性獣の生贄 第3話
「…よし…っと!」
若竹小学校の倉庫。
ギンガブルーにギンガ転生するゴウキは、いつものように倉庫整理に追われていた。他の教師が重くて運べないようなものも軽々と持ち上げ、テキパキと片付けて行く。窓から射し込む太陽の光を受けて、埃がキラキラと舞った。
「…ふぅ…!」
パンパンと手を払い、
「ま、こんなものかな!」
と言ったその時だった。
「ゴウキィッ!!」
背後から甲高い声が聞こえ、ゆっくりとその方向を振り返る。
「おお!勇太ぁッ!!」
明るい笑顔で大きく手を振った。だが次の瞬間、ゴウキの背後から走って来る3人組を見つけると、思わず尻を両手で隠すような仕草をした。
「?どしたの、ゴウキぃ?」
きょとんとした表情でゴウキを見上げる勇太。
「…あ、…い、…いや、別に…!」
引き攣り笑いをするゴウキ。と、その時だった。
「別にこの間みてえにカンチョーなんてしねえよ!」
その声に勇太も思わず振り返る。
「あ、来斗君!晴君!それに洸君!」
赤いジャケットを着た来斗、青いジャケットを着た晴、そして緑色のジャケットを着た洸がそこにはいた。
「出たな、悪ガキ三人衆ッ!!」
ゴウキが笑いながらファイティングポーズを取る。それを見ていた晴が、
「かぁっこいい!」
と目を輝かせ、かけているメガネのフレームをクイッと上げた。
「いやいや、ファイティングポーズは普通でしょ」
と洸がやや冷めた様子で言った。
「何だよ、オレらが来るといつでもカンチョーされると思ったのかよ?」
来斗がやや不機嫌に言う。
「だだだ、だって来斗君、この間だって…!」
そう言った時、ゴウキはちょっと顔を赤らめ、しかめっ面をした。
この間、同じように体育倉庫を整理していた時だった。少し屈んだ隙を狙って、ゴウキの筋肉質な双丘の窪みのその奥へ小さな指が物凄い勢いで突き刺さったのである。それから暫くの間、ゴウキはそこが痛くて堪らなかったのだった。
「あ、そうそう。ゴウキ!」
その時、来斗は何かを思い出したかのようにゴウキを呼んだ。
「…な、…何だい、来斗君?」
来斗が妙にニヤニヤしている。いや、ニヤニヤしているのは来斗だけではなかった。その後ろにいる晴も、そして洸も同じだった。それだけで、ゴウキの顔は引き攣っていた。
「この言葉、知ってる?」
来斗はそう言うと、自分の左手のひらをゴウキに見せながら、右手で何やら文字を書き始めた。
「…オ…ナ…ニ…ー…、…ッ!?」
その瞬間、ゴウキの顔が真っ赤になり、
「んなッ!?んなッ!?」
と口をパクパクとし始めた。
「どうしたんだよぉ、ゴウキぃ?」
その横で勇太がきょとんとしている。
「ららら、来斗君ッ!?」
冷や汗がたらたらと流れるゴウキに対し、来斗は余裕の笑みを浮かべ、
「じゃ、これは?」
と言い、再び文字を書き始めた。
「…セ…ツ…ク…ス…、…ッッッッ!!!!!!??」
ゴウキの顔から今にも火が噴き出しそうなほど、真っ赤になっている。
「…ら、…ら、…来…斗…君…ッ!?」
「ねぇ、ゴウキぃ。どうしてそんなに顔が真っ赤になってるの?」
洸がニヤニヤしながら尋ねる。
「…あ、…あう…。…あう…」
ゴウキは口をパクパクさせ、冷や汗どころか、実際に大量の汗を流していた。
「どうしたんだよぉ、ゴウキぃ?」
晴も同じようにニヤニヤしながらゴウキに尋ねる。
「…あ、…あのね、…ら、…来斗…君。…晴君、…洸君…?」
何とか平静を装おうとしても顔は引き攣り、汗が流れ、手足はブルブルと震えている。
「…キ、…キミ達、…どこでこの言葉を…?」
すると来斗が、
「こんな言葉くらい、昔から知ってらあッ!!」
と得意気に言う。だが、
「僕は知らないけど?」
と言う純真な声。
「…ゆ、…勇太ぁ…」
その言葉に気持ちが少しだけ和む。
「て言うかさ!ゴウキもやったことあんだろッ!?」
「ひょえッ!?」
ゴウキは完全に動揺していた。こんな小さな子供が、まだ分別も付かないような子供がそんな大人びた言葉を知っているなんて…!しかも、自分自身にやったことがあるか、つまり、大人としてのそれを経験しているかどうかを聞いて来ているのだ。
「…あ、…え、…えっと…ぉ…!!」
と、その時だった。
「だからぁッ!!」
不意に来斗が動いたかと思うと、ゴウキの正面にまわり、ゴウキの2本の足の付け根にあるふくよかな膨らみをギュッと握ったのである。
「んぎゃああああッッッッ!!!!」
突然のことに叫び声を上げるゴウキ。
「うおッ、でっけえッ!!」
ゴウキのそこを握った来斗の手がぱっと離れ、何度も握ったり開いたりを繰り返す。
「…う、…うう…」
どうしよう。どうやったらこの場を切り抜けられるのだろう。ゴウキがそう思ったその時だった。
キーンコーンカーンコーン…。
授業開始の合図が学校中に鳴り響いた。
「あ!」
勇太がはっと我に返り、
「みんなッ、行こうよッ!!」
と促した。
「ちぇ〜ッ!!もう少しだったのにぃ…!」
来斗が脹れっ面をする。そしてガシガシと頭を掻くと、
「じゃあ、またな、ゴウキ!」
と言い、晴、洸と共に教室の中へと消えて行った。
「…た、…助かったぁ…ッ!!」
ゴウキは暫くの間、その場へへなへなと崩れ込んでしまっていた。
「…ククク…!」
放課後。薄暗い実験室の中に3人組の少年の姿が見える。
「あれだけデカイものを持ってりゃあ、相当な量のアースの力を搾り取ることが出来そうだな!」
赤いジャケットの少年・来斗がそう言ったその時だった。
「来斗君ッ!!晴君ッ!!洸君ッ!!」
勢い良く実験室のドアが開き、勇太が飛び込んで来た。
「よっ、勇太!」
来斗が軽く手を上げる。その横で青いジャケットの少年・晴と、緑色のジャケットの少年・洸がニヤニヤと笑っている。
「ねえ、さっき、ゴウキに教えていた言葉、あれ、何なの?僕には全然分からないんだけど…」
「それを教えるために、ここに来いって言ったんだよ」
洸が勇太の肩をポンと叩く。
「ねえ、勇太は本当に知らないの?」
晴がメガネのフレームをクイッと上げながら尋ねると、
「うん。知らない」
と勇太。
「じゃあ、きちんと教えてあげなきゃ」
洸がニヤリとすると、
「ね、来斗!」
と言った。
「ああ!」
その時、来斗の目がギラリと光ったような気がした。
「…キミには、…何もかも、全てを教えてあげるよ…!」