ヒーローが戦闘員に陵辱される抒情詩 第5楽章 第2話
「サスケええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
鬱蒼と茂る森の中。ザッザッ、と言う落ち葉を蹴る音と共に、1人の男のやや高めの声が聞こえる。
「どこだああああああああッッッッッッッッ!!!!!!??サスケええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
わりと長めの髪、垂れ目。グレーのシャツにチェックのフードと袖が付いた服を身に纏い、薄青色のジーパンを穿いている。
その時だった。
『サイゾウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!!!!!!』
どこからか、別の男の声が聞こえて来る。すると、その垂れ目の男は、顔を綻ばせ、
「サッ、サスケええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!今、どこなのよオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!??」
と叫ぶ。
『分かんねえよッ!!お前こそ、どこにいるんだよッ!?』
「どこって…。…周りは木ばっかで見当付かないのよッ!!」
『とにかくッ、叫びながら走れッ!!どこかで他のやつらに会えるかもしれねぇからなあッ!!』
「分かったッッッッ!!!!」
とは言え、同じような景色の中では、自分自身がどこを走っているかも分かりはしない。
「サスケええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!セイカイイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!ジライヤああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ツルヒメええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その男・サイゾウは首筋に血管を浮き立たせて叫び続けた。
それは、ほんの少し前に起こった。
「近頃、さっぱり妖怪出ないよね。ねぇ、サスケ?」
ネコマルと呼ばれる大きなバス型の乗り物に乗り、サイゾウが呑気な声を上げた。すると、サスケと呼ばれたバンダナを巻いた男がニヤリとすると、
「オレ達が怖くて出て来れないんだよ!!」
と言った。その途端、
「「「「「アハハハハハハハハ…!!」」」」」
と言う明るい笑い声が車外に響いた。
「…フンッ!!」
ネコマルの外にまで響いて来るその声を、ボクと貴公子ジュニアは近くで聞いていた。
「…あの子達…。…随分アタシ達を舐め切ってくれてるじゃないの…!!」
貴公子ジュニアのこめかみに血管が浮き出ている。その体がぶるぶると震えていた。
「まぁまぁ、落ち着きなよ」
ボクはそう言うと、貴公子ジュニアの肩をぽんと叩いた。
「そうやってキミ達妖怪を舐めているやつらには、痛いお仕置きをしてあげないとね」
「お仕置きだけじゃ足りないわッ!!」
ボクの言葉を遮るように、貴公子ジュニアはそう怒鳴ると、手にしていたエレキギターをドスッと地面に突き刺した。
「あの子達の精気を全てしゃぶり尽くし、アタシ達の奴隷にしてやるのよッ!!」
そう言った時、貴公子ジュニアはボクを見ると、
「で?アンタ、アイツらを分断出来るんでしょうねッ!?」
と言って来た。
「フンッ!!」
ボクは鼻で笑うと、
「まぁ、見ていなよ。アイツらに、地獄を見せてあげるからさ!!」
と言い、目を輝かせた。
「…あっれぇ?」
暫くると、ネコマルは乾いた大地の上に停まった。そして、中からサスケ達が出て来た。セイカイと呼ばれる男が周りをキョロキョロと見回しながら困った表情をしている。
「おいおい。冗談じゃねぇぞ。お前、道間違えたのかぁ!?」
眉間に皺を寄せ、明らかに不機嫌顔のサスケがセイカイに詰め寄る。するとセイカイは、
「標識通り、ちゃんと走って来たんだぜ?…おかしいなぁ…」
と言った。
「何だか、気味の悪いところ…!!」
すると、サイゾウは肩をすくめ、顔を蒼ざめさせた。
「…じゃあ…、…行くよ?」
ボクはその時、目を大きく見開くと、口を窄めて前へ突き出した。
フウウウウウウウウ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!
その瞬間、ボクの口からは真っ白な靄のようなものが吐き出され、あっと言う間にサスケ達を包み込んだんだ。
「「「「「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」」」」」
最初は5人分だった声も、気が付いた時にはサイゾウ1人だけの声になっていた。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
そして、今に至る。
「…どッ、どこなんだよおおおおッッッッ、ここおおおおッッッッ!!!!」
サイゾウはひたすら森の中を走っていた。
「…ククク…!!…バカな子ね…!!」
その光景を、ボクと貴公子ジュニアは見つめている。
「…同じところをグルグル回っているだけなのに、あの子ったら、全く気付いていないわ。それどころか、ここにいるドロドロの声を、仲間の声と信じ切っているみたいだし…!!」
いつの間にか、ボクと貴公子ジュニアの横には、あの強靭な肉体を持つドロドロが数人、静かに立っていた。
「…フンッ!!…ヤツは今、完全に冷静さを欠いている、ってところかい?」
ボクが尋ねると、
「まぁ、元からあの子には冷静さは備わっていないのよ。臆病で、何かあればすぐにサスケ、サスケ、って…」
と言った。
「…そう…。…あの子なのね…」
その時、貴公子ジュニアは目をギラリと光らせ、ニタァと不気味な笑みを浮かべた。
「…いいわ!!まずはあの子を、徹底的にしゃぶり尽くしてあげるわッッッッ!!!!」
「…ッッッッ!!!?…こッ、…ここは…ッ!?」
その時、サイゾウは自分がやって来た場所を見て絶句していた。
「…こ、…これ…!!」
目の前の木に引っ掛けられた襷のような長い布の帯。
「…これ…、…迷わないようにって、さっき、巻き付けておいたものなのに…!!」
その瞬間、
「サスケええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!セイカイイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!ジライヤああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ツルヒメええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、サイゾウは叫んでいた。
その時だった。
『…フッ、…フフフフ…ッッッッ!!!!』
『アハハハハハハハハ…!!』
『Oh, nooooooooo!!!!!!!!』
聞き慣れた声が聞こえた。その時、サイゾウは思わず顔を綻ばせ、
「みッ、みんなああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と叫んでいた。
「みんなああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!どこにいるのよおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!?」
『…フッ、…フフフフ…ッッッッ!!!!』
『アハハハハハハハハ…!!』
『Oh, nooooooooo!!!!!!!!』
だが、聞こえて来るのは相変わらず笑い声だけだ。しかもその笑い声は、どこか禍々しい雰囲気を帯びていた。