慟哭の毒針 第9話
「ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ひぎゃああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
薄暗い牢獄の床の上をゴロゴロと転げ回り、狂ったように叫び続ける洋介。その両手が意識的なのか、無意識なのか、胸を掻きむしるように蠢いている。
「ハーッハッハッハッハ…!!」
そんな洋介の傍らで、メギドが勝ち誇ったように高らかに笑う。
「無様だッ!!無様だぞッ、ダイナブルーッ!!ダイナブラックを助けに来たつもりが、逆に晒した醜態が命取りになるとはなあッ!!」
「…ぐ…、…うううう…ッッッッ!!!!」
顔を真っ赤にし、目を硬く閉じる洋介。
(…オレが…!!…オレが、…あんなことをしなければ…!!)
誰も見ていないと思い、牢獄の奥の方に横たわっていた、意識の醒めないダイナブラックのスーツから飛び出した竜のペニスを愛撫し、ダイナブルーのスーツの中で大きく勃起した自身のペニスを刺激し、果てた。だがそれは、今から思えば、牢獄なのだから当然、監視モニターが付いているのは当たり前であり、洋介のその醜態も当然のことながら、洋介を捕らえたジャシンカによってじっくりと見られていたのだ。
「情けないにもほどがあるぞッ、ダイナブルーッ!!貴様ッ、それでも我らが憎っくきダイナマンの一員かあッ!?」
不意に苛立ったのか、メギドが声を荒げた。だがすぐに、ニタァと相変わらず下衆な笑みを浮かべ、
「…まぁ、良い。今から貴様にはたぁっぷりと地獄を味わってもらうのだからなッ!!」
と言った。
「…何を…、…する…気…だあ…ッ!?」
絶体絶命とはこのことを言うのだろうか。最大の弱みを握られ、強大な敵に徹底的に打ちのめされ、そして今、更なる何かをされようとしている。
「…も、…もう…ッ!!…止めてくれ…!!」
自然と口を突いて出ていた。だが、そんなことで止めてくれるような相手ではないことも分かっていた。メギドはフンと鼻で笑うと、
「サボテンシンカの頭から放ったあの赤い棘には、それを突き刺された者の感情を大きく膨らませる薬が含まれている。つまり、毒針と言うわけなのだ!!」
と言い、
「やれええええいッ!!サボテンシンカああああッッッッ!!!!」
と叫んだ。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
心なしか、洋介の体が震えている。そんな洋介を見て、サボテンシンカは目をギラリと光らせたかと思うと、
「さあッ、ダイナブルーッ!!お前の無様な姿をメギド様にお見せするのだッ!!」
と言ったかと思うと、あの、青い服を着て胸のところに大きな釘が突き刺さった藁人形に向かってハンマーを振り下ろしたのだ。
カ――――ンンンンッッッッ!!!!
乾いた金属音が辺りに響き渡った瞬間、
「…ッ!!!!」
と、洋介は思わず目を硬く閉じる。またあの激痛が来るのではないかと、一瞬だけ覚悟を決めた。
だが。
「…あれ?」
あの激痛が襲って来ない。それどころか、何の変化もないように思えた。
「…何も、…起こらない…?…はッ!!何だよッ!!ただの脅しかッ!?」
洋介が粋がったその時だった。
ドクンッ!!
突然、心臓が大きく高鳴った。
「…う…、…が…ッ!?」
意識が遠のきそうになるほどに心臓が大きく高鳴り、思わず胸を押さえる。その間にも、
ドクンッ!!ドクンッ!!
と言う心臓の音は大きく聞こえ、同時に、体が燃え上がるように熱くなって行くのが分かった。
「…な、…何だ…ッ!?…これ…ッ!?」
とぞの時だった。
「…どッ、…どうして…ッ!?」
ダイナブルーの鮮やかな白色のスーツ。誰にも見られていないと思い、意識の醒めない竜を見ながら自慰行為をしたために少し黄ばんではいたが、そこに包まれた洋介の男としての象徴であるペニスが今、誰にも触れられたり刺激されたりしたわけでもないのに大きく勃起し、スーツの中で大きく盛り上がっていたのだ。
「…うう…ッ!?」
ただ盛り上がっているだけではなかった。それが留まることを知らないかのように大きく腫れ上がり、スーツの股間部分の縫い目がブツブツと音を立てて裂け始めたのだ。
「…嫌だ…!!」
顔を真っ赤にし、目に涙を溜めて声を震わせる洋介。
「ハーッハッハッハッハッッッッ!!!!見たかッ、サボテンシンカの毒針攻撃ッ!!」
目をギラギラさせ、勝ち誇ったように笑うメギド。
「さっきも言ったが、あの毒針にはそれを突き刺された者の感情を大きく膨らませる薬が含まれているのだッ!!つまりッ、ダイナブルーッ!!貴様のダイナブラックへの感情を大きく膨らませてやっているのだッ!!」
「…な…ん…だって…!?」
ドクンッ!!ドクンッ!!
ブツブツッッッッ!!!!ブツブツブツブツ…ッッッッ!!!!
「…止めろ…!!…止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!」
洋介が絶叫したその瞬間、
ブッ!!ビイイイイイイイインンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!
と言う鈍い音と共に、ダイナブルーのスーツの股間部分がばっくりと割れ、中から通常よりも大きく勃起した洋介のペニスが物凄い勢いで飛び出し、ブラブラと揺れた。
「おおおおッッッッ!!!!いいぞいいぞおおおおッッッッ!!!!」
サボテンシンカが嬌声を上げる。
「…あ…、…あぁぁ…!!」
自分自身のプライドとも言えるべき性器を、いや、普段のとは違い、異常なまでに大きく勃起したペニスをよりによってジャシンカに見られている。それだけでも洋介のプライドはズタズタだった。だが、それで終わるようなジャシンカではないことも分かっていた。
「…フンッ!!」
その時、メギドはあの玉座に座り、片足を組んでじっとしていたが、
「…喉が渇いた…」
と不意にぽつりと零した。そして、
「おいッ、酒を持てッ!!」
と、近くにいたシッポ兵に命令すると、毒々しいほどの赤色で、そこからもくもくと白いガスのようなものが溢れ出ているグラスを手にした。
「…ダイナブラックの液体も美味であったが…」
そう言ったメギドの目がギラリと光る。それを目敏く見た洋介は、
「…ま、…ま…さ…か…!!」
と言い、顔を真っ青にした。
「おいッ、ダイナブルーッ!!貴様の液体を捧げるのだッ!!」
一瞬、メギドが何を言っているのか、分からないでいた。だがすぐにカァッと頭に血が上ったかと思うと、
「なッ、何を言ってるんだッ!!そ、そんなこと、出来るわけ…」
と言い掛けて体が固まった。
「…え?」
洋介が驚くのも無理はない。
鮮やかな青色のグローブに包まれた右手。それが意思に反するかのようにスウッと動いたかと思うと、ダイナブルーのスーツを飛び出してビクンビクンと脈打つペニスを握ったのだ。
「…ウ…ソ…だろ…!?」
その右手がゆっくりと前後に動くのに合わせるように、洋介の体に、あのおぞましい感覚が押し寄せて来た。
「…止めろ…!!」
思わずメギドを見る。メギドは相変わらず下衆な笑みを浮かべ、その行為を見つめている。
「…無様だ…!!…敵将の目の前で、自慰行為をするとは…!!」
「…止めろ…ッ!!…ッ、止ぁめぇろオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
洋介の絶叫が辺りに響き渡った。