刹那の夢 第4話
「なあッ、南郷ッ!!頼むッ!!拙者にッ、いろいろ教えて下さらぬかッ!?」
竜の口から飛び出た言葉に、南郷は絶句した。
「…ウ、…ウソ…でしょ…!?」
そう言うのが精一杯だった。
竜がいろいろ教えて欲しいと言ったのは、洋介のことが恋愛感情で好きで、いざ、洋介と両想いになった場合、当然、年上の竜が洋介をリードしなければならない。だが、竜は恋愛もしたことがなければ、他人と体を重ねたこともない、うぶと言えばうぶだった。そして、洋介をリードする方法を南郷に教えて欲しいと言うことは、必然的に、南郷と体を重ねなければならないことを意味していた。
「…ねッ、…ねえッ、竜さんッ!!…お、落ち着いてッ!!」
顔が相当引き攣っていただろう。
「…あ、…あのね、竜さん。オレにいろいろ教わりたいのは分かるんだけどさ、…そ、…それってつまり、…オレが竜さんといろいろやらなきゃいけないってことだよね?」
すると竜は、
「そうでござるよ?南郷が、拙者をリードしていろいろ教えて欲しいでござる!」
と、さも当然と言った表情で言ってのけたのだ。
「…あ、…あのね、竜さん?」
天然なのか、本当に純粋なのか、よく分からなくなって来る。
「…そ、…その…。…セ、…セックスって言うのは、普通は男女でするものでしょ?…りゅ、…竜さんはオレに体を触られるだけじゃなくて、舐められたり、甘噛みされたり…。…そ、…それだけじゃなくて、…そ、…その…。…お、…男の大事なところを触られたり、…刺激されて、…射精…させられたりするんだよ?…そ、…それっておかしくないかい?」
「…何が、おかしいのでござる?」
「だぁかぁらああああッッッッ!!!!」
思わず、大声を上げていた。
「オレと竜さんがセックスをするって言うのは、普通はあり得ないでしょって言ってるのッ!!」
顔を真っ赤にし、目を大きく見開いて南郷が竜に詰め寄る。そんな南郷を、竜は暫く圧倒されたように見つめていたが、
「…しかし…」
と、今度はしゅんとなって言い始めた。
「…こんなこと、…南郷にしか頼めないでござるよ。…まだ、島が拙者のことを好きなのかどうかも分からないでござるが…。…それでも、拙者は島のことが、本当に好きなんでござるよ!!拙者が、命に替えても守りたいと思う相手なのでござるッ!!」
真剣な竜の瞳が南郷の脳裏に焼き付く。
「…でもさ…」
今度は南郷が顔を曇らせた。
「…例え、島と恋愛関係になったとしても…、…世の中は認めてくれないよ?…男同士なんて、変じゃないか。気持ち悪いって思われるのがオチだよ?」
その時、竜はフッと笑っていた。
「それも覚悟の上でござるよ!」
穏やかな笑みを浮かべる竜。
「…拙者は…。…おかしいのでござろうな。同じ男を、洋介のことを好きになってしまった。でも、それはそれで仕方のないこと。たまたま好きになった相手が同じ男だった、それだけのことでござろう?それで世間からそっぽを向かれたとしても、世間から孤立したとしても、それはそれで仕方がない」
そう言うと、竜はゆっくりと立ち上がった。そして、南郷の肩に手を置き、
「変なことをお願いしようとして、すまなかったでござるな。このことは、忘れて下され」
と言った。
「ちょ、ちょっと待ってよッ、竜さんッ!!」
その時、南郷は声を上げていた。
「…南郷…?」
南郷が顔を真っ赤にしている。それを、竜は不思議そうな表情で見つめていた。
「…わ、…分かったよ…!」
「え?」
はぁはぁと荒い呼吸をし、体をブルブルと震わせる南郷。
