最強獣戦士誕生! 第11話
「おーい、ダイィッ!!」
眩しいほど太陽の光が降り注ぐ下を、バイクのエンジン音を響かせながら1人の男の子が走る。
「ダぁぁイぃぃぃッッッ!!!!」
少年のようなやや高めの声で叫ぶ。青を基調とし、赤、黒の生地があしらわれている光沢のある服を身に纏っている。皮のパンツ、そして黒い靴。
ブン。フラッシュマンの中で最年少で、ブルーフラッシュとしてダイと共に改造実験帝国メスから地球を守っている。
「おっかしぃなぁ。どこに行っちゃったんだろ…?」
何度もテクノブレスで呼びかける。だが、ダイの応答は一切なかった。
「…まさか、メスにやられちゃったんじゃ…!?」
最悪のシナリオがブンの頭の中を過ぎり、不安に駆られる。
「…ダッ、…ダイィィィィッッッッ!!!!」
何かあるといつも衝突ばかりするダイ。でも同じ境遇、同じ運命を経験して来た仲間でもある。いや、それ以上の感情が、今のブンを支配しようとしていた。今まで、考えたこともなかったような…。
その時だった。
目の前の十字路から、ゾローが大挙して押しかけて来たのである。
「んなッ!?」
これにはさすがにブンも驚いた。
「出やがったなッ!!」
バイクのハンドルをグリッと回し、エンジンの回転数を上げる。
「行くぞぉッ!!」
ゾローの集団の中に、バイクごと突っ込んで行くブン。
「はッ!!でやッ!!…せいッ!!」
器用にバイクを運転しながら、ブンは腕や足を振り上げる。そのたびに、突進して来たゾローが一人、また一人となぎ倒されて行く。だが多勢に無勢とはこのことだ。あっと言う間に形勢逆転し、ブンが劣勢になって行く。
(!?)
数人のゾローが一斉に腕を振り上げた。
「たあああッッッ!!!!」
身軽さが売りのブンだけある。バイクからすかさずジャンプし、ゾローの集団をあっさりと飛び越した。
「行くぜッ!!…プリズムッ、フラッシュッ!!」
ブンが構えた瞬間、ブンの体が光り、光沢のある鮮やかな青色のスーツを身に纏っていた。ブンがブルーフラッシュにプリズムフラッシュしたのだ。
「行くぞぉぉぉッッッ!!!!」
ブンが目にも留まらぬ速さでゾローの集団に突っ込んで行く。
「とおりゃあああッッッ!!!!」
さっきとは桁違いの力で、ゾローを次々と弾き飛ばして行く。そして、あっと言う間に全てのゾローを叩きのめした。
と、その時だった。
物凄い電流がブンの体を駆け抜けた。
「うわあああッッッ!!!!」
あまりの苦痛に思わず後ろへ倒れ込むブン。
「…く…ッ…!!」
苦痛に目が霞む。何とかして目の前を見上げたブン。
「フフフ…!」
目の前には、白虎のような縞模様の体、その背中には大きな翼を持っている男、レー・ワンダがニヤニヤしながら立っていたのである。
「…ワ、…ワンダ…ぁ…ッ!!」
ワンダが放った電撃がブンを直撃したのだった。
「…あ、…か…ッ…!!」
電撃の痺れがブンの体を執拗に攻め立て、その痺れにブルブルと体を震わせるブン。
「…死ねッ!!」
ワンダの目がカッと見開かれ、剣を振り上げた。その時だった。
「はあッ!!」
威勢の良い掛け声と同時に、ワンダの体が吹っ飛んでいたのであった。
(!?)
ブンはゆっくりと目を開ける。ブンよりも距離を置いたところに、倒れ込んだワンダがいる。そして、目の前には、鮮やかな光沢のある緑色のスーツに身を纏った逞しい体があった。
「…グリーン…フラッ…シュ…?」
グリーンフラッシュ・ダイが、倒れ込んだブンの目の前に立っていたのだ。がっしりとした体格、その背中にブンは安堵感を覚えた。同時に、少し身を屈め、ブンの方へ突き出した筋肉質な尻は太陽の光に照り輝き、ブンに戸惑いを覚えさせた。
「…グ、…グリーンフラッシュ…!?…おのれぇッ、1人なら容易く倒せたものをッ!!」
そう言うとワンダはくるりと踵を翻し、足早に逃げ出した。
「…く…ッ…!!」
ブンは何とかして体を起こそうとした。
「大丈夫かッ、ブルーフラッシュッ!?」
自分の目の前に立っていたグリーンフラッシュ・ダイが駆け寄って来ると、ブンを抱きかかえた。
「しっかりしろッ、ブルーフラッシュッ!!」
「…グリーンフラッシュ…」
ブンはそう言うとダイの胸倉をグッと掴んだ。そして、
「どこへ行ってたんだよッ!?…何度も、…何度も呼んだんだぞッ!!」
とダイに向かって怒鳴り付けた。するとダイは、
「すまない。ちょっと、出られなかったんだ」
と言った。そして、
「立てるか、ブルーフラッシュ?」
と言って、ブンを立ち上がらせた。
「…グリーン…フラッシュ…?」
いつもなら『うるさい』だの、『オレは大丈夫だ』などと言ってあやまりもしないのに、今日のダイはブンにあやまって来た。
「…ダッ、…ダイ…ッ!?」
ぎょっとしたのはブンの方だった。グリーンフラッシュのマスクが外れたと思ったその時、中から現れたダイの顔を見て思わず息を呑み込んだ。
ダイが。
ダイの目尻に涙が滲んでいたのである。
「…ダ…イ…?」
釣られるように、ブンもブルーフラッシュのマスクを外した。次の瞬間、ブンはダイに抱き締められていたのである。
「…ダ、…ダイ…ッ!?」
「…良かった…!…無事でいてくれて…!」
ダイの腕に力が篭る。
「…ダ、…ダイ…ッ!?…苦しいよッ、ダイぃッ!!」
息が詰まりそうになる。怪力の持ち主なんだから、もう少し加減してもいいんじゃないか、ブンはそう思っていた。
「ど、どうしたんだよッ、ダイぃッ!?今日のダイ、何か、変だぞ!?」
心臓がドキドキしている。ダイに抱き締められただけなのに、まるで恋をする少年のように、どぎまぎしてしまっている。
「…ごめんな、ブン…」
涙が滲む瞳で、ダイが静かにブンにあやまる。
「オレが連絡を取らなかったばかりに、お前を危険な目に遭わせてしまったな…」
「だからッ!!」
ブンの頭は混乱し始めていた。ダイなら、いつものダイならこんなことを言わないのに。
「どうしちゃったんだよッ、ダイィッ!!いつものお前なら、こんな痒くなるようなセリフは言わないだろうッ!?」
するとダイは、ちょっと悲しげな表情を見せた。
「…言っちゃいけないのか?」
「…そ、…そうじゃ…ない…けど…」
いつもよりも調子が狂う。するとダイはブンの腕を掴み、グイッとダイの方へ引き寄せた。
「…あ…」
ブンの体がダイの腕の中にすっぽりと包まれている。
「…お前が、…好きなんだよ…。…ブン…」