宇宙からの侵入者 第4話

 

 無機質な冷たい牢獄の入口を大きな石の壁で塞がれ、出入りが出来なくなったダイナブラック・星川竜。

「…く…ッ!!

 体中の力が出ないだけではなく、タコシンカのタコシビレと自身が閉じ込められた牢獄の鉄格子に流されている電撃を幾度となく浴びせられ、まさにふらふらな状態だった。

「さぁ、次はどうする、ダイナブラック?」

 余裕の表情のタコシンカ。だらんと垂れたタコ足をクルクルと振り回している。

(…入口も塞がれ、…逃げ出すことも出来ない…!)

 かと言って、1人でタコシンカを倒す力など、今の竜には残されてはいなかった。

(…残るは…)

 この時、竜の額に浮かぶ脂汗は全身に広がっていた。

(…だが、…それをやれば…!)

 ある攻撃をタコシンカに仕掛ければ、ここから脱出出来るかもしれない。だが、それは殆ど生身の自分にとって、相当の危険が及ぶことも分かっていた。だが、ここを抜け出すにはそれしか方法がないことも分かっていた。

 その時だった。

「攻撃して来ないのなら、こっちから行くぞぉッ!!

 と言うタコシンカの声にハッと我に返った竜。

(…覚悟を、…決めるしかないッ!!

 キッとタコシンカを睨み付けた竜の瞳に光が戻った。グッと腰を落とした次の瞬間、

「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と竜は咆え、タコシンカの懐に潜り込んだ。そして、タコシンカの背中へ両腕を回すと、そのままの勢いで壁際、あの鉄格子へとタコシンカを後ずらせたのだ。

「何ィッ!?

「何だとぉッ!?

 タコシンカとメギドが同時に叫んだその瞬間、

 ビキビキビキビキッッッッ!!!!バリバリバリバリッッッッ!!!!

 と言う、落雷のような衝撃音が聞こえ、辺りに電流がスパークしたのが分かった。そして、

「うおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!??

「ぐぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と言う、タコシンカと竜の叫び声がこだました。

「ぐおおおおおおおおッッッッッッッッ!!!!!!!!

 タコシンカの不気味な叫び声。

「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ぐぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 竜の絶叫。

「…はッ、…離せえッ!!

 タコシンカがタコ足で竜の背中を何度も何度も叩き付ける。

「…絶対に…ッ!!…離さ…んんんん…ッッッッ!!!!

 超高圧の電流で意識が飛びそうになる。だが、持てる力を振り絞り、タコシンカを鉄格子に押し付ける。

 だが、その時、信じられないことが起こった。

 シュルシュル、シュル…ッ!!

 竜が気が付いた時には、タコシンカのタコ足がシュルシュルと鉄格子に巻き付いていたのだ。

「…な…に…!?

 思わず見上げたタコシンカの表情を見た途端、竜は体が凍り付いたような感覚を覚えた。

 タコシンカの目がギラギラと輝き、不気味な笑みを浮かべていた。

「…あ…、…あぁぁ…!!

 そして、それは背後で玉座に座り、美酒を啜っているメギドも同じだった。

「…ま…さ…か…!?

 朦朧とする意識の中で、竜は信じられない思いでタコシンカとメギドを見つめる。

「ハーッハッハッハッハ!!!!今頃、気付きおったか!!

 メギドが勝ち誇った笑い声を上げる。そして、

「タコシンカが鉄格子の超高圧電流で苦しんでいるように見えるのは、貴様を騙すための芝居だったのだ!!

 と言い放った。

「…芝居…!?

 信じられないと言う表情でタコシンカを見上げる竜。

「…残念だったなぁ、ダイナブラック…!」

 ニヤニヤと笑うタコシンカ。

「オレ様のタコシビレは自分の体の中で発電させるのではない。あらゆるところからそのエネルギーを頂いてそれを攻撃力に変えているのだよ。つまり、電流を体に流されると言うのはオレ様にとっては食事のようなものなのさ!」

「…あ…あ…あ…あ…!!

 その瞬間、竜は意識が遠退きそうになったのが分かった。

 失敗、その2文字が竜の頭を過ぎった。

「…そして…!」

 タコシンカの目がギラリと光った。そして、自身の体をしっかりと押さえ込んでいた竜の腕の力が弱まったその瞬間、

 バシッ!!

 と言う音を立てて、竜を振り解いた。

「…あ…」

 竜が思わずよろめく。そんな竜を逃しはしないタコシンカは、鉄格子に巻き付いているタコ足とは別のタコ足でシュルシュルと竜を絡め取ると、クルリと踵を返し、捕らわれの竜がメギドに良く見えるようにした。

「さあッ!!貴様の泣き叫ぶ姿をメギド様にお見せするのだッ!!

 バリバリと超高圧な電流が流れる中で、タコシンカはそう言うと目を光らせた。そして、

「食らえいッ!!タコシビレエエエエエエエエッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と、超高圧電流だけではなく、自身の電撃をも竜に放ったのである。

「うがああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 竜の絶叫が辺りに響き渡る。

「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!

 体中がガクガクと震え、頭がぐらぐらして来る。

 と、その時だった。

 竜のダイナブラックのスーツが俄かに膨らみ始めたかと思ったその瞬間、

 バアアアアンンンンッッッッ!!!!バアアアアンンンンッッッッ!!!!ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言う衝撃音と共に、ダイナブラックのスーツが大爆発を起こしたのである。

「ひぎゃああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 竜の男らしい声が一転、上ずり、悲鳴とも絶叫とも似付かない声がその爆発の中から聞こえた。

「おおおおッッッッ!!!!

 メギドは目をキラキラと輝かせてそれを見つめる。そして、

「素晴らしい!素晴らしいぞぉッ、タコシンカあッ!!

 と、タコシンカを褒め称えた。

 やがて、爆発とその煙が少しずつ消えて行き――。

「…あ…、…う…あぁぁ…!」

 そこから現れたのは、ダイナブラックのスーツが無残にも爆発の衝撃でボロボロになり、竜の体を守るべく埋め込まれていた回路があちこちから剥き出しになった姿だった。その顔には鬱血の跡が窺えた。

「フン!虫けらが!」

 そう言ったタコシンカが竜を弾き飛ばす。

 バシッ!!

 と言う小気味良い音を立てて、竜はまるで人形のように離れたところへ飛ばされ、ドサッと言う音と共に地面に転がったのだった。

 

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