最強獣戦士誕生! 第20話
「…バ、…バカな…!?」
目の前に静かに立っている人間を見た瞬間、レッドフラッシュ・ジンの顔が真っ青になった。
「…ククク…!」
目の前には、プリズムフラッシュしたもう1人のレッドフラッシュがいた。そして、低い笑い声を上げていた。
「びっくりしたみたいだな、ジン?」
「…だッ、…誰だ…ッ!?」
爆発の衝撃で地面に叩き付けられ、痛む体を引き摺るようにジンが立ち上がる。
「お前は誰だッ!!」
するともう1人のレッドフラッシュが、
「おやおや、オレのことを知らないのか?」
と鼻で笑いながら言う。そして、ゆっくりとジンの目の前へやって来た。
「!?」
ジンの目がカッと見開かれ、驚きと恐怖の入り混じった表情をする。するともう1人のレッドフラッシュがジンと顔を突き合わせ、
「…オレは、お前だ!」
と言った。
「ふざけるなぁッ!!」
いつも冷静なジンが、この時ばかりは自分を見失い、もう1人のレッドフラッシュへ向かってパンチやキックを何度も繰り出す。
「おっと!」
するともう1人のレッドフラッシュは、いとも簡単にジンの攻撃をかわす。
「くそぉッ!!」
ジンは完全にパニックに陥っていた。もう1人のジンに自分の次の攻撃を見透かされている。
(…次の、…攻撃…?)
少しずつ、頭の中でもやもやしたものが解消されて行く。
「…ま、…まさ…か…!?」
その時だった。
ドゴォッ!!
鈍い音と同時に、ジンの体がくの字に折れ曲がった。
「…か、…は…ッ!!」
ジンの目が更に見開かれ、中途半端に開けられた口からは涎がポタポタと垂れた。
腹部には、レッドフラッシュの真っ白なグローブがめり込んでいる。息が出来ない。もう1人のレッドフラッシュの拳が、重い鉛のようになって、腹部に違和感を感じさせている。
「気付くのが遅すぎだな、ジン」
もう1人のレッドフラッシュが笑いながら言う。
「…き、…貴…様…ぁッ!!」
ブルブルと体を震わせながらも、懸命に睨み付けるジン。
「フフッ!そうでなきゃ、面白くないよな!」
するともう1人のレッドフラッシュは、体をくの字に折り曲げているジンから拳を放したかと思うと、次の瞬間、その腕でジンを弾き飛ばしていた。
「うわああああッッッッ!!!!」
レッドフラッシュにプリズムフラッシュしているもう1人のレッドフラッシュの力をまともに受け、ジンがかなり遠くまで弾き飛ばされる。そして、ボールが何度も地面に当たって跳ね返るように、ジンの体も何度も跳ねては転がった。
「…う、…ぐぅ…ッ!!」
それでも懸命に立ち上がろうとするジン。
「…フフフ!」
もう1人のレッドフラッシュは、既に勝ちを確信したのか、余裕綽々の様相を見せている。
「お前自身も気付いてはいるだろうが、一応、教えておいてやろう」
もう1人のレッドフラッシュが、懸命に立ち上がろうとするジンに近付きながら言う。
「何度も言うようだが、オレはお前だ。つまり、オレの攻撃はお前の攻撃と同じってことさ。だから、お前が繰り出そうとする次の一手は、オレの中で全てお見通しってわけだ。オレはお前なのだからな!」
そう言うと、もう1人のレッドフラッシュは額のプリズムを光らせた。そして、
「プリズム聖剣!」
と言い、真っ赤なクリスタルで出来た剣を取り出した。
「逆を言えば…」
そう言うともう1人のレッドフラッシュは、そのプリズム聖剣を振りかぶった。
「!?」
ジンは瞬時に身構える。
「お前にはオレの次の攻撃が分かるはずだ!」
そう言った瞬間、もう1人のレッドフラッシュはプリズム聖剣を勢い良く振り下ろした。
「はあああッッッ!!!!」
ジンはそう叫ぶと、白刃取りの要領で、もう1人のレッドフラッシュのプリズム聖剣を受け止めた。
「…ぐぅ…ッ!!」
ジンが懸命にその剣を押さえようとする。
「…ほう…」
もう1人のレッドフラッシュが声を上げる。
「…そう来たか…」
そう言いながら、もう1人のレッドフラッシュがプリズム聖剣に力を込めて行く。その勢いでジンの腰が徐々に落ちて行く。
「…くっそぉぉぉぉッッッッ!!!!」」
ジンが叫んだ。と同時に、ジンの体が光り、次の瞬間、ジンの体が光沢のある真っ赤なプリズムスーツに包まれていた。ジンがレッドフラッシュにプリズムフラッシュしたのだった。
「…ま、…負けるかあああッッッ!!!!」
もう1人のジンが力を込めるプリズム聖剣を受け止めているジン。だが、プリズムフラッシュしてもその力は凄まじく、徐々に落ちて行く腰の位置が更に落ちて行く。と同時に、ジンの両脚も膝から折れ曲がり、股が少しずつ大きく開かれて行く。
「…じゃあ、これはどうだ?」
そう言うと、もう1人のレッドフラッシュは右足を素早く振り上げた。そして、その足先がふにゃっとした柔らかいものに触れた瞬間、
「うぐッ!?」
とジンが呻いた。
「おやおや?どうしたんだい、レッドフラッシュ?」
そう言いながらも、もう1人のレッドフラッシュは何度も右足を振り上げる。と同時に、その足先は柔らかいものに触れ続ける。
「うぐッ!!ぐおッ!!」
そのたびにジンが呻き声を上げる。次の瞬間、ジンが物凄い勢いでもう1人のレッドフラッシュのプリズム聖剣を振り払ったかと思うと、思い切り背後へゴロゴロと転がったのだ。
「ぐううううッッッッ!!!!」
ジンがゴロゴロと地面を転がる。そのたびに砂塵が舞い、光沢のある真っ赤なプリズムスーツが汚れて行く。その両手は股間を押さえている。もう1人のレッドフラッシュが触れた柔らかいものは、ジンの男子としての象徴だったのである。
「おっと、オレの足癖の悪さが出てしまったな!」
もう1人のレッドフラッシュが笑いながら言う。
「…き、…貴…様…ぁッ!!」
股間を押さえながら、レッドフラッシュのバイザー越しにもう1人のレッドフラッシュを睨み付ける。
「何だ?感じなかったのか?」
もう1人のレッドフラッシュがとんでもないことを口にした。
「他の2人はよがり狂っていたぞ?」
その瞬間、ジンの背筋に悪寒が走った。
「…ま、…ま…さ…か…!?」
マスクの中のジンの顔が真っ青になる。するともう1人のレッドフラッシュはフンと笑い、
「そうだよ!」
と言い、ジンの前にしゃがみ込んだ。
「…オレが、グリーンフラッシュとブルーフラッシュをヤッたのさ!」