ヒーローが戦闘員に陵辱される抒情詩 第4楽章 第4話
「…こ…ッ、…ここが…ッ、…ゴーマ宮…ッ!?」
異次元の世界。まだ昼間の時間だと言うのに、空は夕暮れのように真っ赤で、その空に大きな球体が何個も浮いていた。そして、その間に一際存在を目立たせるように、逆三角形の宮殿があった。
「…さっすが、ゴーマ宮って感じだな。あの大きな目。あの大きな目が、誰も寄せ付けようとしないくらいに禍々しいオーラを放ってやがる…!!」
テンマレンジャーの変身を解いた将児が唖然とした感じで言った。
「あれがゴーマの粋を集めた建造物だ。ダイ族と戦って得た妖力を使い、あのゴーマ宮の周りには結界が張られているんだ。でも、俺はゴーマ宮の出身。簡単にあの中に入ることが出来る」
コットポトロが静かに言う。
「…どんなに戦ったって、何にも変わりはしないのに…」
「一つの力を二つに分け、お互いが争いながら永遠に生きて行く。これ即ち、人間の宿命なのだ。妖力が滅べば、気力も滅ぶ。気力が残れば、妖力もまた残る。全てが虚しい戦いなのだ…」
その時、将児は道士・嘉挧の言葉を思い出していた。
「…気力が残れば、…妖力もまた残る…。…全てが虚しい戦い…」
「…え?」
ぶつぶつと呟く将児に対し、コットポトロが思わず聞き返す。だが将児は、
「いや、何でもねえ」
と言うと、
「行くぞッ!!」
と大声で言い、コットポトロの先導で先を急いだ。
ゴウウウウンンンン、ゴウウウウンンンン…。
何かの駆動音が聞こえるのと同時に、澱んだ空気が宮殿の中を漂っている。足元には冷気が漂い、吹き抜けの天井が高い位置にあった。
その時、将児の横を黙って歩いていたコットポトロの顔が心なしか青ざめ、震えているように見えた。
「心配すんなって!!」
そんなコットポトロを見て将児は明るく言うと、コットポトロの肩をぽんと叩いた。
「お前のことは、オレが必ず守るからよ!!」
「…将児…」
その時だった。
ズザザザザ…!!
いくつもの足音が聞こえ、将児は思わず身構えた。
「…ヒイイイイッッッッ!!!!」
コットポトロは悲鳴を上げる。目の前には大勢のコットポトロが襲い掛かって来ていたのだ。
「てめえらアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!こいつにゃあ、指一本触れさせねえぜッ!!」
将児が威勢よく啖呵を切る。そして、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と雄叫びを上げ、そのコットポトロの大群の中に突っ込んで行った。
「はああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ドガッ!!バキッ!!バシバシッッッッ!!!!
さすがに喧嘩慣れしているだけある。その腕が、その拳が、その脚が、コットポトロの大群を次々に薙ぎ倒して行く。
だが。
「…く…っそ…オオオオオオオオ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
多勢に無勢。少しずつ押され始めていた。
「ああああッッッッ、もうううううッッッッ!!!!キリがねええええッッッッ!!!!」
すると、将児は両手首に付けたオーラチェンジャーを振り翳した。そして、
「気力転身ッ!!オーラッ、チェンジャアアアアッッッッ!!!!」
と叫び、右手のオーラギャザーを左手のオーラスプレッダーに挿し込んだ。その途端、将児の体を眩しい光が包み込んだ。
「テンマレンジャーッ!!天重星ッ、将児ッ!!」
テンマレンジャーの光沢のある鮮やかな青色のスーツ。上半身は真っ白で、体の中心を金色のラインが通っている。そのマスクは一角獣のデザインが施されていた。
「ダイレンロッドオオオオッッッッ!!!!」
その時、将児は両手に長い棒状の武器であるダイレンロッドを握り締めていた。
「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!」
将児はダイレンロッドをブンブンと大きく回すと、
「はいいいいいいいいッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「おりゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、襲い来るコットポトロを薙ぎ払って行く。
「ギイエエエエエエエエッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「グギャアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
コットポトロ達は不気味な悲鳴を上げてあちこちへ吹き飛ぶ。
「…ヒイイイイッッッッ!!!!」
その時、将児と一緒にゴーマ宮へやって来たコットポトロが悲鳴を上げていた。数体のコットポトロが彼に襲い掛かっていたのだ。
「させるかああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そう叫んだ時、テンマレンジャーのマスクの一角獣の目が光った。
「天重星ッ、回転蹴りイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
将児がそう叫んだ途端、その右足が眩い光に包まれた。そして、クルクルと体をスピンさせながら回転蹴りを食らわせる。
「ギイエエエエエエエエッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「グギャアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その勢いで、コットポトロ達は次々に吹き飛び、壁や地面に体を打ち付け、ピクリとも動かなくなった。
「…ふぅッ!!」
将児は大きく溜め息を吐くと、
「大丈夫か?」
と、一緒にゴーマ宮にやって来たコットポトロに声をかけた。そして、ゆっくりと彼に近付いたその時だった。
ガタンッ!!
突然、音が聞こえたかと思ったその瞬間、将児は体がふわりと宙に浮いたような感覚を覚えた。
「…え?」
目の前にいるはずのコットポトロが視界から消えて行く。代わりに視界に飛び込んで来たのは真っ暗な闇だった。
「…ううッ、…うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
落ちて行っている、そう気付いた時、将児は悲鳴を上げていた。
その時、将児は自身の落ちて行く先に、冷たく銀色に光る長い棒のようなものがあることに気付いた。
「…や…」
ヤバい、と思った時、その長い棒を跨ぐように、将児の体は落ちて行っていたのだ。そして、
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
と言う鈍い音が聞こえたその瞬間、
「――――――――ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、将児は声にならない声を上げていた。そして、ドサッと言う音と共に、その場に崩れ落ちたのだ。
「…あ…、…あぐ…ッ!!…ご…ッ、…おおおお…ッッッッ!!!!」
テンマレンジャーのマスクの中で、将児は目を見開き、腹の奥底から込み上げて来る不快な感覚を懸命に耐えていた。
「…がは…ッ、…が…ッ、…ぁぁぁぁ…!!」
顔中に脂汗が噴き出す。呼吸が止まりそうな、何とも言えない感覚。
「…ぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
将児は絶叫し、自身の股間を押さえて地面の上をゴロゴロと転がっていた。
と、その時だった。
「ギャーッハッハッハッハ…!!」
突然、下衆な笑い声が頭上から降り注いだ。
「罠にかかったなァ、テンマレンジャアアアアッッッッ!!!!」