DON脳寺の変 第26話
黄色の眩しい光の粒子がキラキラと舞い散る。そしてそれは、その周りを取り囲む灼熱の炎に溶け込むように消えて行った。
「…」
その光景を、キジブラザー・雉野つよしはぼんやりと眺めていた。
「…はるかちゃん…」
オニシスター・鬼頭はるか。雉野がダークアバタロウギアを操作し、飛び出した戦士達の必殺技を一手に引き受けて消えて行ったのだ。
「…私…を…、…導…いて…、…下…さ…、…い…」
悲しげな、最後の笑みを浮かべて消えて行ったはるか。そんな彼女の最期の姿を見て、ドンモモタロウ・桃井タロウは呆然としている。そんなタロウを見た雉野は、体がかあっと熱くなるような感覚を覚えた。いや、熱くなるような感覚だけではなかった。心の奥底から湧き上がる憎悪の感情。それが今の雉野を突き動かしていた。
「…よくも…!!」
雉野の体がブルブルと震え始め、鬼のような形相になり始めた。
「…よくも…ッ、…はるかちゃんをオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その瞬間、
ドオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンンンンンンッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
と言う激しい衝撃音と共に、雉野の体を包み込んでいた禍々しいオーラが一気に膨れ上がり、暴発したのだ。
「うおッ!?」
これには隣りにいたソノザも驚き、必死に避ける。だがすぐに、
「…ククク…!!」
と笑い始めたのだ。
「…もうすぐだ…。…もうすぐ、…あの赤いのは消える…!!」
「…許さない…ッ!!」
雉野の目が更に真っ赤に光り、憎悪を帯びた目付きでタロウを睨み付けると、
「許さない許さない許さなああああああああああああああああいいいいいいいいいいいいいいいいッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と絶叫し、ドンブラスターに周りが黄色のギア・ロボタロウギアを装填した。
「アバタロウチェエエエエエエエエンジイイイイイイイイイイイイイイイイッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!ロボタロウウウウウウウウウウウウウウウウウッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
そう叫んだ瞬間、雉野の体が眩く輝き始め、キジブラザーの姿から一転、キジの形をしたマシン・キジブラザーロボタロウへと変形していたのだ。
「…覚悟しろ…ッ、…桃井タロオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そう叫びながら、物凄い勢いでタロウのもとへ突っ込んで行く。そして、その鋭いくちばしでタロウの体に体当たりしたのだ。
ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
鈍い音が聞こえたその瞬間、
「ぐぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言う悲鳴を上げて、タロウが宙を舞う。
「オラオラオラオラアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
バシイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!
バキイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!
雉野が翼やくちばしでタロウを弾くたびに、タロウの体はまるでボールか何かのように宙を舞い上がる。
「…く…ッ!!」
何とかして反撃を試みるが、先ほど、夥しい数の戦士の攻撃を受け、体が思うように動かない。いや、既に体力の限界に来ていた。
そして。
目の前でオニシスターを失ったと言うのが、タロウにとって最大のダメージとなっていたのだ。
「アハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
目をギラギラさせて狂ったように笑う雉野。
「どうしたどうしたアアアアッッッッ、桃井タロオオオオッッッッ!!!?」
ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
「そんなんじゃ、ちっとも面白くないだろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!??」
「…すっげぇなぁ、…アイツぅ…!!」
地上ではソノザがニヤニヤしながらその光景を眺めている。
「…そろそろ…、…か…!!」
その時だった。
「うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
タロウの絶叫が耳を劈いたその瞬間、
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
と言う激しい衝撃音と共に、タロウの体が地面に激突し、埋没していた。
「…ぐ…ッ、…ああ…ッ!!」
「…ククク…!!」
上空では雉野が勝ち誇った笑みを浮かべている。その大きく広げられた翼をバサバサと羽ばたかせ、それでタロウを地面へ叩き落としたのだ。
「とどめだアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!!!桃井タロオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
雉野はそう叫ぶと、
「ソノザああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と叫んだ。
「おうよッ!!行くぜッ、お前らああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
ソノザの背後で、夥しい数の戦士達がフォーメーションを組み、必殺技を繰り出す準備をしている。
「…く…ッ!!」
その光景を見たタロウが顔を歪ませる。
「ヒャーハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!死ねエエエエエエエエエエエエエエエエッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ソノザが叫んだその瞬間、
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!
と言う激しい音と共に、巨大な光の弾丸がタロウへ向かって放たれた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
タロウの体がその光の中に包まれ、絶叫がこだまする。
「ハーッハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!ハーッハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「ヒャーハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!ヒャーハハハハハハハハッッッッ!!!!!!!!」
雉野とソノザの下衆な笑い声がいつまでも響き渡った。
どのくらい経っただろう。
「…あれ?」
その時、雉野が異変に気付いた。
「…タッ、…タロウが…ッ、…いない…ッ!?」
「何だとッ!?」
その言葉に、ソノザも驚いて声を上げる。
ゴオオオオ、と燃え盛っていた炎が消えた時、そこにタロウの姿がなかったのだ。
「…なッ、…何でッ!?…どう言うことッ!?」
雉野は俄かに慌て始めると、
「探せッ!!タロウを探せええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、後ろに控えていた戦士達に命令を出した。
「…バカな…!!」
その目が大きく見開かれ、きょときょとと忙しなく動く。
「あの炎の中から逃げられるとは考えられない。そうだよッ!!絶対にそんなことがあるわけがないんだッ!!」
だが、方々を探しても、タロウの姿は結局、見つけられないのだった。