DON脳寺の変 第12話
ゴウウウウンンンン、ゴウウウウンンンン…。
世界の巨匠が描き上げた名絵画の数々が掲げられた部屋。その壁も、その空間も全てがキラキラと輝いているその空間に、ソノイが佇んでいる。その目は精気が漲り、ギラギラと不気味なほどに輝いていた。
「…ククク…!!」
その真っ青な目がギラギラと輝き、口元には不気味な笑みが広がっている。
「ソノイ!!」
その時、ズカズカと言う足音を立ててソノザが入って来ていた。
「…ソノザか…」
チラリとその方向を見やると、ソノイは、
「…どうだ、…キジの様子は…?」
と尋ねる。するとソノザは、
「かなり疑心暗鬼になっているようだ。口では必死に否定しているが、その心の中ではどうやら、あの赤いののことを疑い始めているようだ」
と言った。だがすぐに眉間に皺を寄せて、
「…本当に、上手く行くのか?…キジだけじゃない、そこにサルも現れたんだぞ?」
と言った。
「…サルが…?」
その言葉を聞いたソノイの顔がピクリと動く。するとソノザは、
「…あのサル…。…何かに気付き始めているようだぞ?」
と言った。
「…どうするよ、ソノイぃ?」
どこか心配そうに尋ねるソノザに対し、ソノイは、
「…フッ!!」
と笑うと、
「気付いたところで、何も変わらんよ」
と言った。
「…そう…。…運命は…、…もう…決まっているのだから…!!」
その時、はたと何かに気付いたかのように、ソノイが辺りをキョロキョロと見回した。そして、
「…ソノニは…、…どうだ…?」
と尋ねた。するとソノザは、
「さぁな!!」
と言うと、長槍に似た武器・三刃槍カゲスピアを両肩に担ぎ、
「今頃、キジと同じようにイヌも疑心暗鬼になってるんじゃないのか?」
と言うと、
「ヒャーハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う甲高い笑い声を上げたのだった。
「…あの赤いの…、…もうすぐ…、…鬼になる…」
そう言ったソノニの言葉が耳から離れない。
「…本当…、…なのか…?」
建物の影に隠れるようにして佇んでいるイヌブラザー・犬塚翼はぼんやりと考えていた。
「…桃井タロウが…、…鬼になる…?…そう言えば、…雉野もそんなことを言ってたっけな…。…それに、アイツは桃井タロウの背中にいる鬼を見たとも言っていた…」
自然と右手が顎に行く。
「…だとしたら…。…俺達は何のために集められた…?」
その時だった。
「だから言ってるだろう?」
その声に、翼はギクリとなって辺りをキョロキョロと見回した。
「ここよ、ここ」
「ぬわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!??」
翼らしくないほどに素っ頓狂な声を上げて叫んでいた。
ソノニが頭上で両足をぶらぶらさせながら建物の端に座っていたのだ。
「何だ、その驚き方?ソノザじゃあるまいし…」
怪訝そうに見つめるソノニに対し、翼は、
「…あ…、…い、…いや、別に…」
と言うと、顔を背けた。
「…ふぅん…」
ソノニはやや不機嫌そうにそう言うと、ぴょんとそこを飛び降りた。そして、翼の目の前に立ったのだ。
「…ソッ、…ソノニ…ッ!!」
「あらぁ。私の名前、覚えてくれたのか?」
銀色の瞳を輝かせて嬉しそうに顔を綻ばせるソノニに対し、
「べッ、別にッ、そう言うわけじゃ…」
と、翼はどぎまぎしながら答えた。
「…フフッ!!」
ソノニは悪戯っぽく笑うと、
「考えてくれたか?」
と翼に尋ねた。
「…なッ、…何をだ…ッ!?」
「決まってるじゃないか…?」
ゆっくりと翼の周りをクルクルと回り始めるソノニ。
「…あの赤いのを…、…一緒に倒すこと…」
「…だッ、…だからッ、アイツは…」
「仲間じゃないのだろう?」
翼の言葉を遮るかのように、ソノニが冷たく言い放った。さっきまでの嬉しそうな表情から一転、その銀色の目が冷たく光っている。
「仲間じゃないのなら、簡単に倒せると思うのだが…?」
「…く…ッ!!」
確かに、ドンモモタロウ・桃井タロウは仲間ではないとは自ら言った。だが、こうも突っ込まれると返答に困る。
「…フフッ!!」
すると、ソノニは再び意地悪い笑みを浮かべて、
「ソノザがキジさんとお話してるわ。そこにおサルさんも飛び込んで来たみたいだ」
と言った。
「雉野と、猿原が?」
「うん」
コクンと頷くと、
「鬼になる前に倒すか、第六天の魔王となり、強大な力を手に入れてしまったアイツを倒すか…。…それは、あなた方次第…」
と言った。
「…アイツが…、…桃井…タロウ…が…!!」
目を大きく見開き、ブルブルと体を震わせる。すると、ソノニはフッと笑い、
「よく考えることだな。どっちが自分にとって、本当に都合の良いことかを…」
と言った時だった。
「犬塚さんッ!!」
声が聞こえ、思わず振り返る。
「…きッ、雉野ッ!?…そッ、…それにッ、猿原ッ!?」
偶然にしては出来過ぎではないかと言いたくなるほど、キジブラザー・雉野つよしとサルブラザー・猿原真一がやって来た。
「いッ、犬塚さんッ!?大丈夫ですかッ!?」
「バカッ!!声がデケェよッ!!」
慌てて駆け寄って来る雉野に対し、翼は右手を振り上げると、
スパアアアアンンンンッッッッ!!!!
と言ういい音を立てて雉野の頭を引っ叩いていた。
「あ痛ッ!!」
雉野が頭を押さえる。
「…さっき、…ソノニの姿があったようだが…?」
猿原が冷静に尋ねると、
「…ああ…」
と、犬塚が溜め息を吐く。
「…桃井タロウのことか…?」
「…ああ…」
「…ふぅむ…」
「…さ、…猿原…さん…?」
眉間に皺を寄せて考え込み始めた猿原に、雉野は思わず声を掛けた。すると猿原はニッコリとし、
「ここでは何だから。3人だけで話せる場所へ行こう」
と言うと、スタスタと歩き出した。
「あッ!!まッ、待って下さいよオオオオッッッッ!!!!」
雉野が慌てて猿原を追い掛ける。もちろん、翼の腕を引っ張るのを忘れずに。
「痛ててててッッッッ!!!!おいッ、雉野ッ!!放せッ!!」
「放しませんッ!!」
ぎゃあぎゃあと喚く2人を引き連れて、猿原はご機嫌そうに歩いて行ったのだった。