ヒーローが戦闘員に陵辱される抒情詩 第5楽章 第0話
ゴウウウウンンンン、ゴウウウウンンンン…。
息も出来ないほどの暗雲が立ち込める世界。凶悪な思念と絶望が覆う闇世界。ヨドンヘイム。
「…ふぅぅ…」
今、ボクは自分の部屋で、闇エナジーをたっぷりと集めたティーを飲んでいた。
「…疲れたな…」
このところ、過去の世界へ行き、歴史を改変している。肩がパンパンに凝り、ボクは思わずそこを揉んでいた。
「…それにしても、たくさんの戦隊ヒーローと言うものがいたものだ…。…しかも、揃いも揃ってこの世を支配しようとする連中はみんな滅ぼされて行く…。…まぁ、それもこれも、戦隊ヒーロー達の仲間の絆とか、奇跡の大逆転とかのせいなんだけど…」
そこまで言って、ボクは体を強張らせた。
「…仲間…。…奇跡の大逆転…」
ボクの体に虫唾が走る。ボクが一番大っ嫌いな言葉だ。
「…プッ!!…アハッ!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
甲高い声を上げてひとしきり笑う。そして、ムスッと表情を変え、
「…くっだらな…!!」
と言うと、
「…さて…。…次はどの時代へ行こうか…?」
と、静かにティーを飲もうとしたその時だった。
ギイイイイイイイイッ!!ギイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!
「ぶッ!!」
突然、歯が浮くような、まるでガラスを鋭いもので引っ掻くような、鳥肌が立つような物凄い音が聞こえ、ボクはティーを吹き出し、ゲホゲホとむせ返った。
「…な…、…んだ…ッ!?」
かなり近いところから大音量で聞こえる不快な音。
「…ぁぁぁぁあいつらああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
せっかくの闇エナジーをたっぷりと集めたティーが入ったカップを乱暴にテーブルの上に叩き置くと、ボクはズカズカとその音がする方へ向かって歩いて行った。
「我ながらサイッテーな演奏ッ!!地球のやつら、私の演奏が流れているとは思うまいッ!!」
クランチュラがバイオリンを持ち、普段から赤い顔を更に赤くし、目をキラキラと輝かせて弾いている。その下手くそな演奏がギイギイと不協和音を奏でていたのだ。
「うるっさああああああああいいいいいいいいッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ボクは両耳を押さえ、物凄い顔をしてクランチュラに近付いた。だがクランチュラは、
「おっ!!ヨドンナッ!!」
と言うと、
「どうだ、私の演奏は?」
と聞いて来た。
「下手くそッ!!」
即答。だが、クランチュラはフフンと笑い、
「それでいいんだ!!このサイッテーな演奏が、地球人から闇エナジーを一気に集めるのだ!!」
と言った。
「今、地球にはスピーカー邪面を送り込んである。スピーカー邪面のアンテナが私のこのサイッテーな演奏を受信し、それをスピーカーで増幅して大音量で流すのだ!!その振動でビルをも破壊するほどになあッ!!」
その時だった。
パン、パン、パン…。
乾いた拍手が聞こえ、ボクとクランチュラは思わずその方向を見た。
「お前の酷い音楽、なかなかいいじゃないか!!」
ガルザがその真っ赤な目をギラリとさせて歩いて来た。するとクランチュラは、
「だろ?」
と得意げに言うと、
「…さて…。スピーカー邪面の準備がまた整ったようだ。それでは、改めまして…」
と言いながらバイオリンを顎で挟んだその時だった。
ギュイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
「うひゃッ!!」
その衝撃音にクランチュラはビクリと肩をすくめる。
「こッ、今度は何だッ!?」
ボクも思わずまた両耳を塞いでいた。
「俺にやらせろ…!!」
「「…え?」」
その言葉に、ボクとクランチュラは同時に声を上げた。
ガルザは今、エレキギターを持って得意げに立っていたのだ。すると、
「ええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!?」
と、クランチュラが素っ頓狂な声を上げた。
「ガルザッ、弾く気なのおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!?」
すると、ガルザはフンと笑い、
「俺のジャメンタルを乗せて弾けば…」
と言ったその瞬間、ガルザの目がギラリと真っ赤に光り、その体から強烈なジャメンタルが爆発した。
「より強力なサウンドになるッ!!」
ギュイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
クランチュラとボクが同時に悲鳴を上げる。
「…ジャ、…ジャメサウンドは…ッ!!…えっぐうううういいいいッッッッ!!!!」
クランチュラがのたうち回る。
「…こッ、…こんなとこ…ッ!!」
ボクは何とかしてこの場から逃げようとしていた。だが、ガルザのジャメンタルの力が余りに強く、
「…うう…ッ!!…うわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、両耳を塞いだまま、悲鳴を上げた。
「さあッ!!俺の音を聞けええええええええいいいいいいいいッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ギュイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
超ノリノリのガルザは相変わらず下手くそなギターを奏で続ける。
「おうおうッッッッ!!!!うおおおおッッッッ!!!!」
「…ったく…。…そのくらいノリノリで…、…キラメイジャー共も倒せよ…ッ!!」
そう言った時、ボクの頭の中に何かが駆け巡った。
「…ノリノリ…?…エレキギター…?」
確か、過去の世界でこうやってエレキギターを掲げ、狂ったように演奏したかと思えば、ピアノを静かに奏でる幹部クラスのやつがいたっけ。
「…そうだ…」
その時、ボクの目がキラキラと輝いていた。
「…そうだ!!…次は、その世界へ行くとしようッ!!」
だがすぐに、ボクははたと立ち止まった。
「…いや…。…待てよ…」
その幹部は、確か、言葉遣いが女性っぽかった。
「…オカマ…?」
眉間に皺を寄せるボク。だがすぐに、
「…んま、どうでもいいっか。歴史を改変することが出来るのなら、別に相手が誰だろうと、構うもんか…!!」
と言い、
「アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と高らかに笑うと、そこから姿を消した。
ギイイイイイイイイッ!!ギイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!
ギュイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
その頃になると、クランチュラとガルザが超ノリノリでお互いに下手くそなエレキギターとバイオリンを奏でていた。
「どうだあッ、ガルザああああッッッッ!!!!私のバイオリンのサイッテーな演奏はああああッッッッ!!!?」
「おうおうッッッッ!!!!おおおおううううッッッッ!!!!」
そのけたたましい音は、いつまでも鳴り響いていた。