」
突然、ビアスの声が響き渡る。
「…ビアス…様…?」
静かに微笑んでいるビアス。その目はオブラーを信用しているのか、していないのか、よく分からない瞳をしていた。
「…そこまで言うのであれば、やってみるが良い」
「…はい…ッ!!」
そう言うと、オブラーはヅノーベースの広間を出て行った。
「…ふぅぅ…」
物陰からその様子を見ていたボクは大きな溜め息を吐くと、
「んじゃ、歴史改変を始めようか…」
と呟く。
「…ターゲットは、ドクターオブラー。アイツの心の中にいるヒーローを使って…!!」
その時、ボクはニヤリと笑い、舌なめずりをしていた。
「おのれええええッッッッ!!!!」
ボクが彼の後を付けて彼の部屋の前に辿り着いた時、物凄い叫び声と共に、
ガシャアアアアンンンンッッッッ!!!!バリイイイインンンンッッッッ!!!!
と言う、何かが床にばら撒かれ、何かが割れるけたたましい音が聞こえて来た。
「…どいつもこいつも、僕をバカにしやがってええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
荒々しく息をし、部屋中を行ったり来たりするオブラー。その姿は今、さっきまでの醜悪な姿ではなく、人間の姿に戻っていた。黒いタキシードのような服を羽織り、その首元には大きな蝶ネクタイ。
「僕は落ちこぼれなんかじゃないッッッッ!!!!僕は、ビアス様に認められて武装頭脳集団ボルトに入ったんだッッッッ!!!!僕だってやれることをケンプやマゼンダに認めさせるんだああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その時だった。
オブラーはツカツカとデスクへ向かうと引き出しを乱暴に開け、その中から1枚の写真を取り出した。暫くそれをじっと見ていたオブラーが、不意に、
「…丈…」
と呟いた。その写真には、オブラー自身ともう1人、程良くガッシリとした体型のひょうきんそうな表情の男性が写っている。
「…丈…。…丈…ッ!!」
いつの間にか、オブラーはその写真をウットリとした表情で見つめていた。その指が写真の中の丈の頬、体、そして、真っ白なスウェットズボンに包まれた2本の足の付け根をそっと撫でていた。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
オブラーの呼吸が荒々しくなり、顔を紅潮させる。
「…助けてよッ、…丈…ッ!!…君が、…僕の傍にいて、僕を守ってくれればいいんだ…!!」
「それ、ボクが手伝ってあげようか?」
その声にオブラーはビクリと体を跳ねらせたかと思うと、
「誰だッ!?」
と言って、ボクの方を振り向いた。
「…お前…ッ、…誰だ…ッ!!」
「フフン」
ボクはニヤニヤと笑い、オブラーへ近付いて行く。
「どうやらキミは、その男・イエローライオンに惚れているようだからねぇ…」
そう言うと、ボクはオブラーをチラリと見た。ボクの予想通り、目を見開いて驚いた表情をしている。
「…お前…。…どうして、…それを…!?」
「アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ボクは体を仰け反らせて大声で笑う。
「その表情は図星を指されたからなのかな?それとも、ボクがイエローライオンのことを知っていたからなのかな?」
それも束の間、ボクは真顔に戻ると、
「いや、そのどっちもだな」
と言ってやる。
「ボクは未来からやって来たんだ。お前がこの後、どのような運命を辿るのかも、ボクは知ってるんだ」
「…ッッッッ!!!!」
運命と言う言葉に、オブラーは体を硬直させる。
「あ〜あ、かわいそうにねぇ…。…キミは落第生のレッテルを貼られたまま、ここを追われることになっちゃうねぇ…。…それに、…ここを追われても、キミは他の仲間達に命を狙われ続けるんだ…」
そう言いながら、ボクはオブラーの背後へゆっくりと歩み寄る。彼は微動だにしない。
「…もし、…キミの大好きなイエローライオンがキミのものになったら、キミの運命は大きく変わる。…それに、キミだけのイエローライオンが、キミを永遠に守ってくれるんだ」
「…丈が…、…僕を…?」
「そう」
囁くように言うと、ボクはオブラーの前へ回る。
「イエローライオンがキミだけのものになったら、キミは彼に望むことをたくさんしてもらえる。どんなことだってしてくれる、キミだけのヒーローになるんだ。素敵だと思わない?」
オブラーの視線がきょときょとと忙しなく動いている。
(もう少しだ…!!)
ボクはニヤリと笑うと、
「…キミには後がないんだよ?どうせ、このままだったら、キミは確実にここから追い出される。いや、追い出されるだけじゃなく、様々な秘密を握ってるって言うんで、確実に…」
と言い、首に右手を持って行くと、指先を後ろから前へスッと引いた。
「…ッッッッ!!!?」
そんなボクの仕草に、オブラーは再び体を強張らせる。
「…だから…、…さ…」
ボクはニヤリと笑うと、
「…一緒に、…イエローライオンをキミだけのものにしてあげるよ…!!」
と言ったのだった。