女王の妖魔術U 第7話
目の前ですぅすぅと心地良い寝息を立てている黄山純。そんな黄山をぼんやりと見下ろしている豹朝夫。窓から差し込んで来る月の光が、ぼんやりと黄山と豹の顔を照らし出す。
『『さぁ、バルパンサー。デンジイエローのエネルギーをもっと奪うのじゃ…!!』』
頭の中に聞こえて来る2人の女性の皺枯れた声。水晶を通して豹に語り掛けて来るベーダー一族の女王・ヘドリアン=過去のヘドリアンと、ブラックマグマの女王・ヘドリアン=未来のヘドリアン。
「では、オレ様はデンジイエローの夢の中に入り込み、いい夢を見せてやる。お前はゆっくりとコイツからエネルギーを奪うが良い」
獏のような姿のベーダー怪物・ユメバクラーがそう言った時、ユメバクラーの体が光り、黄山の体の中へスゥッと吸い込まれるように入って行った。
「さぁ、バルパンサー。ゆっくりとデンジイエローを愛するのじゃ!!」
未来のヘドリアンが目をギラギラと輝かせ、口元には不気味な笑みを浮かべて言った。その時、
「…愛する…、…じゃと…?」
と、過去のヘドリアンが驚いて声を上げた。
「未来の私よ。バルパンサーとやらが、デンジイエローを愛すると言うのか?」
「そうじゃ」
「…バルパンサーが…。…男であるバルパンサーが、同じ男であるデンジイエローを愛すると言うのか?」
「そうじゃ」
未来のヘドリアンはニヤリとすると、
「正確には、バルパンサーはデンジイエローを愛している、と言うことじゃな!!」
と言った。
「…はぁぁ?」
過去のヘドリアンは意味が分からないと言った表情で眉間をしかめ、間抜けな声を上げた。
「バルパンサーは…。…学生時代の先輩であるデンジイエローに憧れにも似た感情を持っておるようじゃ。無理もなかろう。サンバルカンの中では最もレベルが低いヤツじゃ。戦闘能力も、頭脳も。そのコンプレックスが爆発し、バルシャークを襲ったのじゃ。そのコンプレックスを利用してやるのじゃ」
そう言うと、未来のヘドリアンは水晶の中を覗き込んだ。
『…バル…、…パンサー…』
黄山の横でぽつんと座り込んでいた豹だったが、意を決したかのように立ち上がると呟くようにそう言った。その瞬間、豹の体を光が包み込み、次の瞬間、豹の体はバルパンサーの光沢のある鮮やかな黄色のスーツに包まれていた。その頭部を覆う豹をあしらったマスクは付けられてはいなかった。
「そして目の前にいるデンジイエローは、同じようにデンジマンの中でさほど戦闘能力に長けてはおらぬ。それでも自身が出来ることをと、健気にやっておるのじゃ。バルパンサーはそれを自分自身に重ねているのであろうのう…」
「…なるほどな…」
過去のヘドリアンがニヤリと笑った。
「…同じ傷を持つ同士で、同じ傷を舐め合う、と言うのじゃな?」
そう言うと、未来のヘドリアンが目をギラリと輝かせ、口元にニタァと不気味な笑みを浮かべた。
「…さぁて…。…デンジイエローが気が付いた時には、この2人の関係がどうなっておろうのう…。…アァッハハハハハハハハ…!!」
「…先輩…」
窓から差し込む月の光がぼんやりとした視界を作り出している部屋。その中で、相変わらずすぅすぅと心地良い寝息を立てている黄山。
「…先輩…。…オレ…、…オレ…!!」
その時、豹は黄山にゆっくりと歩み寄ると、その体の上に伸し掛かっていた。豹はバルパンサーに変身し、黄山は普通にパジャマ姿だ。
「…先輩…ッ!!」
黄山の唇と、豹の唇がゆっくりと近付いて行く。
ドクンッ!!ドクンッ!!
