逆襲のゴルリン 第3話
ゴウウウウンンンン…ッッッッ!!!!
大きな銅鑼のような音が響き渡った途端、そのコロシアムの観客達が一斉に歓声と罵声を上げ、一気に騒々しくなった。
「…ッ!!」
目の前にいるぽっちゃり体型のゴルリンType Bを睨み付けるファイブブルー・星川健。
「…ククク…!!」
ゴルリンType Bはただ不気味にニタニタと笑い、
「…貴様のエネルギーを全て搾り取り、我が糧とする…!」
とぶつぶつと繰り返し言う。
「…フン!」
そんなゴルリンType Bを目の前にして、健は鼻で笑い、余裕を見せ付けた。
「お前が巨大化を促すゴルリンとどんなに違うのかは知らないが、オレはちょっとやそっとじゃ、倒れはしないぜッ!!」
と言った。
その時、健の心の中には、2つの相反する感情があった。
1つは奢り高ぶった感情。
どう見てもすぐに倒せそうなゴルリンType Bのどこに、自分を凌駕するほどの力があると言うのだろう。自身の怪力を使って投げ飛ばせば、あっと言う間に壊れそうな感じもしていた。
(…ナメられたものだぜ…!)
そうとも思っていた。
だが、もう1つの感情はそうとは思えない、無意識の中でゴルリンType Bに恐怖を感じている自分がいたと言うことだ。
(…だけど、…もしかしたら…!)
いくらおとなしそうに見える人間でも、時にとてつもない力を発揮する時がある。もしかすると、このゴルリンType Bはそのタイプかもしれない、そうも思えた。
「…行くぞッ!!」
はっと我に返った時、ゴルリンType Bがドスドスと足音を響かせながら物凄い勢いで健に飛び掛かって来ていた。その身を屈め、文字通り、健の懐に入り込んだのだ。
「…何…ッ!?」
健が驚くのも無理はない。ゴルリンType Bは健の腹部に顔を埋めるようにし、両腕を背中へ回していたのだ。
「…はッ、…離せッ!!」
健が何度も何度もそのゴルリンType Bの背中に肘打ちを与え、腹部に膝蹴りを入れる。だが、ゴルリンType Bの両腕の力が弱まることはなかった。いや、寧ろ、強くなっているようにも思えた。
(…後者…か…!!)
2つの相反する感情。その後者の方、つまり、無意識に感じた恐怖が正解だったと言うことに健は気付いた。
「…はッ、…離せッ!…!離せよおッ、気持ち悪りぃなあッ!!」
そう言ってもゴルリンType Bはニタニタと不気味な笑みを浮かべたまま、健から離れようとしない。その時だった。
「…ククク…。…ファイブブルー、…お前の弱点、…見ぃつけた…!」
そう声が聞こえた。
「…え?」
健の視線がゴルリンType Bの背中へ行った時だ。
「んあッ!?」
突然、健は素っ頓狂な声を上げ、ビクンと体を跳ねらせた。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
ファイブブルーのマスクの中の顔が真っ赤になって行くのが分かる。
「…お…、…おぉまぁえぇええええッッッッ!!!!」
ゴルリンType Bの右手が健の腰から離れたかと思うと、健の筋肉質な2本の足の付け根部分、鮮やかな青色のキラキラと光るスーツに包まれたその足の中心部に息づく、健の男としての象徴であるペニスとその下に息づく2つの球体を握っていたのだ。
「…んなッ、…何すんだあ…ッ!!…止めろオオオオッッッッ!!!!」
健がゴルリンType Bを振り解こうとしたその時だった。
「んあッ!?ああッ!?ああッ!!ああッ!!」
そのゴルリンType Bの右手がクニュクニュと握ったり開いたりを繰り返し、健のそこへ刺激を与えて来る。
「…やッ、…止めろよッ、変態ッ!!」
そう言いながらも、健は自分の体から力が抜けて行くのが分かっていた。久しぶりに感じる、男としての感覚だった。
「…お前のエネルギー、…吸い取ってやる…!」
ゴルリンType Bの目が健の目と合った。その瞬間、
ドシュッ!!
鈍い音がしたその瞬間、健は腹部に激痛を感じ取った。
「…し、…しま…ッ!!」
「…ククク…!油断したなぁ、ファイブブルー…ッ!!」
ゴルリンType Bの手には、いつの間にか、巨大な注射器のようなものが握られていた。その先端部分には大きな吸盤が取り付けられており、それがしっかりと健の体に吸い付いていたのだ。
「…ククク…!!…バカな奴だ…!」
ゴルリンType Bが顔を上げ、健を見る。その目がギラギラと輝き、口元には不気味な笑みが広がっていた。
「…俺はお前が隙を見せる瞬間を狙っていたんだ!…お前のようにただの筋肉バカなら、こっちに関しては殆ど皆無か、ご無沙汰だろうと踏んでいたのさ!!それが見事に当たったってわけだ!!」
そう言いながら、ゴルリンType Bは健のペニスを指差す。
「…く…ッ!!」
ファイブブルーのマスクの中で、健の顔が真っ赤になる。鮮やかな青色のキラキラと光るファイブブルーのスーツ。その中で健の男としての象徴であるペニスが少しずつ頭をもたげ始め、臍の方へ向かって伸びていた。
「…じゃあ、…楽しもうじゃないか…!」
そう言うと、ゴルリンType Bは健に抱き付くような姿勢を取った。そして、
「…お前のエネルギーが、…全て吸い取られるまで、…な!」
と言い、健の体をそのごつごつとした大きな手でゆっくりと撫で始めたのである。
「…んなッ、…何…だ…ッ!?」
ゾワゾワとした感覚が健を襲う。
「…ファイブブルー…。…お前の体、本当にいい体付きをしているな…!…俺のものにしたくなる…!」
「…やッ、…止め…ッ!!…へ、…変なこと言うな…ッ!!」
健が体を捩じらせようとするが、健に抱き付いているゴルリンType Bの腕のどこにそんな力があるのかと言いたくなるほど、しっかりと組み付いている。
その時だった。
「…覚悟しろ…!」
ゴルリンType Bの目がギラリと光り、低い声が聞こえたその時だった。
バシュウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!!!!!!
物凄い音がした瞬間、健は腹部から空気が抜けるような、何とも言えない感覚を覚えた。と同時に、体中を物凄い倦怠感が襲い始めたのも分かった。
「ぐわああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
目の前が真っ白になって行く。
「…あ…あ…あ…あ…!!」
視線だけを辛うじて下げて行く。
「…や…め…ろ…!!」
健の視線の先にある、腹部に突き刺さった注射器が真っ赤に輝き、そこへ健の体からドクドクとオーラのようなものが溢れていた。そして、健の体内から放出されたものを飲み込むかのように、不気味に前屈運動を繰り返していたのだ。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
体を大きく仰け反らせ、叫ぶ健。
「…ククク…。…お前のエネルギーを全て吸い取り、俺に取り込む。そして、俺は最強の戦士となるのだああああッッッッ!!!!」
ゴルリンType Bの勝ち誇った声が聞こえる。
「…あ…、…あぁぁ…!」
立っているのもしんどくなる。膝がガクガクと震え、目の前がくらくらとして来る。
「…ほぉら…。…お前の体のエネルギーが吸い取られて行くぞ?見てみろよ、こいつを…!」
ゴルリンType Bが太い巨大な注射器を指差す。
ドクン、ドクン…。
その注射器がドクドクと独りでに脈を打ち、毒々しい赤色の光を放ちながら、その大きさを増しつつあった。