DON脳寺の変 第18話

 

「ハーッハッハッハッハ…ッッッッ!!!!

 今日も聞こえる高らかな笑い。

「やあやあやああああッッッッ!!!!祭りだ祭りだああああッッッッ!!!!

 ドンモモタロウにアバターチェンジした桃井タロウは、まるで戦いを楽しむかのようにアノーニ達を次々と薙ぎ倒して行く。

「よっと!!

「それッ!!

「おおおおりゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 ザングラソードを煌めかせ、しなやかに体を折り曲げたりしてアノーニ達の攻撃をひらりひらりとかわす。

「ハーッハッハッハッハッッッッ!!!!それではオレは倒せんぞオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!ハーッハッハッハッハ…ッッッッ!!!!

(…やっぱり、…違う…)

 その光景を見ながら、キジブラザーにアバターチェンジした雉野は思っていた。

(…僕と…、…桃井さんでは…、…全然違う…ッ!!

「このままでいいのですか?」

 青い瞳のソノイの言葉が頭の中を何度もリフレインする。

「このままでは、あの赤いのは第六天の魔王になる。魔王になったら最後、あなた方さえも下手をすれば消されかねないのですよ?」

 憐れみ?同情?

 雉野にも鬼が見えると言っておきながら消去することなく、逆に脳人の世界へ迎え入れたいと言ったソノイ。そんな切なげな表情で雉野を見つめるソノイの瞳の中に、冷酷な感情をも見た。

(…僕は…。…僕は…ッ!!

 顔を上げれば、目の前ではサルブラザーにアバターチェンジした猿原や、イヌブラザーにアバターチェンジした翼、そして、オニシスターにアバターチェンジしたはるかがアノーニ達と戦っている。

(…僕だけが…。…僕だけが…、…違う…ッ!!

 取り残されたような疎外感。キジブラザーのマスクの中で目をギュッと閉じ、鮮やかなピンク色のグローブで包まれた拳をブルブルと震わせた。

 その時だった。

 シュパパパパッッッッ!!!!

 突然、目の前が眩しく輝いたかと思うと、雉野がいた辺りに火花が飛び散った。と同時に、

 バアアアアンンンンッッッッ!!!!バアアアアンンンンッッッッ!!!!

 と言う衝撃音と共に、キジブラザーのスーツがスパークしたのだ。

「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 その衝撃で雉野が引っ繰り返る。

「雉野ッ!?

 翼が駆け寄って来て、

「大丈夫かッ、雉野ッ!?

 と雉野を抱き起こした。

「何ボサッとしてんだよッ!?

「…あ…、…ああ…」

「ハーッハッハッハッハッッッッ!!!!

 その時、タロウの高らかな笑い声が聞こえて来た。

「それでは到底、オレの足元にも及ばんぞオオオオッッッッ!!!!ハーッハッハッハッハ…ッッッッ!!!!

「…今の…」

「あん?」

 呆然とする雉野。

(…まさか…、…桃井さん…、…が…!?

「おい、雉野ッ!?

 目の前にうようよと蠢いているアノーニ達。それでも、雉野は呆然としたまま、そこから動こうとしない。

「…ッ!?危ねえッ!!

 翼がそんなアノーニ達の集団の中に飛び込んで行く。

(…桃井…さん…が…。…桃井…さん…が…?)

「ハーッハッハッハッハ…ッッッッ!!!!

 タロウは相変わらず、楽しげに戦っている。

「…僕は…、…僕は…ッ!!

 握り締めた拳がブルブルと震えたその時、雉野はカッと目を見開くと、

「…僕は…ッ、…僕だああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と絶叫したかと思うと、

「うああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 と、アノーニの集団の中に物凄い勢いで飛び込んで行った。

「ハーッハッハッハッハ…ッッッッ!!!!まだだッ!!まだまだだなあッ、お供達よオオオオッッッッ!!!!ハーッハッハッハッハ…ッッッッ!!!!

 その時だった。

「貴様、それでも主人か?」

 低い声が聞こえたその瞬間、タロウの視界に眩い煌めきが映った。

「…ッッッッ!!!!

 咄嗟にそれをかわすタロウ。そして見上げた瞬間、

「…お前か…?」

 と言うと、ドンモモタロウのマスクの中でニヤリと笑った。

「…ソノイ…」

 ソノイが一級剣バロンソードを握り、静かにタロウを見つめていたのだ。

「貴様のそんな横柄な態度が、お前のお供達を傷付けていると言うことも分からんのか?」

 戦士の姿に変貌を遂げたソノイの目がギラリと光る。するとタロウは、

「それがどうしたッ!?そんなことで傷付くようなら、オレのお供にはなれんぞオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言い放ったのだ。

「…ほう…」

 ソノイの目がギラリと光る。そして、握り締めていた一級剣バロンソードを振り上げると、タロウに斬り掛かったのだ。

 ギイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!

 鋭い金属音が辺り一面に響き、タロウのザングラソードとソノイの一級剣バロンソードがぶつかり合う。

「呆れた主人だな!!お供達のことを、何にも分かっていないッ!!

「ハーッハッハッハッハッッッッ!!!!オレはお供達を鍛えてやっているだけだああああッッッッ!!!!

 その時だった。

「おいッ、キジッ!!

 突然、タロウが雉野を呼ぶ。

「…え!?

 はっとなって顔を見上げた時、目の前にアノーニの背中が見えていた。そして、そのアノーニが雉野にぶつかって来たのだ。

 ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言う音と共に、

「うわああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と、雉野がそのアノーニと一緒に吹き飛ぶ。

「お前はそのアノーニの相手をしていろッ!!

「…え?…え?」

 呆然としている雉野に対し、そのアノーニはすぐに態勢を整えると殴槌アノハンマーで殴り掛かって来たのだ。

「うひゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 雉野は身を翻すと、大きな翼を広げ、宙を舞った。そして、

「…こんのオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と叫び、そのアノーニを撃退した。

(…僕は…ッ、…どうしたらいいんだ…ッ!?

 キジブラザーとして戦う雉野。その頭の中には、大きな混乱と不安とが入り乱れ、ぐちゃぐちゃになっていたのだった。

 

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