黄山にも伝わるのではないかと言うほどに、豹の心臓が大きく高鳴る。
「…ッッッッ!!!!」
豹の喉が大きく動く。そして、意を決したように頭を下げた。
…チュッ!!
「…ッッッッッッッッ!!!!!!!!」
自分からする初めてのキス。そのキスに驚き、慌てて唇を両手で覆うと、物凄い勢いで黄山の体から飛び降りていた。
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
顔を真っ赤にし、目を大きく見開いたまま呆然と黄山を見下ろしている豹。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
だが、豹の2本の足の付け根部分。バルパンサーの光沢のある鮮やかな黄色のスーツに包まれたその部分が大きくテントを張り、その先端はぐっしょりと濡れ光っていた。
「…先…、…輩…。…先輩…ッ!!」
豹の口が何度も何度もその言葉を繰り返す。そして、四つん這いで、まるで獣が獲物を追い詰めて行くようにじりじりと動き、再び黄山の体の上に伸し掛かった。
「…先輩…ッ!!…オレ…ッ!!…オレ…ッ!!…ガマン…ッ、…出来ない…ッ!!」
そう言った時、豹の両手は黄山のパジャマの前ボタンを1つずつ、ゆっくりと外し始めていた。だが、黄山は相変わらずすぅすぅと心地良い寝息を立てている。
ドクンッ!!ドクンッ!!
豹の心臓は相変わらず大きく高鳴っている。そして、黄山のパジャマのボタンを外す手がブルブルと震えていた。その手が、ボタンを全て外し終わった時、
「…ッッッッ!!!!」
と、豹は息を飲み込んだ。
「…先…、…輩…」
黄山の体。少し日焼けした体はうっすらと筋肉が乗っていた。それはつまり、黄山が少しでも体を鍛えていることを意味していた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
その体が、窓から差し込んで来る月の光に照らし出される。
「…せッ、…先輩…ッ!!…何て、…エッチなんだ…!!」
そう言うと、豹は黄山の右胸に顔を埋める。そして、その筋肉質な胸板をゆっくりと撫で始めた。
「…先輩…」
トクン、トクン…。
黄山の穏やかな心拍音が聞こえて来る。その体は暖かく、不思議な安心感を豹に与えていた。
「…先輩…」
バルパンサーの白いグローブが黄山の胸の上で動く。その指が、黄山の左胸の突起に触れる。豹は暫くの間、それをコリコリと弾くように刺激していたがふと顔を起こし、自身の頭の下にあった右胸の突起をじっと見つめた。
「…」
その顔がゆっくりと動き、その右胸の突起にキスをした。
…チュッ!!
唇を窄め、その突起を愛撫するかのようにキスをする豹。だが、黄山は相変わらず穏やかな笑みを浮かべたまま、目を覚ますことがない。
「…どんな夢を見てるんでしょうにぃ、先輩は…!!」
そう呟くと、豹は黄山の右胸に再び唇を落とした。
…チュッ!!…チュクッ!!…チュクチュク…!!
くすぐったい音が、月明かりに照らされた部屋に静かに響く。
「「…ぉぉおおおおぉぉ…!!」」
その光景を見つめていた2人のヘドリアンが目を輝かせ、同時に声を上げる。
「…何と…、…何と美しい光景なのじゃ…!!」
過去のヘドリアンが歓喜の声を上げる。
「気づかない間にエネルギーを吸い取られる。その儀式とも言えるこの行為。何と美しい…」
そう言いかけてはたと我に返り、
「…そうじゃ…。…私は美しいものは嫌いなのじゃった…!!」
と言うと、未来のヘドリアンを見た。だが、未来のヘドリアンは、
「良いではないか。汚らわしいと思うものが、美しいと思うこともあってもなぁ。アァッハハハハハハハハ…!!」
と言うとご機嫌に笑ったのだった。