慟哭の毒針 第3話
「うぅわああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ダイナブルー・島洋介のやや高い、少年と大人の狭間の独特の声が鬱蒼と茂った林の中に響き渡った。
「ああああッッッッ!!!!…っく…ッ、…ぁぁぁぁああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
焼け爛れた鉄の塊を胸に突き付けられたように物凄く熱い激痛が体中を襲う。
「ハーッハッハッハッハ!!!!いいぞおッ、サボテンシンカああああッッッッ!!!!」
メギドの狂ったような笑い声が辺りに響き渡る。
「…お、…お…の…れ…!!…メギド…おおおお…ッッッッ!!!!」
洋介がヨロヨロと立ち上がり、ダイナブルーのマスク越しにメギドを睨み付ける。するとメギドはややムッとした表情を見せ、
「サボテンシンカッ!!もっとダイナブルーを痛め付けるのだああああッッッッ!!!!」
と言った。すると、サボテンシンカの目がギラリと光り、
「覚悟しろッ、ダイナブルーッ!!」
と言ったかと思うと、あの青い服を着せた藁人形に向かって、金槌を振り下ろしたのだ。その瞬間、
カーンッッッッ!!!!
と言う乾いた金属音が辺りに響いたその瞬間、
「うぐわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、洋介が再び胸を押さえ、背後へひっくり返った。
「ウハハハハッッッッ!!!!苦しめッ!!もっと苦しめええええッッッッ!!!!」
カーンッッッッ!!!!カーンンンンッッッッ!!!!
「ああッ!?…っぐ…ッ!?ああッ!!ああッ!!」
胸を押さえ、体をバタバタと暴れさせてのたうち回る洋介。何とかして起き上がろうとするのだが、胸を貫く激痛にすぐにひっくり返り、ゴロゴロと地面を転がる。そのせいで、ダイナブルーの光沢のあるスーツの真っ白なズボン部分がどんどん土と埃で汚れて行く。
カーンッッッッ!!!!カーンンンンッッッッ!!!!
「ひぎぃやああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
あまりの激痛に意識が遠退く。だが、その意識が遠退くと、今度は激痛でその意識が引き戻される。
「止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!止めてくれええええええええッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その時だった。
(…そ、…そうだ…!!…変身を、…解けば…!!)
何とか激痛を堪えながら、ヨロヨロと立ち上がる。そして、右腕のダイナブレスに手を掛けたその時だった。
「…フンッ!!」
それを見ていたメギドが鼻で笑い、
「変身を解除する気か?」
と聞いて来た。この時、サボテンシンカは藁人形に打ち付けられた釘を打つのを止めていた。
「…あ、…ああッ!!そうすれば、この激痛から解放されるんだからなッ!!」
はぁはぁと荒い呼吸をしながら、そう言う洋介。バイザー越しの目がニヤリと笑った。だがメギドは、
「貴様、オレが言った意味が分からぬようだなッ!!」
と言い出した。
「…お前が、…言った…意味…?」
何のことか分からず、問い返す洋介。するとメギドは、ニタニタと不気味な笑みを浮かべ、
「我々の目的は、最初から貴様だった、と言ったことだ!!」
と言った。その目がギラギラと不気味に輝いている。
「我々が青い服を着た藁人形に釘を打ち付け、人々を苦しめたのは、全ては貴様をおびき出すための罠だったのだ!!つまり、貴様のせいで、何の罪もない、他の者が苦しんでいると言うことなのだ!!」
「…な…ん…だ…って…!?」
目の前が真っ暗になるような感覚。
「(…オレの、…オレのせいで、…何の罪もない人達が…!?)…そんな…!…そんな…ッッッッ!!!!」
握り締めた拳がワナワナと震える。
その時、洋介は目の前にメギドが迫って来ているのに全く気付かないでいた。
「たああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
銀色に冷たく光る剣が洋介の目の前に迫る。そして、
ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う激しい衝撃音と共に、ダイナブルーの光沢のある鮮やかな青色のスーツがスパークした。
「うぅわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
洋介の体が大きく仰け反り、そのままバク宙をするように背後へひっくり返る。
「…ああ…ッ!!…うああ…ッ!!」
「どうだあッ、ダイナブルーッ!!貴様のせいで人々が傷付くのだあッ!!そんな人達に代わって、このオレ様が鉄槌を下してやるわああああッッッッ!!!!」
聞き方によっては屁理屈とも思えることをメギドは叫ぶと、
「やれええええいッ、サボテンシンカああああッッッッ!!!!ダイナブルーをもっと苦しませるのだああああッッッッ!!!!」
と叫んだ。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
洋介の脳裏に、あの、街の中で苦しむ「青い服」を着た人々の姿が蘇る。
「…止めろ…!!」
額に脂汗を浮かべ、眉間に深い皺を寄せて懸命にその痛みに耐える人々の顔。それが、自分のせいだったなんて…!!
「…止めろ…!!」
ブルブルと体が震え始める。
「覚悟するのだ、ダイナブルーッ!!」
サボテンシンカの、金槌を持った右手が振り下ろされた。その瞬間、
カ――――ンンンンッッッッ!!!!
と言う乾いた音が辺りに響いた。
「うぐッ!?」
ドシュッ、と言う音が聞こえるかのように、あの激痛が再び洋介の胸を貫いた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
意識が遠退きそうになり、背後へ倒れそうになる。そして、
カ――――ンンンンッッッッ!!!!
と言う甲高い音が一層大きくなった時、
「ひぃがああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言う洋介の絶叫が辺りに響き渡った。
カ――――ンンンンッッッッ!!!!カ――――ンンンンッッッッ!!!!
「ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
カ――――ンンンンッッッッ!!!!カ――――ンンンンッッッッ!!!!
「…やッ、…止め…ろ…オオオオ…ッッッッ!!!!」
カ――――ンンンンッッッッ!!!!カ――――ンンンンッッッッ!!!!
「…も、…もうッ!!…止めてくれええええええええええええええええええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
洋介自身も激痛で苦しい。だがそれ以上に、自分のせいで、街の人達が苦しんでいるのを考えるだけで、洋介の心は抉られるように激しい痛みを伴っていた。
その時、メギドの目がギラリと光った。そして、
「とどめだああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!サボテンシンカああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!」
と言う大声が響き渡ったその瞬間、サボテンシンカの体が眩しく輝き始めた。そして、
「食らえいいいいッッッッ!!!!ニードルサウザンドオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
と言う叫び声が聞こえたその瞬間、
ドシュッ!!ドシュドシュドシュドシュッッッッ!!!!
と言う鈍い音と共に、無数のサボテンの棘が洋介のダイナブルーのスーツに突き刺さっていた。
「…え?」
洋介がはっきりとその状況を掴む前に、
バリバリバリバリバリバリバリバリイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う激しい電撃音が響き、眩しい光と共に洋介の体を絡め取った。
「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
洋介が声の限り、絶叫する。
「…あ…、…あぁぁ…!」
その衝撃音と眩しい光が消えた時、そこにはダイナブルーのマスクを足元へ落とした、虚ろな目をした洋介がいた。
「…う…!」
そして、人形のように崩れ落ちたのだった。