DON脳寺の変 第28話
シュウウウウウウウウ…。
あれほど燃え盛っていた炎が消えて行き、今は煙がくすぶっている。
「…」
その光景を、雉野は呆然と見つめていた。
「…な…、…んで…?」
ソノイから与えられたダークアバタロウギア。それを使って、雉野達が普段、アバターチェンジする戦士達を一度に全員、呼び出した。そして、その戦士達が繰り出した必殺技がドンモモタロウを包み込んだはずだった。
「…あの大きな火の玉の中に、桃井タロウがいたのも見えていたのに…!!」
見えていたのに、今、目の前にはタロウの姿はない。
「…何でなんだよ…ッ!?」
怒りにブルブルと体が震え、
「何でなんだよオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!?」
と叫んでいた。
「何でッ!?何でッ、桃井タロウの死体がないんだよオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!??」
「まぁまぁ、いいじゃねぇか!!」
ソノザがニヤニヤと笑いながら雉野のもとへやって来ると、
「憎っくき赤いのを倒せたんだからよ!!」
と言った。その瞬間、雉野が俄かに目をカッと見開き、
「良くないよッ!!タロウが消えちゃったんだぞッ!?タロウが死んだことをこの目で確認しなきゃッ、僕がッ、僕がッ、スッキリしないじゃないかああああッッッッ!!!!」
と叫んだ。
その時だった。
「雉野オオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
突然、背後から怒鳴り声が聞こえ、雉野は思わずビクリとなった。
「…いッ、…犬塚さんッ!?」
「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!」
髪の毛が逆立ち、目を真っ赤に光らせ、怒髪天のごとく立ち尽くしている。そんな翼の背後には、禍々しい姿の鬼がはっきりと見えていた。
「…そうか…」
その時、雉野がニヤリと笑った。
「…そうか…。…君も、鬼になっちゃったんだねええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
そう言った雉野の目も真っ赤に輝く。そして、
「あははははははははッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、狂ったように笑い始めた。
「何がおかしいんでええええええええッッッッッッッッ!!!!!!??」
翼が怒鳴ると、
「おかしいさッ!!タロウはここにはいないッ!!君は鬼になってるッ!!何か、全てが滅茶苦茶になっちゃった感じだよオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と雉野が怒鳴り返し、
「あははははははははッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と、再び狂ったように笑い始めた。
「…て…んめ…ええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
翼を禍々しいオーラが更に包み込む。
「…よくも…、…タロウ…を…!!…信じて…たのに…」
「…はぁ?」
雉野が薄ら笑いを浮かべる。
「…俺は…ッ!!…雉野…、…アンタのことを…ッ、…信じてたのにイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その瞬間、翼の体が輝き始め、
「アバターチェンジッ!!ロボタロウウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言うけたたましい音と共に、イヌブラザーの姿を変え始め、イヌブラザーロボタロウにアバターチェンジしたのだ。
「ウルアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
物凄い勢いで突進して行く翼。すると雉野も、
「アバターチェンジッ!!ロボタロウウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言うけたたましい音と共に、キジブラザーの姿を変え始め、キジブラザーロボタロにアバターチェンジした。
「ケンケンケンケエエエエエエエエンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!」
バサバサと大きな翼を広げながら宙を舞う雉野。
「犬塚さんッ!!翼って名前がありながら、翼がないんだよねッ!?僕に飛び掛かって来られるのかなぁッ!?」
いかにも馬鹿にしたかのように翼をからかう雉野。その時、翼は、
「…フンッ!!」
と鼻で笑い、ニヤリとしたかと思うと、
「…俺を…、…なめるなよオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!??」
と叫んだかと思うと、高速に体を回転させ、物凄い勢いで宙を舞ったのだ。
「…んなッ!?」
雉野が驚いて目を見開いた瞬間、
ドゴオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う衝撃音と共に、
「ぐはああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と雉野の悲鳴が聞こえ、ドサリと地面に落下する。
「ウルアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
すかさず、翼は雉野の体の上に飛び乗り、鋭い爪で引っ掻いたり、噛み付いたりを繰り返す。
「うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
雉野が悲鳴を上げる。
「止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その時、灰茶色の戦士の姿に変わったソノザが三刃槍カゲスピアを振り翳し、2人の間に割って入る。
「退けエエエエエエエエエエエエエエエエッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
「退くかああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
翼とソノザの怒鳴り合いが聞こえる。
(…あ、…あれ…?)
その時、雉野は自身の姿がそこから消えて行くのに気付いた。
「…こちらです…」
空間の歪み、空間の狭間とでも言うのだろうか。周りの風景がぐにゃりと曲がって行き、真っ白な世界へ自身が入り込んで行く。
「…ソノイ…、…さん…?」
青い瞳の男性、ソノイが静かに微笑んでいる。
「…あなたを、お助け致します…」
「でッ、でもッ、ソノザさんが…」
その時だった。
「ウルアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
翼の怒り狂った声が空間越しに聞こえた時、
「ヒャーハハハハハハハハッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言うソノザの高らかな笑い声が辺り一面に響き渡った。その瞬間、
ドオオオオオオオオンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う何かが爆発したような轟音と地響きが雉野を襲った。
「…ま…、…まさ…、…か…!?」
「…ええ。…そのまさかです…」
ソノイが静かに言う。
「…ソノザは…、…あの黒い犬によって消されました…」
「…な…、…何…だ…って…!?」
ソノイが言った言葉が俄かには信じられない。だが、目の前で繰り広げられている光景はソノイが言った通りだ。だが、その目がどこか冷たい。
「…彼は…、…そうなる運命だったのです…。…そして…」
ソノイがニヤリと笑う。
「…あの黒いのも、ソノニによって間もなく消されるでしょう…!!」