逆襲のゴルリン 第5話

 

「ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 子供の頃、男同士でやり合った淫猥な遊び。相手の両足を持ち上げ、股を大きく開き、その間に足を捩じ込み、ブルブルと振動させる。その振動が、まだその刺激をも知らないであろう前立腺を刺激し、子供心に快楽を得る…。そんな遊びをどのくらいしただろう。

 だが今は、れっきとした大人だ。そんな大人が、目の前にいる全身丸みを帯びた巨漢のゴルリンType Bにやられている。しかも、2人きりでいる時や、ふざけ合いをしている時ではない。大勢の観客、正確に言えば、自分を敵とみなしている連中の目の前でやられている。これ以上に屈辱的なことはなかった。

「…やッ、…止め…ろ…オオオオオオオオ…ッッッッッッッッ!!!!!!!!

 ブルブルとした感覚が伝わって来る。しかも、それは股の間ではなく、大きく勃起したペニスを直接刺激していたのだ。

「ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ああああああああッッッッッッッッ!!!!!!!!ああああああああああああああああッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 バシュウウウウウウウウッッッッッッッッ!!!!!!!!

 ファイブブルーに変身している健の腹に突き刺さっている注射器のような真っ赤に光る不気味な物体はドクドクと不気味に前屈運動を続け、健の力を吸い取っている。そんな状況だから、ファイブブルーの光沢のある鮮やかな青色のスーツがブルブルと震え、健は叫ぶしか出来ないでいた。

「止めろッ!!止めろッ!!止めろオオオオオオオオッッッッッッッッ!!!!!!!!

 そのうち、健は自身の下腹部に、久しぶりにじんじんとした疼きを感じ始めていた。

「…たッ、…頼むううううッッッッ!!!!…ほッ、…本当にッ、もう止めてくれええええええええええええええええッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!

 下腹部からの疼きが少しずつ、健のペニスへ伝わって行くのが分かった。

(…ヤバい…ッ!!

 ファイブブルーのマスクの中で、健が覚悟を決めたその時だった。それまで、健のペニスを刺激していたゴルリンType Bの足の振動がピタリと止まったのだ。

「…んあッ!?…あ…、…あ…、…んく…ッ!!

 健は思わずビクビクと何度か体を跳ねらせていた。

「…ククク…!!

 ゴルリンType Bはニタニタと不気味な笑みを浮かべ、ギラギラとした眼差しを向けていた。

「…イカされるとでも思ったか?」

 その声は健にしか聞こえない、言い換えれば、周りの観客には聞こえないほどの小さな声だった。

「…あ…、…うう…ッ!!

 股間を押さえようとしても、体の自由が利かない。それだけ強烈な電気アンマをゴルリンType Bから与えられ、体中の力が抜けてしまっていたのだ。

「…そんなに簡単にはイカせはしないさ。お前のエネルギーはここに吸い取っただけじゃないからな…!!

「…どう言う…、…ことだ…!?

 はぁはぁと荒い呼吸をしながら、健が体を少しだけ起こす。するとゴルリンType Bは、

「そのうち分かる」

 とだけ言うと、健の胸倉を掴み、乱暴に持ち上げた。

「…ぐ…あ…ッ!!

 突然のことに、その動きに釣られるかのように健は立ち上がる。

「何をするのだッ、ゴルリンType B!?

 遠くからガロアの慌てる声が聞こえた。

「…ククク…!!

 その時だった。

 健は自分の体がふわっと浮いたかのような感覚を覚えたかと思うと、意識を失った。

 

「…ん…」

 健は目を覚ました。薄暗い部屋。ろうそくの明かりがほのかに灯り、しんと静まり返っていた。

(…ここは…、…さっきのコロシアムじゃない…?)

 その途端、

「…ッ!?

 と意識がはっきりと覚醒し、思わず体を揺すった。その時だった。

「…んなッ、…何だ…ッ、…これ…ッ!?

 自分の置かれている状況に呆然となる。

 それもそのはず。ファイブブルーに変身させられたまま、立った状態で両手首と両足首を重く硬い金属で拘束され、X字の状態に立たされていたのだ。

「…お、気が付いたか?」

 目の前にはあのゴルリンType Bがいた。

「…ゴル…リン…ッ!!

 健がゴルリンType Bを睨み付ける。するとゴルリンType Bは、

「いつまでもゴルリン、ゴルリンと呼ぶな」

 と言い、ギラリと光る目を健へ向けて来た。

「…俺は、…メサイアだ!!

「…メサイア…か…」

 どこかで聞いたことがある。健はその時、思わずフッと笑っていた。

「…メサイアとは救世主の意味。ユダヤ教のダビデの子孫、キリスト、ムハンマド…。様々な宗教の救世主こそ、全てメサイアだ。だがそのメサイアの定義を歪んだ見解で自らを救世主と名乗り、この世を破滅に導こうとするものもいたっけなぁ…!」

 ファイブブルーのマスクの中の健の瞳は、目の前にいるゴルリンType Bこと、自称メサイアに注がれている。

「…お前も、…その1人か…?」

 するとメサイアの眉間がピクリと動いた。だがすぐに、

「他のヤツらと一緒にするな」

 と言った。

「俺はこの世界だけではなく、銀帝軍ゾーンをも救済しようとしているんだ」

「…は?」

 何を言っているのか、一瞬では理解出来なかった。するとメサイアは、

「…俺が、銀河皇帝メドーに代わって銀帝軍ゾーンを支配するのさ!!

 と言い出した。

「そのためには大量の力が必要だ。強く、逞しい戦士の、な!!

 その時だった。メサイアは再び健に抱き付くような体勢を取った。

「…何だよ…?」

 平静を装おうとする健。だがその顔は思い切り引き攣っていた。ゾワゾワとした悪寒が背筋を走り抜ける。

「男に抱き付かれても、嬉しくも何ともないんだがね…」

「…ククク…」

 メサイアは静かに笑い、その手をゆっくりと裕作の胸に這わせた。

「…実に惜しいな、ファイブブルー…。…いや、…星川健…!」

「…何がだ…?」

 その時、メサイアが健を見上げる。

「…貴様を腑抜けにしなければならない。こんなに強靭な肉体とエネルギーを持っているのなら、俺の部下にしたいくらいなのに…」

 そう言いながらメサイアは、右拳をゆっくりと健の腹部に減り込ませた。

「…勿体ない…。…こんなに弾力性があり、…こんなに素晴らしい肉体なのに…」

 メサイアは再び健を見上げ、

「…ファイブブルー…。…俺の部下にならないか?」

 と問い掛けた。当然のことだが、健はマスクの中でニヤリと笑い、

「誰がお前の部下になんかなるか!」

 と言い放った。

「…そうか…」

 メサイアは残念そうに顔を曇らせると、

「…こんなことをされてもか?」

 と右拳を開き、健の体に這わせ始めた。

 

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