「…オッ、…オレがッ!!…りゅ、…竜さんをリードするよッ!!…竜さんがッ、…島と恋愛関係になった時、…竜さんが恥ずかしい思いをしないように…!!」
「…南郷…。…無理していないでござるか?」
竜が心配そうな表情を浮かべると、南郷はニッコリとして、
「乗り掛かった船だ!!オレに任せておいてよッ、竜さんッ!!」
と言うと、照れ臭そうに笑った。
「…南郷…!」
その時、竜の両腕が伸びたかと思うと、南郷は竜に抱き締められていた。
「お、おいおい、竜さんッ!!抱き締める相手が違うだろう?」
ぽんぽんと竜の背中を叩く南郷。その時、南郷はやや顔を赤らめ、
「…実は…さ、…竜さん…」
と、ぽりぽりと鼻の頭を掻いた。
「…南郷…?」
竜の視線が南郷の体の1点を見たその途端、
「なッ、南郷ッ!?お前ッ!?」
と驚いて声を上げた。
「…は、…はは…!」
恥ずかしそうに笑う南郷の、真っ青なジーパンに包まれた2本の足の付け根部分が大きく膨れ上がっていた。
「…竜さんとエッチな話をしていたらさ、オレまでムラムラしちゃったんだよね。…オレだって、…その、…ずっとご無沙汰だから…さ…!」
「もちろん、お礼はたぁっぷりとするでござるよ!」
その時、竜は自身の黒いズボンの中の膨らみを揉みしだいていた。
「拙者だけが気持ち良くなるわけには行かんでござる!南郷にも気持ち良くなってもらわないと!」
「い、いいのかい?」
南郷が尋ねると、
「拙者にお任せ下され!」
と竜が悪戯っぽく笑った。
「…じゃあ、竜さん。…行くよ?」
その時、南郷は真顔に戻って言うと、
「その前に、竜さん。お互いに変身しようよ」
と言い出した。
「…お互いに、…変身するのでござるか?」
竜が尋ねると、南郷は悪戯っぽく笑って、
「何か、その方がムードが出るかなぁ、なんて思ったりなんかしてね!」
と言った。
「…ふむ…」
竜は暫く考え込んだかと思うと、
「…確かに、お互いに変身した方が、体のラインがクッキリとしていて淫猥に見えるでござるな!」
と言った。
「だろ?竜さんが島を好きになったのって、島がダイナブルーに変身して、体付きがエッチに見えたからって言うのもあるんじゃない?」
「いやいや、それだけじゃないでござるよ!島の性格や仕草や、いろいろな表情や…。全てが好きになったんでござるよ!」
「フフッ!ダイナブルーに変身した姿も好きになった一因ではあったんだね?」
悪戯っぽく笑う南郷に対し、竜も、
「…まぁ、…それもあったでござるな!」
と照れ臭そうに笑った。
「…よしッ!!じゃあ、竜さんッ!!行くよッ!!」
「おうッ!!」
再び真顔に戻る2人。
まずは竜が左腕を突き出し、反時計回りに腕を回し、
「ダイナッ、ブラックッ!!」
と叫び、左腕を引き、右腕を前へ突き出した。そして、その右腕もすぐに引いた途端、竜の体が眩しい光に包まれ、上半身は光沢のある鮮やかな黒色の、下半身は光沢のある鮮やかな白色のスーツに包まれた、ダイナブラックへと変身していた。
「じゃあ、次はオレッ!!」
今度は南郷が竜と同じように左腕を突き出し、反時計回りに腕を回し、
「ダイナッ、イエローッ!!」
と叫び、左腕を引き、右腕を前へ突き出した。そして、その右腕もすぐに引いた途端、洋介の体は眩しい光に包まれ、上半身は光沢のある鮮やかな黄色の、下半身は光沢のある鮮やかな白色のスーツに包まれた、ダイナイエローへと変身していた。
この時、竜は知らなかった。南郷が変身するように促したのには、南郷のおぞましい欲望があったことを…。