宇宙からの侵入者 第3話

 

「…ぐわ…ッ!!

 気が付いた時、ダイナブラック・星川竜は薄暗い、何もない空間に放り込まれていた。

「…う…、…ぐう…ッ!!

 進化獣タコシンカに食らったタコシビレと言う超高圧電流攻撃で体に激痛が残る。その電撃のせいで体中が未だに痺れ、思うように動かなかった。そればかりか、タコシンカのにゅっと突き出した口から出て来た硬質の口・カラストンビに噛み付かれ、全身の力を吸い取られたようになっていたのだ。そのため、身軽になった竜をタコシンカは意気揚々と持ち上げ、ここへ連れて来たのだった。

「…ククク…!!

 太い鉄格子の向こうで、ジャシンカ帝国の王子メギドが野獣のように目をギラギラさせ、舌舐めずりをして竜を見つめている。

「無様だな、ダイナブラック!」

「…メ…、…ギ…ド…ぉぉぉぉ…ッッッッ!!!!

 力を失い、マスクが消えて顔が露わになっている。その額には脂汗が浮かび、それでも目は必死にメギドを睨み付けていた。

「…フフン!」

 メギドは満足気に笑うと、

「それでこそ、我らがジャシンカ帝国に刃向うダイナマンよ!そうでなくては面白くない!」

 と言ったかと思うと、

「タコシンカあッ!!ダイナブラックを徹底的に痛め付けるのだあッ!!

 と叫んだ。

「グワアアアアッッッッ!!!!

 その時、タコシンカがタコ足をブンブンと振り回しながら、ドスドスと言う足音を響かせて竜が放り込まれた、牢獄にしては広すぎる空間に入って来た。その後ろには、シッポ兵が何人か付いて来ている。

「…ククク…!」

 タコシンカの目が以前よりも血走り、心なしか、呼吸も荒々しく感じられた。

「ダイナブラック!オレ様は貴様のエネルギーを全て吸い取り、以前よりもパワーアップしたのだ!」

 そう言うと、ブラブラと揺れるタコ足を振り翳し、

「食らえいッ!!

 と竜目掛けて襲い掛かって来たのだ。

「…ッ!?…とぉ…っりゃああああ…ッッッッ!!!!

 何とかして上空へ飛び上がり、タコシンカの上を体を回転させて飛び越える。だが、

 ドオオオオッッッッ!!!!

 と言う物凄い音を立てて、タコシンカの背後へ倒れ込んだ。

「…ぐ…はあ…ッ!!

 ここへ連れて来られる前にたっぷりと埃を含んだ、ダイナブラックの光沢のある鮮やかな白いズボン部分。そこが茶色く変色していた。だが、竜の体にぴったりと密着するように纏ったそのスーツは竜の筋肉質な尻や、がっしりとした足をくっきりと浮かび上がらせていた。それは、見る者に妙な感情を抱かせるには十分なほど、淫猥に見えた。

「逃がしはせんぞおおおおッッッッ!!!!

 そう叫びながら、タコシンカがタコ足を振り回す。

 バシッ!!バシィィィィッッッッ!!!!

 その太く硬いそれらが竜の体に叩き付けられ、

「ああッ!!ああッ!!…く…ッ、…くああああッッッッ!!!!

 と竜が悲鳴を上げた。と同時に、その様子をじっと見つめていたシッポ兵が囃し立てるように奇声を発する。

「ハーッハッハッハッハ!!!!無様だッ!!無様にもほどがあるぞ、ダイナブラックッ!!ハーッハッハッハッハ!!!!

 メギドは鉄格子の中の様子を見るような格好で玉座のようなところに座り、勝利の美酒に酔い痴れている。

「…くッ、…くそ…ッ!!

 ゴロゴロと転がり、必死にタコシンカのタコ足から逃れようとする竜。その両手が鉄格子を掴んだその瞬間、

 ビキビキビキビキッッッッ!!!!

 と言う物凄い音と共に、

「ぐわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と言う竜の絶叫が耳を劈いた。

「ああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 鉄格子に掴まり、外を向いて体を大の字に開き、硬直させ、叫び続ける竜。その目は大きく見開かれ、同じように大きく開けられた口からは涎がポタポタと零れ落ちた。

「ハーッハッハッハッハ!!!!バカめッ!!その鉄格子にはタコシンカのタコシビレよりも超高圧の電流が流れるようにしてあったのだ!」

 そう言うと、メギドはグラスに注がれた毒々しいほどに真っ赤な酒を一気に飲み干し、

「良いぞッ!!何と美味い酒なのだッ!!

 と言った。

「…う…」

 その時、竜は両手を鉄格子から離したかと思うと、ヨロヨロと背後によろめき、

「…が…、…は…ッ!!

 と呻き声を上げ、地面に仰向けにひっくり返った。

「…あああ…、…う…あああ…!!

 体が痺れると言うよりも激痛で動けない。指一本すら動かすのがやっとと言うほどだ。

「おいッ、ダイナブラックッ!!

 そんな竜の上には、タコシンカがニヤニヤと笑いながら立っている。そして、

「まだまだおねんねには早いぞッ!!

 と言ったかと思うと、右足を大きく振り上げ、

 ドゴオオオオッッッッ!!!!

 と言う音と同時に、竜の腹部へ物凄い勢いで振り下ろしたのだ。

「…ぐふ…ッ!?

 その衝撃で竜の目が大きく見開かれ、体が腹部からV字に折れ曲がる。

「おらッ!!どうしたあッ、ダイナブラックッ!!

 ドゴオオオオッッッッ!!!!ドゴオオオオッッッッ!!!!

 何度も何度も足を振り上げ、振り下ろすタコシンカ。それに入り混じるシッポ兵の嬌声。

「ぐはああああッッッッ!!!!

「お、おおおおッッッッ!!!!

「ぐおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!

 あまりに強烈な攻撃に、意識が飛びそうになる。

「…お、…の…れ…ええええ…ッッッッ!!!!

 力を振り絞り、両腕を必死に動かす竜。そして、

「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と咆えたかと思うと、ガシッと言う音を立てて、タコシンカの右足を両手で掴んだ。そして、

「とおおおおりゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と叫びながら、それを渾身の力で跳ね除けたのである。

「おおおおッッッッ!!!!!!??

 タコシンカは素っ頓狂な声を上げ、ヨロヨロとよろめいた。その間に、竜は何とかして立ち上がると、

「とおおおおっりゃああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と渾身の右拳を突き出し、タコシンカの腹部へ減り込ませた。

「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!??

 タコシンカが呻き声を上げる。そして、背後へと引っ繰り返った。

「…はぁ…ッ、…はぁ…ッ!!

 体中で荒い呼吸を繰り返す竜。その目が、牢獄の入口に注がれた。だが、

「…フン!」

 と、余裕の表情のメギドは、

「おい!」

 と言うと側に控えていたシッポ兵に目配せする。すると、そのシッポ兵がコクンと頷いたかと思うと、何かのスイッチを押した。と同時に、

 ガシャアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言う音が聞こえ、牢獄の入口に大きな壁が落ちて来たのだ。

「…メ…ギド…おおおお…ッッッッ!!!!

 怒りに震える竜。だがメギドはフンと笑うと、

「もっともっと楽しませるのだ、ダイナブラック!」

 と、冷たい眼差しを竜に向けたのだった。

 

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