ヒーローが戦闘員に陵辱される抒情詩 第6楽章 第0話

 

「…はぁ…」

 その日、ボクはヨドンヘイムにある自室で大きな溜め息を吐いていた。

「…疲れた…」

 ゴスロリとか言うファッションの1つのような、毛がいっぱい生えたソファーに体を投げ出し、アンニュイな表情のボク。似つかわしくないと思うのだが、時々、ここに体を投げ出していると少しは落ち着くんだ。

 そもそも、このところ、やけに肩が重い。

「…歴史改変も…、…楽じゃない…」

 過去の世界へ飛び、戦闘員と言う最下級のクラスのやつらを使い、この地球を守って来たとされる戦隊ヒーローのメンバーを陵辱し、その歴史を変えて来た。戦闘員と言っても様々で、機械生命体からロボット、自ら意思を持った者、妖怪などなどがいる。

 でも…。

「…つまらない…」

 何かが足りない。ただヒーローを陵辱するだけで、刺激が足りない。

 確かに、ヒーローが屈辱塗れになり、プライドをもズタズタにされるのはスカッとする。それは、ボクが今の世界でキラメイジャー共と戦っているのと感覚は同じだ。

 でも、所詮は戦闘員。言葉も話せない、ただ、命令に従うだけの感情を伴わないやつらに襲わせても何かが足らないんだ。

「…それに比べたら…」

 ファイブレッド・星川学とか言う教員であり、戦隊ヒーローであるヤツを、その教え子を使って陵辱した時は興奮した。守らなければならない存在から屈辱的な行為を味わい、陵辱される。最後は、その子供達を守るために自ら身を挺して甘んじてその行為を受け入れたんだから。

「…うん…。…そうだ…!!…やっぱり、…それしかない…ッ!!

 その時だった。

 ゴキッ!!ゴキゴキッッッッ!!!!

 ちょっと動いただけで、ボクの首や肩がゴキゴキと音を立てた。

「…痛…ッ!!

 鈍い痛みに、ボクは思わず声を上げ、その場に蹲った。

「…はぁ…」

 再び溜め息。とは言え、過去の歴史を変えることが、ボクに与えられた役割なんだ。

「…次は、どの時代にしよう…?」

 その時、ボクは大きく分厚い本を手にしていた。

 今までの戦隊ヒーローの記録が収められている本。クランチュラに調べさせたんだ。

「…う〜ん…」

 あれこれ考えてみる。いつしか、ボクは自分の部屋を出ていた。そして、クランチュラやガルザがいるいつもの空間に辿り着いていた。

 その時だった。

 ヴヴヴヴヴヴヴヴ…!!

 低い振動音が聞こえ、同時に、

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…」

 と言う間の抜けた声が聞こえた。と同時に、

「お゛、ヨ゛ドンナ゛ぁ…」

 と言う呑気そうな声が聞こえた。

 ムカッ!!

 その声に物凄い苛立ちを覚え、ボクはその声の発し主を見上げた。

「…な…」

 何をやってるんだ、と怒り任せに言いかけたその時、

「…え?」

 と、目の前の光景を見て呆然となっていた。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…」

 その声の発し主はクランチュラ。しかも、その声がブレて聞こえる。

「…な、…何やってんだ、お前?」

 肩に棒状のものを当て、それが低い振動音を立てていた。するとクランチュラは、肩に当てていたそれを少しだけ離すと、

「…最近、疲れやすくてな…」

 とポツリと言い、大きな溜め息を吐いた。

「…邪面師を作るのも楽じゃない。ネタがないんだ。いや、ネタがないわけじゃない。地球上のありとあらゆるものからインスパイアしようと思うのだが、どうもいまいち、ピンと来ないのだ…」

「…スランプ…、…か?」

 ボクが訪ねると、

「…ん…」

 と、クランチュラがコクンと頷いた。

「…だから、最近、肩が凝りやすいんだ」

 そう言った時、クランチュラは急にニッコリと微笑み、

「そんな時にッ!!コイツが役に立つんだッ!!

 と、低い振動音を上げ続けている棒状のものを高く掲げて見せた。

「…お前…。…ド○えもんか?」

 頭の中で「♪テッテテテッテ テーテーテー」と言うBGMが流れる。…って、何でボク、そんなものを知っているんだろう?

「うん?何か言ったか?」

「いッ、いやッ、別にッ!!

 って、何でボク、顔を真っ赤にしているんだろう?

「…で?そいつは何なんだ?」

 ボクがそう言うと、クランチュラは、

「これは電動マッサージ器とかと言うものだ。地球に行った時、電化製品のお店へ行ってな、そこで買って来たのだ」

 と言うと、未だに低い振動音を立てているそれを再び肩に乗せた。

 ヴヴヴヴヴヴヴヴ…。

「ごれ゛を゛づがうど、げっごう゛ぎも゛ぢい゛い゛んだ。あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…」

 クランチュラの声がブレるブレる。

「…ふ〜ん…」

 ボクはクランチュラからそれを借りると、同じように肩に当てようとした。

「って!!ボクはこの服のせいで肩に当てられないじゃないかああああッッッッ!!!!

 そうなんだ。

 ボクの服。両肩にカラスの頭が付いた肩当てが付いているんだ。

 ぷっつん!!

 イライラがマックスに達し、ボクはクランチュラから借りた電動マッサージ器をクランチュラに投げ付けようとしたその時だった。その先端がクランチュラのお腹の辺りに当たった次の瞬間、

「ふおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!????

 と、突然、クランチュラが何とも言えない声を上げたんだ。

「んなッ!?何だッ!?

「おおおおううううッッッッ!!!!おふううううううううッッッッッッッッ!!!!!!!!

 腰をくの字に折り曲げて変な声を上げ続けている。

「…ヨッ、…ヨド…ンナ…あ…ッ!!

 真っ赤な顔が更に真っ赤になり、何とも言えない気持ち悪い表情をしてクランチュラがボクの腕を握った。

「はッ、離せッ!!

 ボクもパニック。クランチュラは、

「おふううううッッッッ!!!!ふううううッッッッ!!!!

 と言う変な呼吸をし、

「…いッ、…いきなりッ!!…へッ、変なところに、コイツを当てるなああああッッッッ!!!!

 と、声を上ずらせて大声を上げたんだ。

「…は?」

 意味不明。理解不能。するとクランチュラは、

「…こッ、コイツは男には強敵だッ!!…こッ、…ここに当てられたら一溜まりもないッ!!

 と言ったんだ。

「…あー…」

 そう言えば、ファイブレッドは似たようなことを子供達にされて悶えていたな。

「…なるほどね…!!

 ボクはニヤリと笑い、

「決めたぞ、クランチュラ!!

 と言った。

「…な、…何を?」

 クランチュラはきょとんとした表情でボクを見つめている。ボクはニヤリと笑うと、

「…次に行く時代さ!!

 と言うと、

「アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と高らかに笑い、姿を消したのだった。

「…ヨドンナ…。…相変わらず、分からないやつだ…」

 独り残されたクランチュラが呟いた。

 

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