慟哭の毒針 第10話

 

 …キュッ!!…キュッ、…キュッ…!!

 厚手の生地のグローブが擦れ合い、小気味良い音を立てる。鮮やかな青色のグローブに包まれた洋介の右手が、一定のリズムで前後に動いていた。

「…ん…ッ、…んん…ッ!!…んんんん…ッッッッ!!!!

 だが、その一定のリズムとは正反対に、洋介は顔を真っ赤にし、その手の動きを懸命に止めるかのようにブルブルとその腕を震わせている。

「…く…っそ…オオオオ…ッッッッ!!!!

 ダイナブルーに変身し、鮮やかな白色のズボン部分からはいつも以上に勃起したペニスを飛び出させ、それを青色のグローブが包み込んでいた。そして、それを一定のリズムで前後に刺激していたのである。

 しかも今、洋介はジャシンカ帝国の王子メギドとサボテンシンカの前で、堂々と自慰行為をしていたのだ。

「…ククク…!!

 玉座に座り、メギドは洋介の醜態をニタニタと見ている。

「…無様だな、ダイナブルー!我の目の前で破廉恥極まりないことをするとは…!」

 その言葉に、洋介は顔を更に赤らめる。だがすぐに、

「あッ!!あッ!!あッ!!あッ!!

 と短く喘ぎ声を上げ始めた。

「…どッ、…どうして…ッ!?

 いつもする自慰行為とはまた違った感覚。サボテンシンカの毒々しい真っ赤な棘が体内で感情をコントロールしているだけではない、おぞましい感覚が洋介を支配する。

 普段、洋介が自慰行為をする時には、大きく勃起したペニスを優しく握り、ゆるゆると上下するようにして絶頂へと導く。だが今、洋介の手はダイナブルーのグローブに包まれ、それが摩擦をなくし、スッ、スッ、と洋介のペニスを滑るように刺激する。それが、ジャシンカの目の前でやらされているとは言え、心地良い快楽を洋介に与えていたのだった。

「…止めろ…!!

 洋介の目に涙が溜まる。

「…もう…ッ、…止めて…くれええええッッッッ!!!!

「まだまだあッ!!

 サボテンシンカがそう言った時だった。不意にシッポ兵が牢獄に入って来たかと思うと、洋介の背後に横たわっていたダイナブラックに変身した竜をズルズルと引き摺り、洋介の目の前へと横たわらせたのだ。

「行くぞオッ、ダイナブルーッ!!

 サボテンシンカが、手にしていたハンマーを振り下ろした。

 カ――――ンンンンッッッッ!!!!カ――――ンンンンッッッッ!!!!

 金属の冷たい音が響いたその瞬間、

 ドクンッ!!ドクンッ!!

 と、洋介の心臓が再び大きく高鳴った。そして、体中に熱いものが駆け巡った。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 目の前に最愛の竜がいる。目を閉じているその表情は、まるで寝ているだけの穏やかなものだった。

「…竜…、…さん…ッ!!

 洋介は口をぽかんと開け、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、ペニスを刺激する手の動きが少しずつ早くなって来た。

「ああッ!!ああッ!!ああああッッッッ!!!!ああああッッッッ!!!!

 その時だった。

 …クチュッ!!…クチュクチュ…ッ!!…クチュクチュクチュクチュ…ッッッッ!!!!

 洋介のペニスの先端がじんわりと濡れて来たかと思うと、辺りに淫猥な音が聞こえ始めた。

「ハーッハッハッハッハ!!これはいいッ!!目の前にダイナブラックと言う最愛の人間がいると言うだけで興奮しているようだなッ!!

 メギドが大声で笑う。

「全く、人間と言うのはおぞましい生き物だッ!!愛と言う下らぬ感情に流され、このような醜態を晒すとはなあッ!!

「だッ、黙れええええッッッッ!!!!

 突然、洋介が怒鳴り声を上げた。

「…お前らのような、…愛や平和が分からないヤツらに、…言われたくないッ!!

 メギドを睨み付ける洋介の目から涙が零れ落ちていた。

「…竜さんは、…ダイナブラックは、いつでもオレを支えてくれたんだ!あの暖かさ、心地良さを、オレは絶対に忘れたりしないッ!!例え、この身がどうなろうとも、お前らに絶対に屈するもんかああああッッッッ!!!!

 はぁはぁと荒い呼吸をしながら、言い切った。その時、メギドはじっと洋介を見つめていたかと思うと、

「…言いたいことは、…それだけか…?」

 と、いつもよりも低い声で言った。その強烈な殺気に洋介は思わず身構えようとする。だが、その右手は未だに大きく勃起したペニスを握り締めていた。

 その時、メギドが立ち上がったかと思うと、

「サボテンシンカああああッッッッ!!!!もう一度、ニードルサウザンドだああああッッッッ!!!!

 と怒鳴った。だが、サボテンシンカは、

「え、ええッ!?い、今、せっかく、いいところなのに…!!

 と言ったが、

「黙れええええッッッッ!!!!いいからさっさとやるのだああああッッッッ!!!!

 とメギドに言葉を遮られてしまった。

「…く…ッ…!!

 洋介は覚悟を決める。

「い、行くぞオッ、ダイナブルーッ!!

 そう言ったサボテンシンカの体が眩しく輝き始めた。そして、

「食らえいいいいッッッッ!!!!ニードルサウザンドオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 と言う叫び声が聞こえたその瞬間、サボテンシンカの体に付いていた無数の棘が飛び出した。

 ドシュッ!!ドシュドシュドシュドシュッッッッ!!!!

 鈍い音と共に無数のそれらがダイナブルーのスーツに突き刺さったその瞬間、

 バリバリバリバリバリバリバリバリイイイイイイイイッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言う激しい電撃音が響き、眩しい光と共に洋介の体を絡め取った。

「ぐぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 洋介が絶叫したその時だった。

 バアアアアンンンンッッッッ!!!!バアアアアンンンンッッッッ!!!!ズガアアアアアアアアンンンンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!

 と言う衝撃音と共に、それまでの衝撃に耐えかねたのか、ダイナブルーのスーツが大爆発を起こした。

「ハーッハッハッハッハッッッッ!!!!どうだあッ、ダイナブルーッ!!我々に逆らうとこう言うことになるのだああああッッッッ!!!!

 メギドが大声で得意げに言う。

「…あ…あ…あ…あ…!!

 ダイナブルーのスーツからはしゅうしゅうと煙が立ち込め、原形を留めないまでになっていた。回路を剥き出しにし、ボロボロになったそれ。

「…では、続きだ!」

 サボテンシンカの目が光ったその時だった。

 クチュクチュクチュクチュッッッッ!!!!クチュクチュグチュグチュグチュグチュッッッッ!!!!

 淫猥な音が辺りに再び聞こえ始めた。

「…ああ…。…あぁぁ…!!

 目を虚ろにした洋介。その右手が大きく勃起したペニスを相変わらず刺激し続けている。

 そして。

「…出る…ッ!!

 洋介の目から涙が零れたその瞬間、

 ドビュッ!!ドビュッ!!ドビュドビュドビュドビュッッッッ!!!!ビュクビュクビュクビュクッッッッ!!!!

 と言う鈍い音と共に、洋介のペニスの先端がぶちゅっ、と言う音を立てて弾け、そこから大量の濃白色な液体が飛び出したのだった。

 

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